あしたてんきに なあれ

碧月 葉

あしたてんきになぁれ

 空はねずみ色。

 しとしとと雨がふりだした。

 右足はズキズキ痛む。

 ヒカリは泣きながら歩いていた。


 そう、あの時は「とても良い考えだ」と思ったのだ。



 明日は幼稚園の親子ハイキング。

 準備はバッチリ、お菓子もたっぷりリュックに詰めた。

 あとは晴れるだけ。

 雨だと中止になってしまう。


 そこでヒカリは、友だちのミヤと一緒に明日の天気を占った。


「あーしたてんきになぁれ!」


 ミヤのサンダルはコロンコロンと転がって、裏返しで止まった。


「ひーちゃん、どうしよう。雨になっちゃったよ」

「ええっ、どうしよう。そうだ! 雨にならない良いこと思いついた」


 ひかりはひらめいた。

 長ぐつでやれば良いのだと。


 表なら晴れ、裏なら雨。

 横向きは曇り。


 長ぐつならひっくり返ることはないだろう。


 ヒカリは長ぐつに履き替えた。

 長ぐつはサンダルよりも重い。


「あーしたてんきになぁれ!」


 ヒカリは思い切り足を引いてから、力いっぱい蹴りあげた。


 ぽおん


 飛んだ飛んだ。

 長ぐつは高く上がって…………ぽちゃんと水路に落ちた。


 ヒカリとミヤは驚いて長ぐつを追いかけ、水路の脇を走った。

 どんぶらこと流れていく長ぐつ。

 けっこう速い。

 そのうちにもっと大きな水路にでて、ぐんぐん流され、やがて見えなくなってしまった。


 長ぐつをなくした。

 足の裏が痛い。

 おまけに雨が降ってきた。

 ヒカリは泣きながら家に帰った。



「ひーちゃん、どうしたの?」

「おばあちゃん、ごめんなさい。長ぐつなくしちゃった」


 長ぐつは、おばあちゃんからプレゼントだった。

 水色とピンクの花がたくさん描かれたお気に入りの長ぐつ。

 それをバカなことをしてなくしたのだ。

 悲しくて、悔しくて、申し訳なくて。

 ぽろぽろ涙が止まらない。


「大丈夫、どこかに引っかかっているかも知れないよ。ばあちゃんが探してくるからね」


 おばあちゃんは、優しく背中をなでてくれた。

 ヒカリの涙はようやく引っ込んだ。

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