007 > おれの『夢』


 滝川辰樹はなぜか知らないが、5つ向こうの駅から通ってた。どおりで見たことのない学生服だと思ったわけだ。エッキョウ入学ならぬ、エッ県入校だ。


 おれは県内の高校の制服ならある程度知ってたから、見たことのない学生服って思ったのは間違ってなかったってこった。

 初日の一件があって以来、滝川はおれと距リを取るようになった。そらそうか。


〝「人違い」つってたけどよ……〟


 なんかモヤっとしたよな。


 まぁ……なんつうか、男とはいえ、あんなイケメンに言い寄られるようなことなんて滅多にないだろ、普通。

 おれの見た目なんか、予備校と学校のクラスの女子どもに言わせたら、『並中の並、いや、並の下』って言うんだから、そんなおれを見ソめるとか、変な男だと思ったわけよ。


 別に同性同士だから云々ってのは半世紀前とは違って世間一般ではあまりハードルにはならない。けど、結婚してる人間の割合で言うと、7割弱が男女婚で、残りの3割強が同性同士って話だ。

 珍しいってほどではないんだよ。けどさ、まぁ、やっぱり男としては恋愛とかそういう相手は女がいいな、って思うわけ。


 それに。


 おれは大半のヤンキーとは違っていまだに童貞だ。

 そういうヤカラが早々に卒業するものをゴショウ大事にとってあるのにはワケがあってだな。


 その……言いにくい話をするとだな、その……【黒髪ロングの清ソな美少女】がおれの理想の女だったりする……わけで……その、な、そういう夢があるわけよ!


 いつからか、その美少女が夢の中に出てくるようになったんだよ!


 やべぇ、書いててチュウ二病だこれ……って自分でもわかるぜ。われながらキモい!


 その子と会いたい! という……夢の女が現実に存在してるかどうかも怪しいだろ、ってのはわかってんだけどさ、でも、気になるじゃん? もしかして、って思うじゃん? ドリームだよ! って思ってんよ! わかってんだよ! そんなこと! でもさ、もしかしたら近いうちに会うかもしんねぇじゃん! と思ってたら──


 去年、うちの学校に来たんだよ──!


 白石しらいし 玲香れいかっていう美女が!


 去年の秋に転校してきた帰国子女。


 容姿タンレイ、才色ケンビってのはああいう女子のことを言うんだ、きっと。

 めちゃくちゃきめ細かくて白い肌に、黒目がちのアーモンド型した目。腰まで伸ばした黒髪ロングが似合ってて、学校一の高嶺の花。……もうそこまで書くと、どりーむずかむとるぇ、だろ?!


 先日の滝川と同じことを言うなら、彼女こそ【おれの運命】だと思ってる。


 だってよ、夢で会った美少女がそのまんま大きくなったみたいな見た目だぞ?

 そう思わないのが不思ギなくらいだろ。


 白石は、英語がペラペラどころか他の科目も優秀で隼人と学内テストで1位と2位をキソい合ってて、正直おれとの直接的な接点は、今の所、ない。

 唯一の接点らしきことといえば、隼人と同じ生徒会で隼人と仲が良いってこと。だけ。


 つまり、おれが一方的に知ってるだけで、おれ自身は白石玲香と直接話したことは一切ない。

 それに、おれの『夢』については、親友の隼人にも何も言ってない。


 さすがに隼人にも笑われそうな話だと思ってさ──


 まぁ、とりあえず、ひとまずそれは置いておこう。


 滝川が運命云々いうなら、おれにだって【を選ぶケンリくらいあるだろ?


 そういう話なんだよ!!





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