第72話 懐かしの泉へ
王都を目指すにはガレリアを経由する必要があったので、俺達は来た道を戻って行った。商人や余所者も、異常な状況のヤンカー市からガレリアへ避難する者が多いようだ。スタンピードで街を壊滅することはできなかったけど、結局は住民達の暴徒化により街は壊滅状態だ。
(アズーロ、結果的に街は壊滅したぞ)
馬車を快調に走らせながら、街の壊滅を目指していたアズーロのことを思い出していると、馬車の小窓からハリエットが話しかけてきた。
「ねぇ、みんなで話していたんだけど、釣り大会をした泉に寄らない?」
「良いね。水浴びは難しいかも知れないけど、また釣り大会をするのも良さそうだね」
「じゃあ、そういうことでよろしくね」
「OK!」
俺は街道を外れて、馬車を泉のある方向へと進路を変更した。
(前にこの道を進んでいた時は、パミュルも一緒に旅をしていたんだな……)
『今はウォードの一部になったわね』
『僕は一つになったと思ってるよ。ただ、直接触れることができないのが残念かな?』
『私の身体が恋しいのかしら?』
『うん、パミュルの全てが恋しいよ。また触れ合えたらと考えてしまう』
『そんな時が来るなら、あの時以上に愛してね』
『了解!』
パミュルとの会話を楽しみながら馬車を走らせていると、目的の泉へと到着したので馬車を停車させる。小窓から中に居るみんなに声をかけると、馬車から降りてみんなで泉へと足を運んだ。
「こんなに綺麗な泉なのに、魔物が多くて泳げないなんて勿体ないね。魔物を追いやることはできないのかな?」
アナスタシアの言葉を聞いてひらめいた。俺が魔人化することで、泉に潜んでいる魔物達に語りかければ、泳ぐことも可能なのではと思った。
「僕は魔人化すると魔物の言葉が話せるからさ、ダメもとで泉の魔物に言い聞かせてみるよ」
「襲ってきたらどうするの? 相手は水棲の魔物だから危険だよ」
俺が魔物との対話を提案すると、ハリエットが危険だと言ってきたが、釣り大会の時に戦った泉の主と同等なら、水棲の魔物であっても全く問題ないと認識している。スタンピードの時にアズーロの呼びかけに応えていたのなら、襲う前に警告を発するだろうと根拠のない自信があった。
「根拠はないけど、魔物とはコミュニケーションを取れると思うんだ。だから僕を任せて欲しい」
「そう、油断はせずに気をつけてね」
「OK!
俺は魔人化してから泉に飛び込むと、水棲の魔物に向けて敵意はないことを告げて、水浴びをすることを認めて欲しいと伝えた。
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