第66話 姑息な罠

 非常用の門から突入すると、目の前にいた領兵を瞬時に斬り捨てる。そう、気絶させるのではなく命を絶った。敵と認定した相手に情をかけると、そのまま自分達の危険因子になるからだ。


「ハリエット、弓の用意。屋敷のベランダに見張りの領兵が1人居るから頼むね」

「OK!」


 俺が指示を出すと、迷うことなく領兵を射抜いた。その後も屋敷にたどり着くまで、多数の領兵を討ちとっていったが、みんなも領兵を討つことに対して迷いはないようだ。


 大きな屋敷に取り付いた。そして屋敷内に突入する前にここから先の覚悟を確認する。


「屋敷に突入すると、領兵以外の人達も多数いる。当然だけど騒がれるとラミュルの救出の障害になるんだ。その人達も討つことになる……」

「判ってる。この屋敷に居て監禁されてない人は、門でウォードを見捨てた人と同罪だよ。私はそんな人に対して容赦しない」

「もし、領主が現れても討つつもりだよ」


 ハリエットに続いてメルローズも応えると、みんなは頷いた。領兵以外の人を討つことに対して、誰も迷いはないようだ。そして、ラミュルの居所を聞き出す為に、拷問も必要になると思うけど、それについては俺が担うつもりだ。


「じゃあ、行くよ!」

「OK!」


 俺がドアを開けて屋敷内に入ると、人は見当たらなかったので、一階からしらみ潰しに確認していく。ノックなどはせずにドアを開けて確認をしていくと、男が居たのでラミュルの居場所について確認をする。


「ラミュルは知っているな?」

「あぁ」

「監禁先を教えれば命の保証はする」

「……、本当に殺さないんだな?」

「あぁ、確認できれば保証する」

「邸宅の離れに連れて行かれるのを見た」

「よし、そこまで案内してもらう」

「……判った」


 男の案内で屋敷の離れへと案内され、ドアに触れようとすると『ズキッ』と頭に痛みが走った。俺の〚幸運〛が罠だと教えてくれたので、先に部屋へ入るように男へ伝えた後に、首元へ剣を添えて入るように促した。


「安全確認を兼ねて、部屋へはお前が先に入ってもらうぞ」

「っ……、案内をしたじゃないか」

「罠かも知れない。僕達の安全を考えれば当然のことだろう? ハリエットは開けた瞬間に中を射撃できる位置へ待機してね」

「OK!」


 剣を首元へ押し当てると、剣先が少し刺さって血が滲み出した。部屋に入らなければ死ぬのは確実で、部屋へ入る時にうまく躱せれば助かるかも知れないと、覚悟を決めた男はドアに手をかけて、部屋に入ろうとした瞬間に声をあげて姿勢を低くした。


「やめろ!俺は味方だ!」


『シュバッ!』


「ひっ……」


「シュン!」


「あがっ……」


 中から槍の一突きがあったが、男がなんとか躱すことに成功すると同時に、ハリエットの放った矢が突きを放った男を射抜いたのだった。俺は突きを躱した男を斬り伏せる。姑息な罠で俺達をハメようとしたのだから当然の報いだ。そして、部屋の中へと足を踏み入れたのだった。


「ラミュル!ここに居るのか」

 

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