第65話 魔人化の代償
俺がラミュルを救出すると伝えたけど、すぐ動こうとはしなかった。早く姉を救出したいと思っているアナスタシアが、動こうとしない理由を聞いてきた。
「ウォード、どうして動かないの? 突入するんだよね?」
「僕達の救う対象はラミュルのみ。門を破壊すれば住民達の手助けになるから、あの流れには加わらないよ……」
「住民が門を破るのを待つってこと?」
アナスタシアはかなり不満なようで、眉間にシワを寄せながら、俺の話しを途中で遮った。俺は流れに加わらないと言っただけで、突入しないとは言っていない。遮られた話の続きをした。
「流れに加わらないだけで突入はするよ。裏手にある非常用の門からたげとね。人の流れがここに集中するのを待っていたんだ。さぁ、裏手へ回ろうか」
「うん、急ごう!」
俺の考えに納得してくれたようで、領兵と住民の争いを尻目に裏手へ回って行った。
『ウォード、少し良いかしら?』
裏手へ移動していると、パミュルがいつもとは違う雰囲気で声をかけてきた。
『どうしたの?』
『魔人化なんだけど、この天賦を使うことでウォードと私が徐々に融合するみたいなの』
『魔物か魔人になるってこと?』
『人と獣や竜と人が交わった亜人種に近いんだと思う。人であることを望むのなら、魔人化は使わない方が良いとだけ伝えておくわね』
『それなら問題ないよ。パミュルと完全に一つになれるのなら、喜んで亜人種になるよ』
『あぁ、ウォード、嬉しい愛しているわ』
『ふふっ、僕も愛しているよ』
魔人化することで、俺の体内で心臓として共存しているパミュルと融合が進むようだ。人であることを望むのならば、魔人化を控えるようにと言われた。人であり続ける必要なんて俺にはない、パミュルと一つになることで、人ではない者になれるのなら望むところだ。俺の答えは人成らざる者になることを選ぶ。
程なく裏手の非常用の門に到着すると、暴動の方に人手が回って守りが手薄になっていた。
「予想通りだね。さぁ、突入するよ
「「了解」」
魔人化して非常用の門を破壊する。パミュルから使い続ければ融合が進むと言われた直後だけど、気にすることはなかった。
『ドカッ!』
「なに? 敵襲だと!ガッ……」
門を破り領兵を瞬殺すると、ラミュルを救出するべく領主邸を探索する。できれば誰も俺達の行く手を阻んで欲しくないが、立ち塞がる者が居るなら容赦なく斬り捨てで進むのだった。
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