第52話 大切な人達を守る為に②

 大型の魔物が現れたことで、スタンピードは中盤に差し掛かったといえるが、魔物の強さはまだまだ強くなっていく。モンスタールームでは皇帝エンペラーゴブリンが現れたことをを考えると、未だに将軍ジェネラルゴブリンも現れていない。


「くっ、僕達をターゲットにしてくれる方が戦いやすいな……」


 このスタンピードは、ヤンカー市を壊滅させることが目的なので、基本的に俺とセレーナを無視して城塞を目指していく。向かってくる魔物を相手にするなら、待っていれば良いので目の前の魔物に集中できる。だが現状では倒す魔物を確認して、こちらから動く必要があるのでかなり厳しい状況だ。


 泣き言を言っても仕方がない、俺とセレーナは出来る限りの魔物を倒し続けたが、大型の魔物を倒すので精一杯になり、領兵では城塞にたどり着いたゴブリンを倒しきれなかった。


 堅固な城塞は簡単に破壊されなかったけど、城塞に溢れたゴブリン達が重なり合って、徐々に山のような形になる。俺はこのままでは不味いと思い領兵に大声で指示を出した。


「ゴブリンが山になって城塞を越えようとしているぞ!剣士を向かわせて対処するんだ!」

「そんな!剣士は領主邸に配置されているから、弓士しかここには居ないんだよ……」


 ここの領主と兵長は、前のスタンピードから何も学ばなかったようだ。堅固な城塞を築くだけで乗りきれるなんて考えが甘すぎる。このままではハリエット達にも危険が及んでしまうので、俺はセレーナに指示を出してから、現状を打破する為に魔人化することにした。


「セレーナ、ここは僕が引き受けるから、ゴブリンの山を崩しに行くんだ」

「ここを1人では無理です!」

「魔人の天賦を使うから問題ないよ〚魔人化ディレーヴ〛!」

「っ……、かしこまりました」


 セレーナは俺が魔人化したことでなにかを言おうとしたけど、思い留まりゴブリンの山へと向かったが、セレーナの言いたいことは判っている。俺の魔人化した姿を領兵に見られれば、魔族の仲間だと思われて、敵として認定されるかも知れないからだ。例えそうなったとしても、俺は大切な人達を守る為なら、どんなリスクを冒してでも守る為の行動をとる。


 魔人化すれば黄金の体になるはずなのに、姿が変わっていないことに驚いていると、パミュルが声をかけてきた。


『魔人化した時に感じたんだけど、私とウォードが同化してる感覚になるの。だから、私の変化で人の姿を維持できないか試したんだけど、上手くいったようね』

『ありがとう、助かるよ』


 とりあえず見た目に関しては変わらぬまま。能力が飛躍的に向上するので、領兵に疑われるかも知れないけど黄金の体よりましだね。


 城塞の方はセレーナに任せて、俺は目の前の魔物を駆逐することにした。


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