第16話 根拠はないけど

 強化魔法を軽く体感してもらった翌日は、アナスタシアの防具を揃えようと思ったら、パミュルが俺に話しかけてきた。


『アナスタシアの装備は、少し大きいかも知れないけど、私の物が合うんじゃないかしら?ウォードなら微調整できるでしょ?』

『確かに良いかもね。アナちゃんに聞いてみるよ』


 アナスタシアが構わないと言えば、パミュルの装備や私服を使ってもらおうと思った。なんとなくパミュルに雰囲気が似てるので似合うはずだからね。


 朝食の時にパミュルの装備を勧めると、最初は遠慮して断っていたけど、俺が『凄く似合うと思ったから、身に着けた姿を見たかった』と伝えると、『ウォードさんが望むのなら』と少し頬を赤くしながらOKと言ってくれた。その後にハリエット達が『はぁ~』と溜め息を漏らしたけど、その意味はよく判らなかった。


『ふふっ、無自覚で女を落とすなんて、流石は私のウォードだわ』


 パミュルからも意味の判らないツッコミを入れられたけど、食事の後はアナスタシアにパミュルの装備を身に着けてもらって、軽く微調整をしてから討伐へと向かったのだった。


 討伐ポイントは昨日と同じで、俺の指示とアナスタシアの強化魔法による身体強化に慣れてもらうのが目的だ。ここでしっかりと新パーティーの感覚を掴んでから、少し強い魔物を討伐していくことにした。


「今日から僕が指揮を取るのと、アナちゃんの強化魔法による攻撃強化に慣れてもらうよ」

「「OK!」」

「あの〜、ちゃんを付けられると他人行儀に感じるので、アナと呼んでください。これでもウォードさんと同じ年齢なんです」


 アナスタシアはちゃん付けで呼ばれることが気になっているみたい。指示を出す時にはアナの方が呼びやすいので、アナスタシアの希望通りに呼ぶことにした。


「OK、アナと呼ぶから僕のこともウォードと呼んでくれるかな?」

「はい、ウォード!」


 アナスタシアが嬉しそうに俺の名前を呼ぶと、サーシャとメルローズが俺に声をかけてきた。


「「私達も同じように呼んでもいい?」」


 2人がそんなことを言ってきたので、当然OKだと返事をする。

 

「OK、サーシャとメルと呼ぶね!」

「「ウォード、よろしくね」」


 2人は嬉しそうに返事をしたところで、草原を移動して本格的に討伐を開始することにした。


 草原を進んで行くと、もの凄い勢いで近づいてくる気配を感じた。


(この感覚はなんだろう?魔物が近づいてるような気がする。念の為に注意をしておくか)


「根拠はないけど、魔物が近づいてる気がするんだ。前の三方向だからメルは重力魔法の発動準備、僕の合図で発動して欲しい。アナはハリエットとサーシャに攻撃強化をよろしく」

「「はい」」


 指示を出した後は、前方に意識を集中して魔物が現れるのを待ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る