　ベッドの上で目覚めると、全員が俺の周りに居ることに驚いた。

「えっ……どうしたの？」

「覚えてない？胸の痛みで倒れたのよ？」

　パミュルが今にも泣きそうな顔で、俺が倒れたことを伝えると、薄っすらと思い出すことができた。

「馬に餌をあげようとした時かな？ごめん、心配をかけちゃったね」

「うん、本当に心配したわ……」

　俺は倒れたことを思い出して謝ると、パミュルは泣き出して俺の胸に顔を置いた。ハリエットも泣き出して手を握りしめてきた。メルローズとサーシャも目覚めたことに、安心した表情になっているのが判って、相当な心配をかけたことを理解した。

「ウォード、世界を旅して回りたいと言ってたけど、今の体調を考えると……」

　ハリエットは涙ながらに言おうとしたことが判ったので、最後まで言う前に俺が答えた。

「うん、無理だと判ってる。それどころか、いつまで生きれるかも……」

　そして、この状態では、いつ死んでもおかしくないと思い、そのことを口にすると胸元で泣いていたパミュルが声を荒げた。

「ダメ、それはダメ！私はウォードの居ない世界では生きていけないわ……そんな言葉は絶対に口にしないで」

「ごめん、でも現実を受け止めて欲しい。僕が居なくなった後のことを考えないと、残った人はその後も人生は続くんだからね」

「「そんな……」」

　俺が居なくなれば輝煌星（きこうせい）は解散して、メンバーは別々の人生を歩むことになる。その覚悟は持っておいて欲しいので、辛いと思うけど伝えてると、サーシャとメルローズも泣き始めた。

「大丈夫だよ。ヤンカー領に着けばウォードの妹で、白魔術師のラミュルさんが居るかも知れない。あの人ならウォードと治療ができるはずだから、1日も早くヤンカー領を目指そうよ」

　みんなが悲壮感に陥ってる時に、ハリエットだけはラミュルが居る可能性に賭けて、ヤンカー領へ早く向かおうと言った。その目からは涙が溢れていたけど、その瞳は決して諦めていなかった。

「そうね、ウォードの妹なら優秀だから必ず治せるわね。それなら昼夜止まらずにヤンカー領を目指すわよ。ハリエットもそれで良いわね？」

「当然よ、今こうしてる時間も惜しいもの」

　ヤンカー領に居ると思われるラミュルの治療に期待することになり、直ぐに出発することになったようだ。あまりにも強硬な日程になるので、2人へかかる負担が大き過ぎると思い、せめて夜だけでも休んで欲しいと伝えると、パミュルは首を振って認めなかった。

「そんな無理をすれば2人の身体がもたないよ。夜だけでも休息を取らないとダメだよ」

「それは無理な相談ね。私は休息を必要としない身体だから、ハリエットにはしっかりと休んでもらえば良いでしょ？」

　パミュルの意思は固そうだ。これ以上は何を言っても首を振り続けると思ったので、認めるしかなかった。

「判ったよ。でも無理はしないでね？」

「ウォードを悲しませるようなことはしないから、安心して休んでいてね。ハリエットは先に休んで、残りで出発の準備をするわよ」

「「OK！」」

　ヤンカー領にラミュルが居ることを祈りながら、昼夜止まらずに家馬車（ルーロット）を走らせて帰郷したのだった。

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