第114話 世界中を旅する

 俺はハンターだと伝えると、アストン師匠は納得できない表情で理由を聞いてきた。


「なぜ、ハンターに拘るんだ?お前の才能は錬金術をする為にある。そう言って良いほどの天才だと俺は思ってる。納得いく説明をして欲しい」


 俺は師匠に嘘偽りはなく思った事を伝える。


「師匠からそんな言葉を頂けて光栄です。僕は子供の頃から世界中を旅して回りたいと思ってました。それに適してるのがハンターなんです。ハンターとして強い魔物を討伐できるような強者ではありませんが、この魔法地図マジックマップでダンジョンをマッピング作成する事で、たくさんのハンターの命を救えるんです。地味な活動だと思われるかも知れませんが、僕は誇りを持って活動してるんです」


 俺の言葉を聞いた師匠は、深く目を閉じて考え込む。しばらくその場に沈黙が続いたが、師匠が目を閉じたまま口を開いた。


「錬金術で便利な世の中に、ハンターでたくさんのハンターの命を救うか……お前は聖人にでもなるのかも知れないな」

「買い被り過ぎですよ。僕は心の思うままに生きていくだけですからね」


 以前、パミュルに言われた言葉『心の思うままに進めばいい』を思い出して、そのまま師匠に伝えると、『パッ』と目を開くと師匠の顔は笑顔になっていた。


「判った。お前の人生だ俺がとやかく言う事ではなかったな。これだけは言わせて欲しい。世界中を旅して回った最後に、お前が錬金術師として頑張りたいと思ったら、デルポト市で俺の跡を継いで欲しいんだ。これから先、俺の弟子と名乗るのはウォードお前だけだ」


 師匠の言葉を聞いて胸が熱くなった。世界中を回る旅はかなり長い期間になると思う。それでも旅の最後に、俺が錬金術師として頑張りたいと思ったら、師匠の跡を継ぎに来いと言ってくれたんだ。俺はその思いを汲んで答える。


「はい、いつ僕の旅が終わるか判りませんが、錬金術師になりたいと思った時は、師匠の元へ戻って錬金術師として頑張る事を誓います」

「将来の自分の進む道の1つだと思えば良い。あまり期待をせず、お前に負けないように金術を極めてやるさ」

「ははっ、準男爵になった時点で、錬金術を極めてるじゃないですか!」

「ばっ、馬鹿!お前の代わりに術式を公表したせいだろうが!」

「「あははっ〜」」


 最後は冗談を言って思い切り笑いあった。

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