第52話 ハリエットの真骨頂

 ダンジョンから戻って、ハンター協会出張所で魔石の換金をしてもらう。


「あんた達は本当に頑張るね。周りを見れば判るだろうけど、魔物を討伐してる者は居ないんだよ。本当にありがとうね」

「いいえ、僕達は未熟者なので、周りに迷惑を掛けずに討伐が出来るこの環境はありがたいです」


 サチさんとの会話を済ませた後は、食材等の買い出しをしてから部屋へ戻って、夕食を取りながら明日の話をする。


「明日は、イテーツさんの店に寄って、やじりを矢に付けてもらってからダンジョンへ行きますね」

「OK!明日は特別製の矢を試せるのか~、考えただけで楽しみだな♪」

「外殻を貫けるようなら、ダンジョン攻略が捗りますからね。僕も楽しみなんですよね」


 明日の予定を話し終わった後は、風呂に入って明日に備えて寝る事にした。


 そして翌朝、ダンジョンへ行く前にイテーツさんの店に寄って、やじりの加工が終わってるなら矢に取り付けてもらう。


「おはようございます」

「おぅ、やじりの加工は終わったぜ」


 やじりの加工は予定通りに仕上がっていたので、ハリエットさん矢に取り付けてもらえるかを確認する。


「ありがとうございます。そのやじりを矢に取り付けてもらう事は可能ですか?可能なら費用は払うので取り付けて欲しいのですが」

「あぁ、出来るぜ!費用は不要だ。珍しい素材に触れる機会をくれたからな!姉ちゃん、取り付ける矢を渡してくれ」

「この矢でお願いします」


 ハリエットさんは2本の矢を渡すと、イテーツさんは『パパッ』とやじりを取り付けて、ハリエットさんへ矢を返した。


「ほらよ、撃ってみて違和感があるなら教えてくれ、微調整をさせてもらうよ」

「ありがとうございました」


 やじりの加工の次は、外殻を使った防具の作成を頼む事にした。


「あれから外殻を集めたので、ハリエットさん用の防具を作って欲しいんですよ」


 そう言ってダンゴムシの外殻を5枚渡す。イテーツさんはその数に驚きながらも何を作れるか考案を始めた。


「姉ちゃんは弓がメインなら動きやすさが重視だな。胸当てや籠手で考えさせてくれ。2日後に俺なりのデザインを考えるから店に来てくれ。その時に姉ちゃんの希望を聞かせてくれれば、最終的なデザインを決定するよ」

「2日後ですね。判りました」


 防具の作成を依頼してから、いつもより少し遅くなったけど、ダンジョンへと向かってマッピングを開始する。新しいやじりの威力を確認するので、ダンゴムシが現れたらハリエットさんの弓に任せる事になっている。


『カサカサ……』

「移動音です。もう少し移動して目視出来たらお願いします」

「OK!効かない場合はいつも通りよね?」

「はい」


 動作を確認してからゆっくりと前へ進むと、ダンゴムシが視界に這入ったので、ハリエットさんは特製の矢を持ってから射出すると、見事にダンゴムシの頭に当たる!


『ビシュ!』

『バンッ』「ギギィ……」


 特製の矢は弾かれる事なくダンゴムシの頭を貫通して、魔石を残してダンゴムシは消滅した。今までの苦労は何だったのか?と思うほど簡単にダンゴムシを倒せた事に2人とも驚いた。


「凄い貫通力だったね(汗)」

「はい、想像以上でしたね(汗)」

「私は矢を回収するから、魔石をお願いね」

「OKです」


 この後もマッピングを進めた。現れたらダンゴムシは、ハリエットさんの弓によって簡単に倒せたので、上層のマッピングは予想以上に捗った。あと1日もあればマッピングは終了して、下層へと進めそうな感じだった。


 動きの遅いダンゴムシは、ハリエットさんと相性がよくて〚弓術〛の真骨頂を存分に披露してくれた。本当に頼りになる相棒だね♪

 

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