第46話 イテ―ツへの依頼

 ガンコーさんに連れられて、弟が営んでるという武具店へ向かう。

 着くまでの間は、ルクンナ洞が上下2層しかないに関わらず、硬い外殻の魔物しかいない為にダンジョンとしての難易度が高くて、冒険者があまり来ないと嘆いてた。


「そうなんですね。暫くはルクンナ洞を攻略したいと思ってるので、魔物の攻略方法が判ればハンター協会へ情報を提供しますね」

「攻略方法の情報って……それが出回れば収入が減るんじゃないのか?」

「そうかも知れませんが、ルクンナ村へ冒険者が来るようになれば、弟さんを紹介してくれるガンコーさんへのお礼になりますから!」

 

 俺の言葉を聞いたガンコーさんは、目を丸くして驚いていた。そして嬉しそうな顔をしながら俺の肩を『バン!』と叩いてから話し掛けてきた。


「嬉しい事を言ってくれるな!今の言葉は心に『ジーン』と来たぜ!何か相談があれば何でも言ってくれよね」

「はい、よろしくお願いします」

「おっと、ここが弟の店だ。紹介するから入ってくれよ」


 ガンコーさんが勢いよくドアを開けて店へと入っていくので、俺達も続いて入っていくと、様々な武器と防具を綺麗に陳列されていた。


「おい、イテーツ!客を連れて来たぞ!」

「兄貴か、客って珍しいな」


 店の奥から双子かと思う程にそっくりな店主が現れた。


「こんにちは、ハンターをしてるウォードです」

「パーティーメンバーのハリエットです」

「おい、子供と女じゃないか。採集セットなら兄貴の店で売ってるだろ」


 イテーツさんが素っ気なく言うと、ガンコーさんは『ニヤッ』と笑いながらムカデの尻尾をカウンターに置くと、イテーツさんはムカデの尻尾を手に取り素材を確認したが、何かは判らなかったらしい。


「おい!兄貴、これは何だよ?」

「このウォードがな、ダンジョン上層のムカデを倒した時にドロップが出たムカデの尻尾らしいぜ!」

「ムカデの尻尾って、外殻以外にもドロップがあったのか?硬度は外殻より遥かに硬そうだな。これを加工するって事か?」

「あぁ、こちらの姉さんのやじりを加工してやって欲しいんだ。3つは取れないか?」


 ガンコーさんが俺の代わりに加工まで頼んでくれた。イテーツさんはやじりの加工と聞いて、工具を持ち出してきて『ブツブツ』と言いながらサイズを測っていた。


「貫通力が欲しいなら、鋭利なやじりに加工するから2つになるな」

「通常よりも鋭利な方がお勧めですか?」

「これだけの硬度だからな、鋭利なやじりにすればダンゴムシの外殻なら貫通するかも知れないぜ!」 


 ダンゴムシの外殻を貫通出来るなら、ダンジョンの攻略が楽になるのと、ダンジョン内なら魔物を倒せば消滅して矢の回収が容易な事を考えると、鋭利なやじりを持つメリットが大きいと思ってると、ハリエットさんが俺に話し掛けてきた。


「ウォード、私は鋭利なやじりが良いと思うの。ダンジョン内限定で使えば矢を回収し易いでしょ?」

「僕も同じ事を考えてました。イテーツさん、鋭利なやじりの加工を頼めますか?」

「任せな!3日で仕上げる。加工賃は2つで金貨5枚になるが大丈夫か?」

「はい、問題ありません。後は外殻で防具を作ってもらう事は出来ますか?」

「素材の大きさにもよるが作れるぜ」

「このダンゴムシの外殻ならどんな物が作れるでしょうか?」


 俺はダンゴムシからドロップした外殻を見せると、イテーツさんは直ぐに返事をした。


「2枚あれば胸当てチェストプレートが作れるな。1枚なら籠手ガントレットだな」

「そうですか、集まったら相談しますね。では、3日後に来ますのでよろしくお願いします」

「あぁ、任せてくれ!」


 イテーツさんに、やじりの加工を依頼してから、ガンコーさんにお礼を言った後は、宿へ戻って明日に備える事にした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る