第32話 裏切り

➖・➖・ミリム視点・➖・➖

 レイバン達はスライムの穴4階層に到着した。


「レミー、この階層はお前の弓に掛かってる。ここを突破出来れば、この階層の収益はお前に半分やるから頼むぜ!」

「久し振りの弓だから期待をされても困るんだけど、収益の半分は嬉しいわね♪」


 ミリムの情報により、弓による攻撃が最も有効だと知ったので、パーティーメンバーのレミーが弓を手にしてスライムに向かって弓を射る。


「バシュッ!」「バシュッ!」


 弓を射れば当たるというものではなく、技量が伴ってなければ当てることさえ難しいのに、素人のレミーでは核を射抜く事は出来なかった……


「やっぱり無理ね!スライムに当てるだけなら何とかなるけど、核に当てるなんて素人の弓使いじゃ不可能よ」

「クソッ!ここさえ突破出来れば、後は楽勝なのによ!無能なのにミリムや、あの姉ちゃんみたいな有能な女を連れやがって!」


 ミリムは、ウォードが先へ進めるのは〚幸運〛の天賦のおかげだと思った。ドロップアイテムが多いのも全てが〚幸運〛があるからだと思った。


「あのね、ウォードは無能だけど〚幸運〛って天賦を持ってるの。だからスライムからアイテムドロップもたくさん出るし、私やハリエットさんとも知り合えたんだと思う」


 ミリムはハンターとしての暗黙の掟を知らず、本人の了承を得ずに天賦の情報をレイバン達に教えてしまった。レイバンはウォードの天賦を聞いて悪知恵を働かせた。


「なんだよその天賦は!あのガキを連れてるだけで運気が上がるのかよ!ガキを奴隷にして連れて歩けば大儲け確実じゃねぇか(笑)」

「おい、それは流石に可哀想じゃないか?」


 メンバーの1人カルバンが、レイバンの奴隷発言を指定すると、意見された事に苛立ったレイバンは、カルバンの胸ぐらを掴んで持ち上げる。


「おい、俺に意見するとはいい度胸だな!このまま『ボコボコ』してやろうか?」

「す、済まねぇ……悪気はないんだ……ゴメン」

「判ってるなら、俺に意見するんじゃねぇ!どうせここを抜けれないんだ。今日は帰ってガキを捕まえて奴隷商へ連れて行くぞ」

「「おぅ」」


 ミリムはレイバンの発言を聞いて、言ってはいけない事を言ってしまったと思い後悔した。


➖・➖ウォード視点・➖・➖

 俺達は6階層のマッピングを終えたので、予定通り7階層へは進まずに戻る事にした。


「あと少しでダンジョンから出れますよ」

「あぁ~、ゆっくりとお風呂に浸かりたいね」

「そうですね。睡眠は母さんのおかげで取れたけど、野営では風呂には入れませんからね」

「ゆっくりと休んで英気を養おうね。そして、次は思いきって10階層を目指しちゃう?」

「はははっ、それはスライムの特性次第ですね。2人で対処出来ない場合は諦めて、借家を借りてる期間は行ける階層で頑張りましょう」

「そうね。徐々に特性の難易度が上がってるもんね。あっ、出口だよ♪」


 ハリエットさんと話しながら戻ってると、ダンジョンの出口が見えてきた。ここまで来ると『ホッ』と安心して顔がほころぶ。


「早く精算して家へ帰りましょう♪」

「うん、お風呂に入りたい~♪」


 こうして、4泊5日のダンジョン攻略から戻って来た。この時、ミリムの裏切り行為によって、俺とハリエットさんが窮地に陥るなんて思ってもいなかったんだ……

 




 

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