第2話 幸運で何が悪い?

 スキル確認の儀式から家へ帰る道中、母ちゃんは溜息をつきながら話す。


「しかし……〚幸運〛って……、農家の息子が持ってても役に立たないんじゃないのぉ~?」

「そうか?俺が居るから作物がたくさん育ってるかも知れないよ? そうだとしたら俺って役立つ存在な訳だよね?」

「馬鹿!農作業に運なんて関係ないよぉ。毎日コツコツと働くからたくさん収穫出来るだからねぇ。父ちゃんが天賦スキルを知ったらガッカリするのが可哀想だよぉ……」


 母ちゃんは〚幸運〛は役に立たないと思い込んでるようだった。俺も今のところ〚幸運〛なんて感じた事が無いから偉そうには言えないけど……、でも必ず〚幸運〛のお陰で良かったと思える日が来ると信じてる。

 それは俺が前世の最後に願ったからだ。誰に何を言われても俺は〚幸運〛を信じて生きていくと心に誓った。


 そして家に着くと、父ちゃんや他の兄ちゃん達が俺の天賦スキルを聞いてきた。


「ウォード、どんな天賦スキルだったんだ?」

「あぁ、〚幸運〛だったよ」

「おい、それだけか?」

「うん、〚幸運〛だけだよ。」

「そんな事があるのか? 俺は〚農業〛〚木樵〛〚棒術〛があるぞ?」


 俺以外の家族全員が〚農業〛を持っていて、それ以外にも最低2つは天賦スキルを持っていた。


「お前は〚農業〛が無いなのら役に立たないな、役立たずは早く家を出て行けよ」

「……判ったよ。取り敢えずハンター協会で登録してハンターになるよ。慣れたら家から出て行くからそれまで居て良いか?」

「ただ飯を食わせれないからな、ちゃんとハンターの稼ぎで払ってもらうぞ?」

「あぁ判ったよ。明日にでもハンター協会へ行ってくる。ハンターの仕事が出来るまでは、手伝いするから飯を食わせて欲しいんだけど?」

「それは構わない。だが早く家を出れるようにハンターを頑張るんだぞ!」


 父ちゃん達は俺の天賦スキルが〚幸運〛だけだと判ると役立たずの邪魔者扱いか……、〚幸運〛は仕事してるのかな? そう思いながらその日は寝た。


 家族の邪魔者扱いになり家を出てハンターになる事が〚幸運〛で、ハンターとして色々な仕事をしながら、色々な場所へ移動する事でたくさんの〚幸運〛を呼び寄せる事になるなんてさ、この時の俺に判る訳が無いもんな(笑)


 上手く行ってないと思いながらも、実はうまく行っていたんだから〚幸運〛には大感謝だよ!

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