46th Mov. みんなとクリスマス会
「メリークリスマス!」
定番のようになった僕の家で始まるクリスマスパーティー。
ケンタッキーとピザとケーキとお菓子。それにジュースやお茶が所狭しと置かれている。
座り方は僕の前に紬、中野の前に神田さんという男女で別れる座り方。
最近はこのように座ることが多くなった。なんでも神田さんが中野の隣に座るのが恥ずかしいからだとか。
中野曰く、二人の時はそうではないらしいので、特に心配する必要は無さそう。
気心知った仲の四人だと、つまらない授業の話でも楽しくて、何気ない一日の会話でも盛り上がれる。
「野田はバイト忙しいんだよな? 今は何やってんだ?」
「今は宅配の倉庫作業だよ」
「宅配の倉庫作業? 荷物の割り振りとか?」
「担当する配達ドライバーの人たちのためにエリアごとに荷物を振り分けるんだよ」
「あー、そういうことね」
「それってドライバーさんがやるんじゃないの?」
「この時期、荷物が多すぎてドライバーさんだけだと配る時間が無くなっちゃうんだ。だから振り分けはバイトがやるんだって」
「この時期はセールとか多いしな。それにプレゼントもポチったりするし」
「へぇー。透はネット派なんだ?」
「いやいや! そんな訳ないだろ。千代のは色んな店を探し歩いて、ようやく見つけたんだぜ?」
「そ、そっか……」
神田さんは、冷たい目線を送ったかと思いきや、中野の言葉に少し耳を赤くして、俯いてしまう。フォローすべき中野も少し照れているようで、反対の方を向いてしまっていて、何とも言えない空気が漂う。
「――あまーい! って、そういう雰囲気は二人の時にしてください!」
珍しく紬のツッコミがさく裂し、二人の世界になりそうな雰囲気を引き戻す。
「じゃあプレゼントの話になったことだし、プレゼント交換しちまおう」
「良いね! どんな風に交換会するの?」
「んー、そうだな。ちょっと待ってな」
そう言うや否や、スマホを取り出し、ポチポチする中野。
一分も経たずに入力を終えた彼が見せてきたのはクジ引きアプリ。
真ん中のボタンをタップすると、番号が表示されるらしい。
僕らのプレゼントを横一列に適当に並べ、番号を振ったら中野がスマホを渡してきた。
「僕から?」
「おう。クジだし誰からでも変わらないんでな」
じゃあと、画面をタップするとルーレットが回転し、4という数字が表示された。
「4っていうと、こっちの右端だな。じゃあ次は伏見」
「はーい」
紬がポチると画面には1という数字が。
「伏見は1番だから、左端ので。次は千代もどうぞ」
「そうしたいけど、残ったプレゼントのうち一つは私のだから、別ので良いかな?」
「もちろん! せっかくのプレゼント交換会なんだから、それで良いよー!」
「じゃあ、私はこれで、透がこっちね」
「おっけー。じゃあ俺は残りのやつで。全員手に持ったら、みんなで開けようぜ」
中野の提案の通り、各自が交換されたプレゼントを手に持ち、袋を開く。
僕のは――、ピアノや音符が描かれた付箋?かな。
「あっ! それ私からのだよ! 色んな付箋セットです!」
裏を見たりして確認している僕に子田をを教えてくれた紬。
「これは紬からだったんだ。ありがとう」
「どういたしまして! みんなは受験勉強もあるし、勉強で使えそうな奴が良いかなって思って。拓人くんに貰ってもらえて良かった!」
「野田には伏見のが行ったか。良かったじゃん。俺のは千代からで、伏見はどんなのは入ってたんだ?」
「えーとね、これは……ちょっと大きいの。今袋から出すから待ってて」
そういって、悪戦苦闘している紬。あれは四角くて角ばっているから袋から取り出しにくそうだ。入れたのは僕なんだけども。
「これは……、ブリーフケースって言うんだっけ? これにもピアノが描かれてるよ! それに黒兎も!」
取り出したプレゼントは書類などを入れるブリーフケース。買ったお店では楽譜入れというPOPが貼られていた。黒と白のモノトーンで鍵盤がプリントされ、白い鍵盤に黒い兎は跳ねまわっている構図だ。
「それは僕からだね。楽譜とかノートとか、最近レッスンで色々持ち込むって言ってたから」
「そうなの! 覚えててくれたんだ! これは助かるよー!」
「完璧に伏見のことしか考えてなくね? 野田よ、これは四人のプレゼント交換だぞ?」
「あっ……。ごめん。プレゼント選ぶのに悩み過ぎて、イメージしやすい紬だったら何が良いかで決めちゃった」
「良いんじゃない? 結果的にイメージした本人に渡ったわけだし」
「結果的にな。それも運命ってやつか」
「そっかぁ~。拓人くんは、私のことを沢山考えてくれてたんだ~」
そう言って、座りながらすり寄ってきた彼女は、僕のほっぺたを指でうりうりと突っつく。嬉しさの表現なのかもしれないけど、うりうりするのは肩くらいにして欲しい。
「ちょっ、ほっぺたはツンツンくらいが良いんじゃないかな?」
終わりそうにない、うりうりが少し痛くなってきたので、やんわりと窘める。
それでもニヤニヤした彼女が止めることはなかった。
「おーい、そういうのは二人の時にするんじゃなかったのか?」
仕返しのように、少し意地悪なニュアンスを含んだ中野の指摘に、僕らはパッと離れた。
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