君を、このレンズに捕らえたい
晶の華
第1話 戯れとカウントダウン
カシャ。歯切れがよく、聞き慣れた音が皐月のカメラから鳴る。
「撮れた?」
いつもの会話。彼の家の庭は、良く日が当たり居心地が良い。
「うん!」
爽やかで輝かしい笑顔が自分に向けられている。いつもの会話で、いつもの笑顔なのに、少しドキっとしてしまう。思春期、だからか。そんなことを考えていたら、
「ほら、見て!ブレてないし、いつもの真顔な響輝の顔に光が当たって、すごく綺麗に見えるよ!まぁ、いつも綺麗だけどね。」
「ん?最後聞き取れなかった」
「ううん。何でもないよ」
皐月が満足気な顔をする。なんて言ったか気になりつつも、もう一度聞いても答えてくれなさそうだと思い、カメラに視線を戻す。
「毎回思うけど、皐月が撮ると自分の顔じゃないみたい。さすが皐月だよ。」
「まだまだだよ。だから、高校卒業したら撮影技術を大学に学びに行くんじゃん?」
「そっか。」
登下校も、学校内でも、放課後も、塾も一緒だった皐月が俺の隣に居ることが減るということを実感させられる。
「寂しい?」
「え、逆に聞くけどさ、寂しくないと思ってるわけ?」
「いや?」
皐月がふっと笑う。なんだか、からかわれ、負けた気分だ。
この日々が、いつか終わるなんて、俺には考え付かない。
――あとがき――
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