第14話:旧友との再会
梅雨を感じさせる雨の日の昼。永伊邸では城達が穏やかに過ごしていた。
すると玄関のチャイムが鳴り、二階の自室に居た尉は少し小走りで部屋を出て階段を降りる。
「はいはーーーい。今、行きまーーーす」
尉はドアの鍵を外し、開けるとそこには旧友であるパーシー達が笑顔でいた。
「よぉ!尉、久しぶりだな」
冒険パーティー、探究者達を抜けて以来の再会に尉は喜ぶ。
「おぉーーーーーっ!パーシー!それに皆!久しぶりだな!さぁ!入って入って!」
「ああ、お邪魔するよ」
尉は邸内に入れたパーシー達と再会を喜び合う様に握手やハグをする。
「パパーーーーっ誰が来たの?」
階段を降りて来たマーキュリーはパーシー達の姿に驚く。
「え⁉︎まさか、パーシー・フォーセット教授ですか?」
マーキュリーからの問いにパーシーは笑顔で被っていたカウボーイハットで挨拶をしながら答える。
「ああ、そうだよお嬢さん」
「パーシー、それに皆。紹介するよ。俺の義娘のマーキュリーだ」
尉がマーキュリーの自己紹介をすると二階から義娘達とセトラがぞろぞろと降りて来た。
その後はマーキュリー達とセトラを交えながら尉はパーシー達をソファーのあるリビングへと案内し、そこで昔の事やガールンでの大冒険を話して楽しんでいた。
「マジかよ尉?それじゃ彼女は古代メソトラ王国の王女なのか?」
向かいのソファーに座るセトラに向かって尉の右に座り、腕を伸ばすロイの問いに尉は笑顔で頷く。
「ああ、そうさ。しかもミイラで、俺とは性質は違うが、不死身だよ」
「おお!そりゃ凄いなぁ。学界や冒険者ギルドで噂になっていてなぁ。お前が蘇ったミイラの王女と婚約しているって」
すると尉とロイの会話に割って入る様にジェーンが二人の間から顔を出す。
「ねぇ尉、同僚から聞いたんだけど、冒険者に復帰したのよね?」
ジェーンからの問いに尉は軽く首を横に振る。
「いいや、神器を回収し終えたと同時にまた辞めたよ」
「そう・・・」
尉からの答えにジェーンは少し悲しい表情をするので尉は笑顔で彼女にアドバイスをする。
「心配するなジェーン。冒険者を辞めても何か相談があったらいつでも頼っていいぞ」
それを聞いたジェーンはパーッと明るい笑顔となり、右のソファーに座るパーシーを見ると、それに気付いたパーシーは彼女と共に頷く。
「尉、実は貴方に見て貰いたい物があるの」
するとジェーンは床に置いてある冒険用リュックサック型のマジックバックから約五千年は経っている石板を取り出し、尉に渡す。
「どれどれ・・・これは⁉この古代文字は古代ネプチューン帝国のものじゃないか‼」
尉が言った古代文明にジェーンは頷く。
「ええ、そうなの。実は尉達がガールンへ行っている間にアトランティスの南東部にあるセヴァン渓谷の湖でグラーキ遺跡の発掘調査で出土したの」
「なるほど。で、この石板に書かれてある文字を解読すればいいんだな?」
尉からの問いにパーシーが首を軽く横に振る。
「いいや、違うんだ尉。解読して貰いたいのは文の左隣りにある三つの円の真ん中に島の絵が刻まれているだろ?解読はその円に刻まれている文字だ」
「よし!分かった。サターン、ウラノス、ネプチューン、悪いがパパの部屋から古代文字に関する本を持って来てくれ」
尉からの頼みにサターン、ウラノス、ネプチューンは笑顔で立ち上がり、頷く。
「「「はい!パパ」」」
そしてサターン、ウラノス、ネプチューンは階段を昇り、二階へと向かう。すると今度はジュピターが立ち上がり尉に近づく。
「ねぇパパ、コーヒーいる?」
サターンからの問いに尉は笑顔で頷く。
「ああ、貰うよ。それとパーシー達にも頼むよ」
「分かった、パパ」
そう言うとサターンは一人、キッチンへと向かった。
■
それから、しばらく経ち尉はサターン、ウラノス、ネプチューンに頼んだ古代文字の本を使い円に刻まれた古代文字を解読していた。
「なるほど、なるほど。よし!解読が出来たぞ!皆‼」
サターンが入れたコーヒーとドーナッツを食べながら解読を待っていたパーシー達が尉からの朗報に皆が歓喜する。
「それで、円には何て書いてあるんだ?」
「ああ、早く教えてくれよ」
子供が興奮しておねだりする様に言うドレイクと矗を尉は宥める。
「そう慌てるな二人共。じゃー読むぞ」
尉は右手の人差し指で円の文字をなぞりながら訳した現代語を話し始める。
「えーと、これによると『大西洋上、最南端にあるネプチューン帝国の島。その島には膨大な知識と莫大な財宝がある。島の場所は
「これは座標の暗号か?星座にどんな意味が」
矗がそう言うと尉は何かに気付いたのか、急いで二階の自室へ急ぐ様に向かい、そして地図と定規、赤い鉛筆、そして何か羅針盤の様な道具を手に戻って来る。
そして尉はリビングのテーブルに地図を広げ、その上に道具を置くと羅針盤を動かし定規を使って地図に赤い鉛筆で線を引き始める。
「よし!島の場所は・・・・ここだ‼」
尉は少し興奮した表情で大西洋上のとある場所に丸をする。
「そこが島の位置か。えーーーっと座標は南緯54度33分、東経5度50分か。何でわかったんだ尉?」
海図が付属された手帳に座標を書き込むドレイクからの問いに尉は笑顔で答える。
「簡単さ。石板が記されていたそれぞれの星座を位置にその方向の星座に向かって線を引くだけさ。これだと大西洋の中心にある金星を軸に射手座から獅子座、牡羊座から天秤座に向かって線を引くとさっきの座標で二つの線が重なるんだ」
尉からの答えにドレイクは納得する。
「なるほどね。流石だよ尉!」
ドレイクが笑顔で尉を褒めていると物凄い笑顔でマーキュリー達が静かに現れる。
「それでパパ、いつ島に向かって出発するの?私達はいつでもいいわよ」
マーキュリーからの唐突な問いに尉は少しズッコケる。
「おい!待て、お前達‼まさか行きたいのか?島へ」
「「「「「「「「「うん」」」」」」」」」
マーキュリー達の迷いのない純粋な返事に尉は頭を抱える様に片手で額を押さえながら呆れた表情で溜め息を吐く。
「行かないよ。だいたい、皆は夏休み前の期末テストがあるだろ?テストをサボったら夏休みの前半は補修で無くなるぞ。それでもいいのか?」
尉からの厳しい指摘にマーキュリー達はしょぼんとすると今度はセトラが尉に近づき言う。
「ねぇ尉、ちょっと厳しすぎでわ?マーキュリー達が可哀想よ」
「いいや、セトラ。こういう時こそ親は厳しく子を躾けないと。将来、この子達が苦労しないようにな。それに俺は冒険者じゃない一人の父親だ。だからパーシー達とは行けないし行かない」
尉は育児パパの様にセトラに言っていると、それを聞いていたジェーンが少し悲しい表情をする。
「正直、私達は尉が同行してくれれば嬉しいだけど・・・!」
するとジェーンはある事を思い付く。
「そうだわ!ねぇ尉、いい考えがあるわ。この際だからマーキュリー達を冒険者登録しましょう。そうすれば名指しの依頼だと学業などは全面的に保障されるわ!」
ジェーンからの提案に尉は慌てながら彼女の口を塞ぐ。
「シッ‼ジェーン!余計な事を
だが、時すでに遅く、それを聞いてしまったマーキュリー達は物凄い笑顔になる。
「それって本当なのジェーンさん?」
アースからの問いにジェーンは笑顔で頷ながら自分の口を押さえている尉の手を
「ええ、学生でも冒険者登録する子が多いのよ。しかも実力のある冒険者への名指しの依頼だと様々な事が保証されるからテストも特別単位があるわよ」
「「「「「「「「「うっしゃーーーーーーーーーーーーっ‼じゃ行こぉーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」
「はぁーーーーーーーーっこうなるから嫌だったんだ」
マーキュリー達の喜ぶ姿に尉はガクッとする姿にパーシーが寄り添い彼の左肩を優しくポンポンと叩く。
「尉、こうなった以上、行くしかないよな?」
「はい、はい、行きますよ。その前に俺の冒険者登録を再登録しないと。それとセトラも冒険者登録させないと」
そう言うと尉は自宅電話へと向かい、何処かへと電話を始める。
「ああ、ラバン。俺だ、尉だ。すまないが俺の再登録を頼めるか?ああ、ある事情で冒険者の再登録が必要になってな。それとマーキュリー達とセトラの冒険者登録も頼めるか?ああ、ありがとう。助かるよ」
電話を終えた尉は諸々の事情をパーシーから聞き、一旦はパーシー達は永伊邸を後にするのであった。
■
それから一週間後の早朝、尉達は大西洋に面する街、キング・ポーラにある旧ルルイエ海軍のUボート・バンカーにいた。
バンカー内には多くの冒険者達で賑わっており、またバンカー内のドックには海洋冒険の為に様々な冒険者が購入した各国の退役したUボートが停泊していた。
「こりゃ凄いな。色んな国のUボートが停泊してるぞ」
関心をする尉を後ろからマーキュリーが彼の服を軽く引っ張る。
「ねぇパパ、あそこにパーシーさん達が手を振っているわ」
尉は目の前を向くとパーシーが笑顔で右手を振っていた。
尉達は笑顔でパーシー達の元に向かい、尉はパーシーと熱いハグをする。
「で!ドレイクのゴールデン・ハインド号は?」
「いいや、ハインド号は一昔前に売却してな」
ドレイクの発言に尉は少し驚く。
「え⁉︎じゃ、どうやって島まで行くつもりだよ?」
すると矗がクイクイっと右手の親指で後ろを指す。
「あれで行く。正直、もう船は時代遅れだ。海の冒険はあれで決まりだ」
尉は矗が指す方向を見ると、そこには原子力潜水艦、ノーチラスに似た大型の潜水艦が停泊していた。
その光景に尉は驚き被っていたカウボーイハットを取り、一方のマーキュリー達は初めて乗る潜水艦に目を輝かせながら笑顔になっていた。
そしてパーシー達が荷物を潜水艦へと載せ中で尉達は先に艦橋から船内へと乗艦する。
「うふぉーーーーーっ‼︎さすが潜水艦!キャプテン・ネモのノーチラス号みたい!」
船内の設備にマーズは目を輝かせ興奮し、一方の尉とマーキュリー達は感心しながら見ているとロイがハシゴを降りて来る。
「いい
ロイから購入経歴を聞いた尉は口笛を吹きながら周りを見ながら感心する。
「それはそれは。流石、ドレイクだ」
すると次ぐにドレイクがハシゴを滑りながら降りて来ると左の電気制御盤のスイッチとダイアルを回しエンジンを起動させる。
「積み込みは終わった。さぁ、出発しよ!」
ドレイクが笑顔でそう言っていると続々と外にいたパーシー達が艦内へと入る。そして尉達やロイがニヤリと笑うと尉は気合いの入った激励をする。
「これより島に向けて出発!道中、危険もあるが、力を合わせれば乗り越えられる‼︎必ず島を見つけ歴史に新たな1ページを刻むぞ‼︎」
マーキュリー達とパーシー達は両手を拳にすると気合いを入れる。
「「「「「「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」」」」」」」」」」」」」」」
水平線から太陽が出始めるのと同時に尉達を乗せた潜水艦はゆっくりと沖に広大な海に向かって就航した。
あとがき
伝説の島に向けていざ、出発です‼
SFパニック映画、『アンダーウィーター』は海底に眠っていた未知の生物が襲って来る良作ですが、正直、言って非常に暗いのが残念なポイントです。
しかし、登場するモンスターはどう見てもクトゥルフ神話の影響を受けた姿をしています。是非、観て下さい。
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