第5話:銀の蛇の鞭

 五日後、尉達はアトランティスから南にある大陸、デービスランド大陸を治めるガールン星王国の国際空港、カルティア空港に到着していた。


 某冒険映画の様な格好をした尉と某冒険ゲームに登場する主人公の様なタンクトップに短パン、黒いブーツを履き、上着に革ジャンを着たマーキュリー達が多くの人々で行き交う空港の出入り口付近で辺りをキョロキョロとする。


「ねぇパパ、見つかった?」


 マーズからの問いに尉は軽く首を横に振る。

「いや、見つからないなぁ。おっかしいなーっ確かに案内人は手配してあるって聞いていたんだけどなぁ」


 すると白布のタゲルムストを被った中年エルフの男性が駆け足で尉に向かって来る。


「尉さん!ドクター尉ですか?」

「はい、そうですが?」


 それを聞いた男性は笑顔で尉の手を取り握手をする。


「私、ホスマと申します。G∴T∴の会長様からの依頼で皆様のガイドを務めさせてもらいます」


 それを聞いた尉達は安堵するかの様に笑顔になる。


「よかった。事前に聞いてはいたけど人が多くて見付けられなくて不安だったんだよ」

「すみません、ドクター尉。ここは国際の窓口ですから。ではこちらへレンタカー屋でお車を借りないと」

「いや。そんな事をしなくても大丈夫だ」


 ホスマは尉の発言にキョトンとする。


 そして尉はマジックボックスから屋根には荷締めロープで固定したテント道具と発掘道具が入ったプラスチック製の箱を載せ、後ろのリアキャリアには荷締めロープで固定した水の入った五つのジェリカンを載せた三菱・ジープJ40HPHE高馬力水素燃料エンジンを出現させる。


 何もない所からジープを出現させた光景にホスマは驚く。


「うお!す、凄い!事前に聞いてはいましたが、ここまでとは‼︎」


 皆がジープに乗り込む中でネプチューンが自慢げな表現でホスマに言う。


「ふふーん。凄いでしょ!私達のパパは」

「ええ、凄すぎます。ああ、運転は私がしますよ」


 ホスマは右のドアを開けて運転席に座り、尉とマーズは左のドアを開けて乗り込む。


「よし!皆、乗ったな?じゃ頼むよホスマ」

「はい、ドクター。お任せ下さい」


 尉からキーを受け取ったホスマはエンジンを掛けて市内に向かって空港を後にする。



 国道を走り続けること一時間後、カイロの様な街並みに多くの人と自動車で混み合うカルティア市内に入る。


 その光景に後ろに乗っているジュピターは子供の様な眼差しで言う。


「すごーーーーい。写真などで見た事はあるけど、実際に見ると迫力が違うね」


 前の席に座る尉は笑顔でジュピターに言う。


「この街は都市に次ぐ大都市だからな。自国だけでなく海外からクエストや旅行などで利用する人が多いんだよ」


 すると尉は右の方を指を差しホスマに言う。


「ホスマ、悪いがあの店の前に停めてくれないか?」


 指を差す方を見たホスマは笑顔になる。


「スンシャの銃砲店ですね?あの店はいいですよ。私のオススメですよ」


 ホスマは銃砲店の前に停まる。するとアースが尉に問う。


「ねぇパパ、銃砲店に何か用でもあるの?」


 尉は振り向き問いに答える。


「ああ、大量の弾薬と武器を調達したくてな」

「弾薬は分かるけど、武器なら私達、持っているわよ。パパが私達の誕生日に貰ったやつが」


 アースはそう言いながらマーキュリー達と共に尉から貰った愛用の拳銃を取り出す。


 それを見た尉は軽く頷く。


「確かにそうだが、相手は国際的な犯罪組織だ。武力も計り知れないから護身の銃じゃ心許こころもとないから用心の為に武器を購入したいんだ」


 尉の答えにアースや皆は納得する。


「ああ、そうゆうことねパパ」

「そうゆうことだアース。んじゃパパ、買って来るから。マーキュリー、一緒に来なさい。皆は車で待っていなさい」


 マーキュリーを除く皆は返事をする。


「「「「「「「「「はーーーーーい」」」」」」」」」


 ジープを降りた尉とマーキュリーは店に入る。店内はレバーアクションからフルオートのアサルトライフルやマシンガン、ハンドガンなどがガラスケースや壁に陳列していた。


「すみません!誰か居ませんかーーーっ!」


 尉は店の奥に向かって尋ねると奥からドワーフの男性が駆け足で現れる。


「あぁ!いらっしゃいませ。店主のスンシャです。何かお探しで?」


 尉は周りを見ながら笑顔で答える。


「ああ、弾と銃が欲しくて。それも大量に」

「分かりました。それで何にしますか?」

「ガリルARはあるか?」


 尉の問いにスンシャは笑顔で答える。


「ええ、ありますよ。先月、入ったばかりでして」


スンシャは振り向き木製のガンラックからガリルARを手に取り尉に見せる。


 ガリルを手に取った尉は空のマガジンを外したり付けたり、スライドを三回引きチェンバー内を動作を確認する。


「うん、いい銃だ。これと同じガリルSARの在庫っていくつある?」

「はい、倉庫には十五丁ずつありますが」

「じゃ十丁ずつくれ」

「はい、分かりました」


 次に尉は振り向き反対側のガラスケースの上に置いてあるIMIネゲブ機関銃を手に取りスンシャに見せる。


「こいつの在庫ってあるか?」


 スンシャは在庫を記録した名簿を開き確認する。


「えーと・・・ああ、ありますよ。ですが、今、お客様が持っているのを合わせて五丁しかありませんね。人数分を希望されると入荷に二ヶ月はかかりますね」


 それを聞いた尉は軽く首を横に振り、笑顔で言う。


「いいや、人数分はいらないよ。二丁くれ」


 スンシャは笑顔で頷く。


「分かりました。すぐに倉庫からもう一丁、用意します」

「ありがとう。それとUZIサブマシンガン、マーベリックM88ショットガンを五丁ずつくれ」

「分かりました。他にはお客様?」


 再び周りを見渡す尉は壁に掛かっている狙撃眼鏡スコープを備えたM1903A4が目に入り思い付く。


「それじゃ最後にスナイパーライフルを。7.65mmより強力な弾薬を使うのがいい」


 それを聞いたスンシャは笑顔で答える。


「ええ、ありますよ。ちょっと待って下さい。注文した物と一緒にすぐに倉庫から持って来ますので」


 スンシャは駆け足で店の奥へと向かう。その光景に尉はマーキュリーに言う。


「マーキュリー、店主と一緒に行きなさい。きっとこのお店には店主以外、誰も居ないから」


 それを聞いたマーキュリーは笑顔で頷く。


「分かったわ、パパ」


 マーキュリーはすぐにスンシャの後を追う様に店の奥に向かう。


 少し経って店の奥からオーダーした銃を入れた大きな黒い荷物バックを持ったスンシャとマーキュリーが現れる。研究ノートを読んで待っていた尉はノートをバックにしまう。


「お待たせしました。ご注文を受けた銃はこのバックに入っています」


 スンシャはそう言うとマーキュリーと共に尉の足元にゆっくりと置く。尉は両膝を曲げてチャックを開けて中を確認する。


「確かに。それと言っていたスナイパーライフルは?」

「はい。持って来ました。これが入ったばかりの私のオススメの大口径ライフルです」


 スンシャは背中に背負ったスナイパーライフルをガラスケースの上に置く。


「こちらです。IWI DAN .338スナイパーライフルです。装弾数は十発、使用弾薬は.338ラプアマグナム弾、スコープは暗視装置を備えた光学スコープがサービスとして備えてあります」


 IWI DAN .338を手に取る尉はボルトを動かし動作とチェンバー内を確認しニヤリと笑う。


「いいライフルだ。気に入ったよ!じゃこれを二丁くれ」

「はい、まいど!弾はいくつ程、用意しますか?」


 スンシャの問いに尉は下顎を触りながら答える。


「5.56mm弾と12ゲージ、.338ラプア弾を、それと9×20mm R弾、9×19mm弾、.45ACP弾、7.62×38mm ナガン弾、.380ACP弾、.32ACP弾、.44マグナム弾、.357マグナム弾を12ダースずつくれ」

「分かりました。すみませんが、ケースの量が多いので手を貸して貰えないでしょうか?」

「ああ、いいよ。マーキュリー、すまないが、手伝ってくれないか?」


 尉からの助けにマーキュリーは笑顔でサムズアップをする。


「ええ、構わないわよ」


 そして尉、スンシャ、マーキュリーは店の奥に向かい弾薬のケースを新しい荷物バックに入れる。その後、購入を支払いジープに積み込む出発する。



 都市を出て広大な砂漠を進むこと一時間後、尉は地図とコンパスを使ってホスマに指示をする。


「ホスマ、北東に向かってくれ。目的のゾディアックがいる遺跡までは1.5kmだ」


 ホスマは笑顔でハンドルを回す。


「分かりましたドクター」


 すると後ろに座っているサターンが尉に尋ねる。


「ねぇパパ、何でわざわざ敵がいる所に行くの?危険過ぎるわよ」


 尉は振り向き真剣な表情で答える。


「ああ、実は出発前にG∴T∴から連絡があってな。奴らは石板を解読して神器に繋がる手掛かりがあるとされる遺跡を発掘中らしい。奴らを奇襲して石板を奪って遺跡も調査する為に向かっているのさ」

「あーっなるほど」

「ねぇごめんね、パパ。空のあれ何?」


 尉とサターンの会話にウラノスが割って入って来たので尉は後ろの窓から空を見ると砂漠用迷彩をしたMi-24D ハインドが徐々に降下しながらジープに近づく。


「ハインドじゃないか。何でこんな所に?」


 すると運転しているホスマがため息を吐き申し訳ない表情をする。


「すまない先生、大金を貰っちまってなぁ」


 それを聞いた尉は驚く。


「まさか・・・お前!」

「ああ、密告した。それとあんたの始末も、なぁ!」


 ホスマは素早く懐からナイフを取り出し尉を刺そうとしたが、尉はすんでの所で止めホスマの腕を折り、顔面に拳を一発、叩き込む。


「ジュピター!ドアを開けろ!」

「分かったわ!」


 尉の指示でジュピターは運転席のドアを開ける。


「悪いが降りてもらおっか‼」


 尉はホスマに向かって強烈なキックを繰り出しホスマを外に放り出す。


 すかさず尉は運転席に座りハンドルを握りギアとフットペダルを操作し速度を上げる。


 一方、ハインドのパイロットはジープに向かって機銃の照準を合わせる。


「ロックした」

「よし撃て」


 後部座席の機長が命令すると副機長は操縦桿の引き金を引く。


 12.7mm四銃身YakB-12.7機関銃が火を噴きジープを攻撃する。尉はジグザグな動きで機銃掃射をかわす。


「ふぅーっ、あぶねーあぶねーっ。いい腕しているなぁ」


 そう言うと尉はジュピターに言う。


「おい、ジュピター!運転を変わってくれ!パパはあのうるさいアブを堕とすから‼」


 それを聞いたジュピターを除いた皆が驚愕する。


「「「「「「「「えぇ⁉」」」」」」」」

「分かったわ!パパ!」


 ジュピターは尉に向かってサムズアップをする。そして尉は左に移ると同時にネプチューンが恐れる様に後ろに移る。


 運転席に移ったジュピターは両手を摩り得意げな笑顔でハンドルを握る。


「さぁ!かっ飛ばすわよーーっ‼」


 そう言うとジュピターは物凄い動きで更にジープの速度を上げる。


 ハインドの機長はジープを見て副機長に命令する。


「ロケットだ!ロケット弾を撃ち込め‼」

「了解!」


 副機長は操縦桿を操作し機銃からロケットポットの操作に変える。そしてジープに照準を合わせる。


「ロックした。発射!」


 副機長は引き金を引き、ジープに向かって57mmロケット弾が発射される。


 向かって来るロケット弾の大群をバックミラーで確認したジュピターはニヤリと笑い物凄いドリフト走行でロケット弾を回避し、さらにわざと小さい岩を使って車体をバウンドさせて回避する。


 ジープからでは想像も付かない動きに機長と副機長は驚く。


「何だ⁉あの動きは!」

「すげぇー!あのドライバーの腕はプロを超えているな」


 一方、攻撃を避けたジープ内ではジュピターは普段からは考えられないハイテンションぶりを見せる。


「フォーーーーーーッ‼パパ!それに皆!大丈夫?」


 尉やマーキュリー達は激しい動きでぐちゃぐちゃの様になっていた。


「あーっ!分かってはいたけど大丈夫じゃねぇーよ!」


 尉がそう言うとヴィーナスが口を押さえてゲ●を戻し答える。


「んもーーーーっ‼いっつもジュピターは運転が大嵐の様に荒いんだから!」


 尉はすぐに体勢を整え助手席の窓を開け、身を乗り出しハインドの様子を見る。


「よし!ジュピター!スリーカウントだ!右に向かって思いっ切り車体を回せ!」

「分かったわ!パパ!」


 ジュピターはすぐに尉からの合図に備えて右手でハンドル、左手でシフトブレーキを握る。一方、尉は右の腰に提げている牛革のホルスターからウエブリーMk.Ⅳを取り出し、弾薬が入っている事を確認する。


「よし!ジュピター!用意はいいか!」


 ジュピターはサムズアップをしながら返事をする。


「ええ!いいわよ!皆!しっかり掴まって!」


 ジュピターの指示にマーキュリー達は座席にしっかりと捕まる。


 そしてジープは幅の広い谷に入ると尉は左指の三つに立ててジュピターに向ける。


「ジュピター!行くぞ!スリーツウー!」


 ジープのまう後ろに付く様にハインドは機銃に切り替え掃射しようと動き出す。


ワンッ‼今だ!」


 尉の合図に合わせてジュピターはシフトブレーキを上げながら右に向かってハンドルを回し、ドリフト走行で車体を反転させる。


 身を乗り出している尉はそんなドリフト走行中にウエブリーを構え超貫徹魔法イビ・テテス・ロブディを付与する。そして尉から見た世界はスローモーションとなり、正確な射撃でハインドのエンジンを撃ち抜く。


 ハインドの機内ではアラームと共に計器が狂い始める。


「な!何⁉エンジンをやられた!出力が低下している!」

「機長!スロットルとフットペダルがききません!墜落します!墜落します!」


 黒煙を上げ機体を回転させながら高度を落とすハインドは岩の壁へと向かう。


「「う!うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」」


 壁に激突したハインドは大爆発を起こし墜落する。

 それを見た尉はウエブリーをホルスターにしまい、身を車内に戻りガッツポーズをする。


「よーーーし!うるさい鳥は落ちた!んじゃ、ささっと行こう!」


 尉はジュピターに言うと彼女は笑顔でサムズアップをし、目的の遺跡に向かってジープを走り出す。



 その後、尉達のジープは谷を抜け地元の民達が『神々の眠る地』と呼ばれる灼熱の砂漠へと入る。いくつもの砂丘を超えながら道なき道を走り抜ける事、約二時間後には巨大な砂丘の前に着く。


 ジープから降りた尉とネプチューン、そしてプルトは砂丘を昇る。丘の上に着くと遠くに先端が無い黒いピラミッドを発見する。


 そして三人はほふくの様な体勢となって双眼鏡でピラミッドを見る。


「くっそ!先を越された。ゾディアックが組織したい発掘隊だ。ピラミッドの入口前に陣取ってやがる」


 尉がそう言うとネプチューンが入口前を見ると三つの大きなテントが張られ作業をする雇われた地元民と砂漠迷彩の戦闘服を着こなした私兵達はL85A2やピカテニーレールにレッドサイトとグリップなどを付けてカスタムされたAK-102、ステアAUG-A3、グロックG17、更にRPGで武装していた。


「うわぁ!重武装ね。しかもピラミッドから遺物を運び出しているわ」

「遺物と言っても土器ばかりじゃの。神器がありそうな雰囲気はないの」


 プルトがそう言うと尉はゆっくりと後ろに下がる。

「お前達、一旦ジープに戻るぞ」


 二人はそれを聞くと尉と同じくゆっくりと後ろに下がる。


 砂丘を下った尉とネプチューン、プルトはジープまで戻る。そこではマーキュリー達が空のマガジンや銃本体に弾薬を込めていた。


 尉達が戻った事に気付いたマーキュリーが尉に話し掛ける。


「パパ、準備は出来たわよ。遺跡の方はどうだった?」


 尉は腕で流れる汗を拭き、マーキュリーの問いに答える。


「ああ、遺跡にはすでにゾディアックの発掘隊が陣取っていたよ。ぐずぐずしていたら神器の手掛かりが奪われちまう」

「分かったわパパ。んじゃ追っ払いにかかりますか」


 マーキュリーがそう言うと皆は銃を手に取り、尉もネプチューン、プルトはガリルAR、ガリルSAR、UZIサブマシンガンとマガジンを受け取り装填する。


「よし!カチコミに行くぞ!」


 尉が笑顔でそう言うとマーキュリー達も笑顔で遺跡へと向かう。


 一方、警備をするゾディアックの私兵達は歩きながら周りを見渡す。


「ふぁーーーっねむ。こう変わらない風景を見続けていると暇になるな」


 すると別の私兵が彼に近づき話し掛ける。


「そうだな。でも手掛かりが手に入ればすぐにここともおさらば出来るからさ」

「ああ、さてと給料分は働かないとな」


 そう言って二人は笑顔になると遠くの砂丘から光が放たれた後に愚痴を溢していた私兵の頭に弾丸が打ち込まれる。


 突然の狙撃に話し掛けた私兵は驚き、持っていたAK-102を構えるが、五感遮断魔法カトゥム・リフェ・トラドを使ってテントまで近づいて尉達が奇襲を仕掛ける。


 突然の奇襲にゾディアックが雇っていた地元民が遺物や発掘道具をその場に投げ捨て逃げ出す。ゾディアックの私兵達は直ぐに応戦する。


「くそ!応戦!応戦しろ‼」

「畜生!ハインドが始末したんじゃないのか!」

「口より腕を動かせ!敵の数は少ない!落ち着いて仕留めろ!」


 私兵達は向かって来る尉を射撃するが、戦いに慣れている尉は飛んで来る弾を紙一重でかわしながらガリルARで正確な射撃を行い、次々と私兵を倒して行く。


 一方のマーキュリー達も初の実戦ではあるが、幼少期から尉より叩き込まれた戦闘技術によって息の合ったチームプレイで次々と私兵を倒して行く。


 尉はガリルARの他に火球魔法を使い次々とゾディアックが使っていた車両を次々と破壊する。


 すると黒いベレー帽を被った私兵隊長が右腕に青いワッペンを付けた三人の私兵に命令する。


「お前達!ガーディアン・ワイバーンだ!ガーディアン・ワイバーンを召喚して応戦だ‼」

「「「は!」」」


 青いワッペンの私兵は腕をまくり両手を前に出し、地面に魔法陣を出現させる。


「「「ガーディアン・ワイバーントルティオ・ワルダンス!」」」


 三人が召喚獣の名を唱えると魔法陣から青黒い鱗に覆われ左右の頭から角を生やし、腕がコウモリの様な翼を持った翼竜が現れる。


 尉がテントとテントの間を走っていると右側からテントを破壊して彼の目の前に現れる。


「ヤッベ!ワイバーンを召喚したのかよ⁉」


 尉が驚きながら言うと三体のガーディアン・ワイバーンは牙や爪で尉を攻撃する。尉は身軽な動きでかわしながらガリルARで攻撃する。


 だがワイバーンの固い皮膚には5.56mmの弾は効かず、ワイバーンは爪で攻撃して来た為、尉はとっさにガリルABを横にして防ぐが、真っ二つ割れる。


「あぁぁっ‼ヤベ!ヤベ!」


 尉は素早く壊れたガリルARを投げ捨てながら残り二体のワイバーンからの攻撃をかわすが、素早い尻尾の攻撃が来たため瞬時に防具魔法デボラ・マボロを身に纏い防ぐ。


 尻尾の攻撃は凄まじく尉は木箱が積まれている集積テントの方へ吹っ飛び木箱に突っ込む。


「いってーーーーーーーーーっ!いくら防具でも衝撃が凄いな・・・ん⁉」


 尉は手元にある壊れた木箱から蛇が巻き付いた柄と縄は蛇の背骨の様な純銀の鞭を見付け手に取る。


「これは・・・断罪の鞭!超古代の時代にイグが勇者、俺専用の為に作った多種多様型の武器」


 ニヤリと笑う尉は鞭を持ってテントの外へと勢いよく出る。


 テントの外には三体のガーディアン・ワイバーンが囲む様に立ち塞がっていた。


 目の前のワイバーンが右翼の爪で尉を攻撃するが、尉はアクロバティックな飛び方で避け、断罪の鞭をワイバーンの首に巻き付け両手で引っ張る。


「それじゃ!この鞭の威力を試すとするか!」


 尉がそう言うと鞭に魔力を込める。するとワイバーンの首が鋭利な刃物の様にスパッと斬れ、首が地面に転がる。


 予想以上の威力に尉は驚愕する。


「フォ‼こいつはいいや!ヤベ程に最っ高だ‼」


 尉は初めてとは思えない鮮やかな鞭捌きと身のこなしで残り二体のガーディアン・ワイバーンを倒す。そして尉は鞭で次々とゾディアックの私兵を倒して行く。


 戦闘が始まって約数分が経ち、辺りには静けさと燃え盛る車両、至る所には私兵の死体が転がっていた。


 マーキュリー達は辺りとテント内を見ながら敵が残っていないかを確認する。敵が居ない事を確認するとマーズは真後ろの砂丘に向かって合図をする。


 砂丘から砂漠用ギリースーツを着てIWI DAN .338スナイパーライフルで伏せた体制で狙撃していたサターンとウラノスはスコープで合図を確認する。


「終わったようね。行きましょうサターンお姉ちゃん」


 サターンは軽く頷き、尉の方を見る。


「そうね。パパの方も終わったみたいだしパパとマーキュリーお姉ちゃん達と合流しましょ」


 二人は立ち上がりIWI DAN .338スナイパーライフルに装着してあるバイポッドを折り畳み砂丘を滑る様に降りる。


 一方、別の砂丘から白馬に乗りながら双眼鏡で尉達の行動を監視する焦げ茶色のカウボーイハットを被り、黒の革製のオーバーコートを着た中年ながらハンサムな男性がニヤリと笑う。


「ほほぉーーっ子供連れでありながら、なかなかワイルドな男だなぁ尉は」


 すると右隣に居る茶色い体色の馬に乗った薄髭を生やした中年男性が白馬の男性に言う。


「なぁボス、今なら奴ら気が緩んでいますよ。奇襲を仕掛けて返り討ちにしましょうや」


 尉達を見ながら聞いていた白馬の男性は双眼鏡から目を離し言う。


「まぁ待て、そう急ぐな。今回はあいつらの勝ちだ。相手が敵であっても称賛をするのが俺のやり方だ」

「じゃ神器は?あの遺跡には神器の在りかの手掛かりがあるんですよ?奴らに先を越されます」


 すると白馬の男性は自信満々な笑顔で答える。


「なーに心配するな。奪われたならば力ずくでも奪い手に入れる。それがこの俺、ジェシー・ジェイムズのやり方だ。引き揚げるぞ!野郎ども!」


 ジェシーがそう言うとさっきの男性を含めて馬に乗り連れて来た五人の部下は返事をし、馬を走らせ、その場を去る。



あとがき

第一章の舞台は映画、『インディ・ジョーンズ:失われた聖櫃アーク』のエジプトをイメージモデルとしています。

皆様、『ゴジラ-1.0マイナスワン』絶賛公開中です。少しネタバレになりますが、終盤の海神作戦わだつみさくせん時の戦闘シーンとbgmは深い印象と興奮を覚えました。今年、最後に観る超オススメの映画です。是非、観て下さい。

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