第12話【高貴な方々とか庶民とか関係無く、或る意味普遍的な(?)な夜の生活の話し】
「人に対する〝好き〟には時間的制限があります。〝嫌い〟の方は……、ずっと続いてしまいますけど、あっ、すみません、これ、わたしの両親の話しです。わが家はもうずっとこんな感じです、」
ケィちゃん、じぶんの家のことを話してくれるんだ。これはけっこうなわたしに対する信頼感。でも話の中身からは早くもまん延する深刻感——
「わたしには姉がいます。だからこれは姉からの伝聞情報に過ぎないのですけど、わたしの両親、夫婦になったばかりはそれはもう毎晩ちちくりあって—」
ちちくりあうって〝乳繰り合う〟? わたしも殿下の乳首つまんじゃったりしてる。男の人って使いようがないのになんで〝乳首〟があるのか不思議よねって殿下に言ったら困っちゃって。しかもこれがわたしと同じで固くなっちゃったり——
「あの、妃殿下、聞いてます?」
あっ、
「少し気が散ってしまったかもだけど聞いてるわ」
ついいつもの妄想癖が……
「じゃあ続きを、」とケィちゃん。
「待って。やっぱり分かっちゃったの?」
「……妃殿下のお顔の表情が……、そういうお顔になっちゃってました」
「…………そんなにイヤラシイ表情になってた?……」
「あっいえ、お気になさらずに。わたしのことばの選び方に問題があったみたいで」
おほんっ、とわざとらしくひとつ咳をするわたし。
「それで続きは?」
「どうも姉のする話しから逆算すると夫婦仲が保った時間はわたしが思うに四、五年といったところです」
「えーっ、〝愛の長さ〟がその程度⁈」
「いえ。これは元々〝愛〟ではなかったような気がします。むしろそれがろくになくても『どんな夫婦も最初だけは仲がいい』、こういうことではないでしょうか」
「愛が無くても仲がいいって……」
「わたしでも想像がつきます。初めて見る異性の生身の身体。初めて異性の前で披露する自身の生身の身体。まったくなにも隠してもいないあられもない姿で興奮のままにお互いに触り触られ、これが楽しくないはずがありません」
ケィちゃんの喋りに頬がぽーっとしてくる。それだけじゃ済まなくて下半身にもう湿り気を感じるよう。
「——だけど最初こそ物珍しさで夢中になれていても物珍しさも最初だけ。〝夜の生活〟がこのままずっとずっと楽しいと、思っていたら間違いだと思います。夜の生活だけでは夫婦仲は維持できないし、夫婦の仲の良さが〝夜の生活〟にしかないというのはなにか危ういものを感じます」
うっ、一気にふっとんだ〝ぽーっ〟。冷や水をぶっかけられたよう。同じ〝濡れる〟でも熱と冷気では大違い。確かにわたしはモテなかった。だから29まで処女だった。身持ちは固い。それがSEXの味を覚えて色狂いになってる——
「——あの、」とケィちゃんが切り出してきた。
「あっ、えーと、まだ続きがあるのよね? 危ういとか怖がらせるようなこと言って終わりじゃないよね?」
「あっ、ハイ、もちろんです。わたしはまだ独り身で夜の生活抜きに夫婦の仲を維持する方法なんて分かりませんけど、いまからでもご自分のやりたいことを見つけたり、ご自分の能力を生かして輝く〝道〟を見つけておかないと、後がお辛くなりますよ」
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