第7話 じいちゃんナイス!
「とりあえず、あなたはわたし預かりとなりました」
朝になり、籠に入ったウールとご対面。わたしには預かりになったことを告げた。
「鳴かないわね」
籠から出すと、逃げることなく地面を突っ突き始めた。虫でも探しているのかな?
「ほら。エサだよ」
お母ちゃんからもらった古くなった豆を地面にばら撒いた。
「お、食べてる食べてる」
漫画でしか鶏がエサを食べているところしか知らないので、ウールが食べているところがおもしろかった。
「って、お前の寝床を作ってあげないとね」
村にもグール、小さな肉食獣がいるみたいで、鶏(この世界でもいるみたいで、裕福な家で飼っているらしいわ)を狙って現れることがあるそうだ。
うちも昔は飼っていたみたいだけど、グールに食べられてからは飼うのを止めたんだってさ。
「頑丈なのを作らないとね」
何の技術もないけど、漫画で枝を使った檻があった。あとは鳴子を仕掛けておけばなんとかなるでしょう。
近くの林に向かい、手頃な枝を集めた。
「キャロルって力持ちよね」
一メートルくらいの枝を三十本くらい持っても平気だった。もしかして、わたしってパワー系?
この前、雑木を払った場所を鉈で均していき、枝を円を描くように地面に刺していった。
天辺を曲げて反対側のと藁で結んでいき、上を塞いだ。
頑丈になれと願いながら柔らかい枝を横に編み、縦の枝と藁で結合させた。
朝から初めて昼には完成。あ、出入口を作るの忘れた。
ウールが入れるくらいの枝を切り、余った枝で扉を作った。
「ほんと、キャロルって器用よね」
パワー系でありながら器用でもある。これでやる気や向上心があったらもっと優秀に育っていたでしょうに。心技体が大切ってよくわかるわ。
「さあ、お前──って、名前がないのも不便ね。何かつけてあげましょうか。そーね。茶色いからタワシにしましょう」
いずれ食材となる子。思い入れしない名前にしておきましょう。雌雄もわからないしね。
「今からお前はタワシ。わたしの
うちのものであることを示すために藁で編んだ首輪をつけてあげた。
「元気に育って卵をたくさん産むのよ」
小屋(檻じゃなんだしね)の中に棒で叩いて柔らかくした藁を敷いてやり、木皿に水を入れて小屋に置いてやる。
「グールが来ませんように」
小屋が襲われませんようにと願い、鳴子作りに取り掛かった。
「てか、うち、工作道具が充実してない?」
道具の名前は知らないけど、使いたいな~って思う道具が納屋の箱の中に入っていたのだ。
不思議に思ってお母ちゃんに尋ねたら、じいちゃんが大工をしていたんだってさ。納屋もじいちゃんが作ったそうだ。
ちなみにわたしが五歳まで生きてたそうよ。わたしはまったく記憶にないけど。
「お父ちゃん、何で大工にならなかったの?」
「不器用だったからだよ。だから畑を買って農作業に励んでんのさ。向いていたみたいで食うに困らないくらい稼いでくれるよ」
あんちゃんは荷馬業しているし、うちって職業自由な家系なのね。
「じゃあ、納屋の道具、わたしが使ってもいい?」
「構わないよ。どうせ錆び付かせているだけだからね」
よっし! これでいろんなものが作れるわ。どう作るかわからないけど!
まずは錆びを落とすとしましょう。布で拭けば落ちるかな? あ、油をつければいいのかな? こんなことなら大工道具の手入れを動画で観ておくんだったわ。
箱の中の道具を出し、砥石で研げるものと難しいものと分けていく。
「お、ハサミがあった」
何バサミになるかわからないけど、油を染み込ませた布に包んであったお陰で錆びてなかった。じいちゃんナイス!
「いい感じのナイフもあるじゃない」
じいちゃん、几帳面の人だったみたいね。キャロル、五年前のことなんだから記憶しておきなさいよ。
ナイフは鞘もあり、それを引っ掛けるベルトもあった。
「研いでおくか」
よく切れるようにと研ぎ、錆びないようにとボロ布で拭きあげた。
ベルトをして鞘をつけ、鉈も付けるとなるとなかなか重くなるわね。いや、鉈は林や木を切るときにすればいいのか。普段はナイフとハサミを装備しておこうっと。
他にも何かないかと探ると、ポーチや鞄が出てきた。
「古くさいけど、ないよりはマシね」
洗えば少しは綺麗になるでしょう。異世界転生ゼロからスタート! じゃないんだからありがたいと思わないとね。
「キャロ! ウールが腹を空かしているみたいだよ!」
あ、タワシのことすっかり忘れてた!
「わかったー!」
出した大工道具を箱に戻し、手頃な肩掛け鞄を持って納屋を出た。
わたしの姿を見ると、タワシがやって来てエサ寄越せとわたしの回りを回り始めた。
「お前、
やっぱり鳥の頭では言うこと聞けってのは無理か。まあ、元気に卵を産んでくれたらそれでいいわ。産まないなら食卓に上げてやるんだから。
「って、こういうところはキャロルが出ちゃうわね」
豆を食べさせたら小屋に入れ、蓙を巻いて家に入った。
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