天才を堕とすには、あおり・身代わり・先回り

友坂弥生

プロローグ

第0話 天才とプロローグ

「橋本には、私の秘密、いつバレてもおかしくないと思ってたよ。でも、ちょっと遅かったかな」


 アイツを追いかけて走ってきた木舟神社の前、神社の大きな木の葉っぱの隙間からわずかに月明かりが差している。


 正直、まだ何のことかわからない。でも、アイツはバレたと思っている感じの変な言い方だ。

きっと一番の問題は、この時点で本当は僕が分かっていなければいけなかったアイツの秘密を見抜けなかったっていうことだ。とりあえず時間を稼がないと。


「待て!何が遅かったんだよ」


「わかってるくせに」


 わからない。この後どうなる?なんていえば良い?僕だってアイツの秘密をいくつか知っているつもりだけど、何か僕の知らないもっと大きな秘密があったのか。しかも、この言い方は、なんだろう。嫌な予感がする。何かが終わる時の感じだ。

 やっぱり、もっと大きい秘密があるのか。


 周りの景色が段々ゆがんできた。ぐにゃっとなってアイツの後ろ姿だけがぼんやり見えている。


「ちょっと待てよ。わかってるけど、遅いって決めつけるのが、わからないんだよ」

「ううん、大丈夫。橋本なら絶対わかるんだよ。だって橋本は…」

「え?おい、最後なんて?」


アイツはそれ以上何も言わずにそのまま崩れていく景色の中に走って行った。


またこの夢だ。


まだダメなのか。

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