#35 ホブゴブリンってそんなに強いの?
盾役ゴブリンを千切っては投げ千切っては投げ。とにかく盾役の数を減らして行く。
俺にとって一番困るのは、動き回るスペースがなくなること。一度そうなってしまえば、速さを生かせなくなるし、自由になる足場がなければ、パワーも引き出しずらい。だからとにかく足を止めず、ゴブリン達の隊列をかき乱しながら戦うしかないのである。
時には盾を
これはいささか数が多過ぎるのでは。そう思い始めるのに、そう時間はかからない。いくら何でも、これほどのゴブリンが溢れているダンジョンとなれば、危険度が低い訳がないからだ。このゴブリンの数を考えれば、行政が指定する一般人の立ち入りを禁止するダンジョンに含まれていてもおかしくないはず。
そうは思いつつも、こうして戦闘に入ってしまった以上、引き下がるという選択肢はない。これが異常事態と言うのであれば、怪異化の能力を持つ俺こそが、この事態を収束させる役としてはふさわしいのではないか。そうほいほいと一般人が立ち入るようなダンジョンではないものの、他のダンジョン配信初心者が入って来たら死者が出かねない。そういう訳で、俺はただひたすらに、ゴブリンを狩り続ける。
ようやく盾役がいなくなる頃には、10分ほど経過していただろうか。体力的には余裕があるものの、この後に弓部隊と棍棒部隊が控えているかと思うと気が重い。出来ればリーダーを倒したら終わりとか、そういう感じにして欲しいところだ。
そう思ったのも束の間。背後で大きな動きがあった。ゴブリンの3倍はありそうな巨体の持ち主が、後方のゴブリン達を、巨大棍棒の一薙ぎで蹴散らしたのである。
人間の子どもくらいのサイズのゴブリン達が、慌てて四方に散っていった。後に残ったのは巨大な何か。顔はゴブリンに似ていなくもないが、体格はまるで違う。基本細身細腕のゴブリンとは違い、
身長、体格では明らかに俺よりも上。こちらに怪異化の能力がなければ、間違いなく撤退せざるを得ない相手だ。
と、次の瞬間。ホブゴブリンと思しき相手が、急に言葉を発した。
「オマエ、ホカノニンゲントチガウ。カンジルゾ。ツヨイチカラ」
片言ではあるものの、明らかな日本語。そういう経緯でかはわからないが、どうやらこの個体は、日本語を学習したらしい。通常のゴブリンにはない知能だ。流石は上位種と言ったところか。
「だったらどうする? 他のゴブリン達をまとめて道を開けてくれるのか?」
「イイヤ。オマエハキケン。ハイジョスル」
そう言ったホブゴブリンは、巨大棍棒を振り上げて、俺に向かって振り下ろした。当然、俺はその場から離脱。振り下ろされた棍棒はそのまま地面にぶつかり、大きな亀裂を生じさせる。
「……マジかよ」
木で出来た棍棒では、まず出来ない芸当。あの棍棒の素材はただの木ではない。恐らくこのダンジョンで採取可能な植物の一つ――
「その棍棒気に入った。お前を倒していただくことにするけど、いいよな!?」
「ヤレルモノナラヤッテミロ!」
俺は早速ホブゴブリンに飛び掛る。自分よりも身体の大きな相手に立ち向かうのは勇気がいるが、そこは仲間達が与えてくれる能力を信じる他ない。
今度は真横に振られた棍棒をジャンプで
すぐさま、ホブゴブリンの攻撃がやって来る。今度は左拳による殴打。俺はパワーを全開にして、それを受けてみることにした。
巨大な拳を両手で受け止める。流石にすごい重圧だ。その場では踏みとどまれず、1メートルほど後方に押しやられてしまう。
「……この程度なら、何とかなるな」
「ナニヲイッテイル! マダマダコンナモノデハナイゾ!」
今度は踏みつけ攻撃。真上から降って来た巨大な足を、俺は即座に着地点を見極め、その隙間を縫って回避。ホブゴブリンの側面に立った。
いきなり頭部を狙うのがダメなら、手足から潰して、防御も回避も出来ないようするしかない。俺は着地で負荷がかかっているであろう、膝に向けて、バールを振り下ろす。
バールの先端が肉にめり込み、紫色の血が
即座に棍棒の間合いを見切り、僅かな動作でそれを
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