ご馳走様です、旦那様‼︎ 〜嫁いだら旦那様は同性愛者でした。でも問題ありません。むしろご褒美です!旦那様と恋人の愛を応援します!〜

清水柚木

第1話 神の啓示かと思いました!

「私はあなたを愛することはできない。なぜなら私の恋愛対象は男性だからだ」


新婚初夜、ベッドの上で告げられた旦那様のお言葉に、私は心の中でガッツポーズをし、更に『ご馳走様です!』と叫んだ。




◇◇



私の名前はコーデリア・オルコット、18歳。

オルコット家はフラハティ王国で3番目に大きな土地を持つバルフォア侯爵に代々仕えているため、子爵の地位を得ている。つまり私も貴族の端くれというわけだ。


そしてそんな私の旦那様の名前は、ケネス・ボルフォア侯爵。なんと我が家が代々仕えている侯爵様!そんな侯爵様の妻!普通に考えれば玉の輿。となるとそこには沢山の壁があって、ふたりでなんとか乗り越えて、それでもってゴールに至った……なんてのが物語の定番だけど、実は違う。


ある日、ある晩、ある時に、我が家のろくでなしの父親が借金の肩に私をバルフォア侯爵に売った。夢も愛もこれっぽちもない結婚だ。だから私は結婚式で初めて夫となるケネス様とお会いした。


だからと言ってケネス様のことを知らないわけじゃない。ケネス様は父親の仕えている方だし、私が住むバルフォアの領主だし、そもそも有名だから、当然知っている。


いわく、ケネス様はフラハティ王国の最後の結婚優良物件だと。


ケネス様はプラチナブロンドと、晴れ渡る空のような水色の目の美丈夫で、すっきりした体躯をお持ちの紳士。しかも優しくお金持ち!これ大事!お金がないと愛も育たない!


バルフォア領は気候に恵まれて農作物の育ちも良く、さらに海に面していて魚介の水揚げ量も王国一!


海があると言うことは、当然港もあるので、他国との交易も盛んで、隣国から輸入される陶磁器や絹織物は安く買って、高く売るときたものだ!


少し考えれば儲からないわけがないお金持ち!だから領地には貧民街もなく、領民は王都よりも高いレベルで生活ができている。


だからどこの貴族令嬢もケネス様を狙っていた。年に数回開かれる王都での催し物のときは、ケネス様を狙った貴族令嬢が目をギラギラさせていると噂になっていた。


ケネス様は御年27歳、フラハティ王国の貴族の平均結婚年齢は23歳だから、ケネス様はかなり遅い結婚とも言える。その理由がまさか、男色だったとは……。いや、これもう、奇跡とか言うしかないでしょう!


と言うのも、私には前世の記憶がある。前世の私は日本でオタクで腐女子だった。コミケで自作の薄い本を売るくらいバリバリの腐女子だった。オリジナルも二次創作もどちらもいけた。


ちなみに、即完売!とまでは言わないけど、それなりに売れて、確定申告しちゃうくらいではあったのよ。SNSのフォロワー数をそれなりにいたしね。


そんな私がふとしたことで死んで転生した先がオルコット子爵家の長女。


おお、異性界転生だ!なんて喜んだのも束の間。


父親、ギャンブル依存症。

母親、浪費家。

兄、快楽主義。


と言う最悪の布陣の元に産まれてしまった私は早々に家族との仲は諦め、優しい祖父母と共に暮らした。前世でも家族に恵まれず成長したので、そこは気にしなかった。血を分けた家族とは言え、そこは他人だ。合わないこともあるだろう。


祖父母を看取り、そして両親のもとに戻った私に待っていたのが侯爵家との縁談と言うわけだ。着の身着のまま、ポンと嫁に出され、そして結婚式、さらに新婚初夜に突きつけられた旦那様のお言葉!


前世は腐女子で、さらに結婚にカケラの興味もない私に、旦那様から与えられた容赦のない言葉が、神の啓示に聞こえたのは間違いないだろう。

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