月夜に浮かぶ金魚
梅林 冬実
月夜に浮かぶ金魚
とうとうそんなものが
見えるようになってしまったかと
絶望に魘されながら
天に目を凝らす
赤や白や 黒やオレンジや
優雅な尾びれを見せつけるように
月夜を自在に行き交う金魚の群れ
躊躇いを覚えたのはほんの一瞬のこと
すぐに虜となる
満月に照らされ雅に舞ったかと思えば
ふと月影に隠れ その造形だけが
闇を浮遊する
思い思いに 自由に
月夜を遊ぶ金魚たち
己の腸さえ食い尽くした私には
その姿にただただ
羨望の眼差しを送るのだ
美しい衣に袖を通し
瀟洒に演舞する見知らぬ女
いつかはそれに身を窶し
金魚たちと戯れ
下界の穢れを取り払い
艶やかな瞳であらゆるものを
とらえ離さない
豊かな黒髪が夜に溶け込んだなら
満ちる月から零れ落ちる
純潔な滴を両眼に受け
更に広がる闇夜の果てを
渡る金魚らとともに見渡すのだ
月夜に浮かぶ金魚 梅林 冬実 @umemomosakura333
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