僕は、伝えたかった。

晶の華

僕は、伝えたかった。

  今日は、文化祭だ。高校最後の文化祭。僕には、やらなければならないことがある。(やらなければならないこと。託された)絶対やるんだ。だって、約束したから。


 ―文化祭まであと5か月

「実行委員をやりたい人はいますか」

教室がざわつく。そんな中、一人手を挙げた。みんなが、まじかよと言わんばかりの顔になった。司会をやっている学級委員ですら、目を見開いている。

「えっと、、、じゃあ滝本冬馬さんにやってもらいます。あと一人やってほしいのですが、誰かいますか」

「これって放課後の活動ありますかー」

酒井透が言う。

「はい、あります」

「んじゃ、やります」

おお。彼の周りの人たちが歓声をあげる。

「じゃあ、前に出てきてもらっていいですか。一言意気込みを。」


「じゃあ、俺から。、、、悔いのない文化祭にしような!」

にっと笑う。拍手があがる。

静まり返る。

「、、、頑張ります。」

皆が不安そうな顔をする。そんな時、隣から拍手があがる。酒井だ。それに合わせて、クラス全体が拍手し始める。


不思議な奴だ。



―文化祭まであと4か月。

今日は、各クラスの実行委員との顔合わせと、役割決めがあった。うちのクラスは、出し物とカメラ担当だ。



―文化祭まで4か月。

「出し物を決めます。出し物は、なるべくクラス全体でできるものにしてください。」


黒板にどんどん書き込まれていく。劇、お化け屋敷、カフェ、演奏、合唱、、、

最終的に劇になった。シンデレラをやるらしい。



―文化祭まであと3か月。

 酒井は、王子役。シンデレラ役は、酒井の彼女になった。僕は、ナレーターだ。


―文化祭まであと2か月。

 あと2か月なのに、上手くいかない。みんなのやる気がない。それが原因で、男子と女子で喧嘩になった。


やっぱり人間は、欲の塊だ。



―文化祭まであと1か月。

 順調だ。


―文化祭まであと0日。

 次がうちのクラスの番だ。


 「こうしてシンデレラは王子様と再会し、結婚式を挙げました。仲良しの動物たちは幸せそうな二人をいつまでも、うっとりと見送るのでした」


マイクを持ち、ステージへ向かった。


「―さて、シンデレラは本当に幸せだったのか。人間は、いつまでも幸せに生きることができるのか。それは、自分次第だ。みんな、欲を持ちそれをかなえるため生きている。そんな欲は、いつしか人を殺すんだ!!そんなことがあっていいのか。もううんざりだ。陰キャの僕が実行委員に立候補したのは、これを訴えたかったからだ。帰ったら、友達となんとなく群れて、スマホを触って、勉強だるいとか言ってぼんやり生きているだけで、いいのか!今、やるべきことがあるのではないのか?何も考えず生き始めたら、もう人間ではない。そんな生活やめてしまえ!!」

「僕の母親は社会に殺された。人気者で、尊敬されていた。なのに、不倫なんかしてないのに、根も葉もない噂を立てられて、自分を殺したんだ。根拠のない相手の噂を言って、自分はリスクを負わず、去っていった。遺書には、何回もごめんねって書いてあった。群れるな、ぼんやり生きるな。今、やるべきことをやろう。それを、言いたかっただけです。聞いてくれてありがとうございました。」





そういって、滝本さんは学校から消えた。それから、学校に来ることはなかった。

次に、滝本さんを見たのは、評論家が載っているある雑誌だった。



――あとがき――


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僕は、伝えたかった。 晶の華 @yakan20

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