第14話 当事者にも話を聞くべきだと思う①
クローズされた店内で店長と二人テーブルに座る。
「それで、私に話しとは何ですか。探偵さん?」
「おや、私は探偵だと名乗りましたっけ?」
「いえいえ、全ては推測ですよ。
例えば……釣りに来たはずなのに一回も竿を出してないでしょう?」
どうしてバレたのだろう……ちゃんと釣り竿は持って出かけたはずだが。
「いえね、釣り宿に居ましたから釣り人のことは人より詳しいんですよ。
釣り竿一本で、それも初心者用のキットの竿で釣り目的で来る客はいませんよ。
堤防釣りでも二、三本出すのが普通ですからね」
「それは盲点でしたね」
「それにコテージの外にある水道に目をやらなかったでしょう?
あれ実はペットを洗ったり釣り竿の塩を落とすのに使う方が多いんですよ。
だから、夕方とかは軒下に釣り竿が干してあることがほとんどです」
そこまで気にしていなかったな。使ってもない道具を洗う気なんかなかったし。
「そこまで気が回らなかったのは私の落ち度ですね……」
「その他も気付く点はありますが、まぁ念のため山の上のため池に誘導して見事に乗ってくれたのが決定打ですかね」
「あれはやっぱり何かしらの意図があったんですね」
「えぇ、明石君の釣り宿を選択しない釣り人はこの時期珍しいですからね。
多分我々の誰か、もしくは島の何かを調べるなど、釣り以外の何かを目的に来たのだと思いました」
そこまでわかっているなら、もう切り出してしまうか。
「えぇ、実は柏木さんの婚約者からの依頼でしてね。
何故この島から帰ってこないのかを調査してほしいと」
「おや、探偵が依頼内容を関係者に話してもいいのですか?」
ちょうどこの話をしていたところ、柏木がこちらのテーブルにオムライスを持ってきた。
「店長、私も話を聞いても?」
「いいと思いますよ。
キッチンにオーダーを止めたからディナーの準備をするように伝えてきてください」
「分かりました」
柏木が戻るまで数分、出されたオムライスを食べて待っていた。
うめぇ……昨日のサンドもだがレベルが高い。
「さて、綾香が私を調べているんですって?」
「はい、と言っても何故島から帰らないのかと言う身辺調査だけで、連れ戻せみたいな依頼ではないのでご安心を」
「えぇ、もしそうだとしても渡しませんから」
静かだが、強い意志を秘めた瞳であった。
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