高価な果実
@jonny33727
第1話 すれ違い
僕は彼女とお別れしたばかりだ。
私も彼とお別れしたばかりだ。
帰り道にあるパン屋を見て彼女を思い出す。
このパン屋はコロッケパンが美味しいと言っていた。僕はコロッケもコッペパンも好きだけど、好きものは個別に味わいたい。そう思いながらも、彼女の言葉を飲み込み、ニコッと笑ってコロッケパンを選んだ。
思えばあの時からだっただろうか?お別れする覚悟を決めたら、やっぱり合わなかったという点ばかり気になって、その思いがより強く僕を別れに突き進めた。
それでも決定的だったのは、お世話になった先輩の送別会と記念日が被ったことだった。
僕は会社に入ってからずっとお世話になっていた。それこそ、彼女と出会う前から。
先輩には彼女をもちろん紹介してる。
次の日に付き合った記念日のお祝いをずらしたいと僕はお願いしたが、彼女は譲らなかった。
実はその日にプロポーズしよう思っていた。
それは彼女も感じていたのだろう。生涯の伴侶とお世話になっただけの先輩なら、私が優先でしょと彼女は思っていたかもしれない。
僕には知ることももう出来ない。
しかし、僕は両立させたかったのだが、納得いかない彼女と口論になった。
そして、僕に彼女は「がっかりした。こんな人と思わなかった。結婚して私を大事にしてくれない」と言った。僕のなかで何かが切れる音がして、ついにプロポーズはせず、お別れすることになった。
彼女の言葉は言うほど僕に外傷を与えなかったが、重い鎖のように纏わりついて離れなかった。
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