第41話最悪の展開……

 バリー戦死の訃報は、すぐさま戦場にかけめぐった。ベルゼはあまり面識がなかったのだが、オウキからは王国で二番目に強いと聞いていた為に少しばかり油断していた。


 「やはり……か」


 鎮痛な表情で地図を見る、ベルゼ。


 「どうしましょうベルゼ様」


 「そうだな、とりあえずアストロの新兵器が出来上がり次第に攻勢をかけたかったが、仕方ない俺たちも出る。どうやら戦況はあまりよろしく無いだろうしな」


 「そうですね、左翼はどうしますか?動いてもらいますか?」


 「いや、左翼の指揮はジンバルに任せてその場で待機だ。バリーのお陰で左翼の邪神群はかなり削れたそれに左翼の被害が少ない流石としか言いようがない活躍ぶりだな」


 何も悪いことばかりでは無く、バリーの命をかけた大攻勢により、かなりの数が削れている。


 「だが、肝心なのは残った三大指揮官たちをどう攻略するかと、彼等の本陣がどこにあるかだ。そこを特定さえできればアストロの新兵器で一気に蹴りをつけることができるのだが……」


 そうこの合戦の勝利条件は邪神群の主力を倒すことと彼等の「王」がいるなら講和を、結ぶことである。


 「そもそもブロギロン。こちらの連合国の人的資源はどのくらいあるとおもう?」


 「はい、もうすでにこの国では戦争に行ける男はほぼ居ません。これ以上増やすと経済復興、自給率などからもう戦をする余力はありません、我が主人である、アストロ様が人に変わる機械を作っておられますがそれにも限度があります」


 「だろうな……すでに人類は瀕死に近い状況になっている。女、子供は魔王の領土にいるそうだが、すでに魔族と人類の混血も生まれているらしいな」


 「そのようで……早くこの戦を終わらせないと更なる混沌が生まれるかもしれません」


 「まぁ、同盟国に助けを求めるのは間違いでは無いが彼等には彼等の領分がある。それに人間と魔族の混血で新たな問題が起きないとは限らんしな」


「そうですね……彼等が新しい国を建てる話が出てきますと例え邪神群を倒してもこの大陸の平和は遠のくばかりですね」


 「そうだ。早く奴等の大将を見つけて「講和」ができる、話し合いができるような奴でありがたいのだがな。もしできなかったら俺達は彼等を滅ぼさなければならない」


 「はい」


  重々しく頷く、ブロギロンを見ながら今後の戦略を固めていく。今は政治や今後の国づくりの話より、いかにこの戦場に勝つことを、考えなければならない。


 「俺達はまず、今こちらを攻めている、敵中央約七千の部隊を叩く事に専念する。ブロギロンは遠距離部隊を率いて砲撃をしつつ、味方部隊の援護にあたってほしい」


 「わかりました!さっそく支度して参ります」


 「あぁ、俺は戦況が好転したタイミングで全軍に突撃の命令を下すつもりだ。それまではあまり前に出るなと厳命しておくように」


 追加でブロギロンに伝えた俺は、早速前線が見える、場所に移動する。


 すでに前線は兵士の、遠距離魔術と近接強化した部隊による、連携プレイでなんとか戦線を維持しているがやはり奴等の体には特殊な装甲でできており魔術が全く効かないそれどころか逆に吸収し、自らの糧としているようであった。


 「これはまずいな……」


 すでにいくつかの前線は押され始めており、戦況が厳しくなる。


 あらかじめ設定していた、防衛ラインが食い破られそうだったとき、空に沢山の黒い物体が降り注ぎ始め邪神群の前線部隊を吹き飛ばした。


 「ブロギロンめ、タイミングが良すぎる」


 ベルゼがいる場所から三キロ地点に陣を構えるブロギロンはアストロが開発した、大砲その数五十門と共に精密砲撃を開始する。自らも両肩に小型の大砲のようなものを背負い敵軍めがけて撃ち込み邪神群は激しく吹き飛ぶ。どうやら奴等の装甲は対魔術には強いが、物理的な攻撃には弱いらしく安い材料で作った粗悪品の玉でもしっかりとダメージが出ているようだ。


 「よし!この機に乗じて攻めよ!」


 俺はすぐさま攻勢の合図の信号弾を撃ち、一気に敵軍の前線にめがけて突撃を開始する。


 邪神群は態勢を立て直す暇もなくことごとく討たれていく。奴等は逃げる事はしなかった、生まれた時から「文明」を破壊することしか、プログラムされている。彼等はただ人類を殺す為に攻めてくるのだがすでに動きは単調であるためにこちらは流れ作業のように奴らを倒していく。


 「よし!あともう一押しだぁ!全軍俺に続け!」


 すでに流れはこちらが奪いとった、今から一気に、巻き返そうとした瞬間、異様な悪寒が走り俺は一気に横に体を飛び込む形で悪寒のした方向から逃げる。


 その瞬間、ズザザザ!っと地面を削りながら黄金の斬撃がもの凄い勢いでこちらに向かって来ていた。


 本能で危険と感じた兵士はすぐさま逃げたのだが気づくのが遅かった兵士は、黄金の斬撃により、真っ二つにされ、大量の死体を作り上げていく。


 「くっ、すまない、!?」


 犠牲になった兵士に対して悲しむ暇も無く、今度は冷たい冷気がベルゼを襲う。


 (「マズイな!?」)


すぐさま、最大火力の炎を目の前からくる得体の知れない冷気に勘でぶつける。


 冷気と熱気がぶつかり、大爆発が起きた余波で周りが吹き飛ぶ。


 今度は斬撃に逃れた兵士までもが巻き添えになり美しい氷のオブジェとして新しく生まれ変わってしまう。


 ベルゼ自身、右腕が完全に凍ってしまうが発熱系の魔術で一気に溶かす。だがしばらくは右腕の反応が遅いかもしれない。


 「ベルゼ様!!」


 異変に気づいた、ブロギロンが駆けつけてくる。


 「あぁ、なんとも無いが……」


 右腕の感覚を確かめる様にベルゼは眼前にいる二つの影なら向けて視線を向ける。


 「気を張れよ、ブロギロン。あそこにいる二人邪神群の指揮官だろうよ」


 「まさか、こんなに早く出会うなんて……」


 思いも寄らない出来事にブロギロンは戦慄してしまう。すでに彼は奴等の強さが自分達よりある事を知ってしまい少し震えながら身構える。


 「いいか?もし厳しくなったらさっさと逃げろ少しの間ならあいつらを抑えられるかもしれん」


 「いいえ、前回みたいなカッコ悪いところは見せませんよ!今度は僕の活躍するところを見てください!」


 「フッ、わかったよ!だが死ぬなよ!!とカッコつけたいが流石にこれはマズイな」


 剣を抜きながらベルゼは冷や汗をかく。今目の前にいる邪神群はダグウォールより格上のまさに最強格の邪神群である。しかも今回は手負いでは無く無傷。


 「二体道連れできたら大金星だな」 


 薄く笑みを浮かべるベルゼ。ここが一番の激戦区になる事はだれの目から見てもあきらかである。


 この合戦での最大の山場が今ベルゼ達の前に立ちはだかっている。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る