AM2:20~CM明け。

 ~♪(ブリッジジングル)


『は、はい! み、みなさんこんばんは。えーと、あなたのお耳の、えーと、なんだっけ……お耳のサティスファクション……マイケル・ジャンクションの川島ジャパンなんですけれども! なんとジャンクションさんが行方不明になってしまいまして……しばらくの間、奈落野楽奈ならくのらくなことミジンコがお相手させていただきます。よ、よろしくお願いします!』


(静かな間)


『えーと、えーと。……あ、そういえば今朝の話なんですけどね……。道を歩いていたら、白い子犬がうずくまっていたんですよ。……私は、大丈夫かなあ、嫌だなあ、怖いなあって思って近づいたんです……すると……なんと……その子犬は……』


(静かな間)


『……白い雑巾だったんです……!』


「あ、奈落野さん!」


『……では、続いて、朝の鳩のものまねを……』


「な、奈落野さん、一回止まってください!」


『ああ、皆さんご覧ください! 鳩のものまねにつられて知らない人が入ってきました! ハプニング発生です!』


「あ、いえ、ボクはただのADです! すみません、もう番組名からなにから滅茶苦茶だったので、つい割ってしまいました!」


『え……壺を……ですか……?』


「いや壺の話はしていないです! ええと、大物ゲストに来てもらえることになりました! 世界的ギタリストのスサノオさんです!」


『ええっ! すみません全然知らないです! 炎上を避けるためにたくさん調べようと思います!』


「なんなら今一番炎上しそうなこと言ってますけど……。とにかくそれまではフツオタも来ていますので頑張ってください奈落野さん!」


『そ、そうなんですね! 分かりました! ではフツオタさんに登場していただきましょう! どうぞおっ!』


「……いや、フツオタって、普通のお便りって意味です!」


『ええっ!? そ、そうなんですね……私、とんでもない間違いを……これもしかして炎上……』


「しないから大丈夫ですよ!」


 ガサガサ(お便りを渡す音)


『えーと、それでは粛々とお読みさせて頂きます。ラジオネーム、ろーぽさん』


 ――ハイウェイ川島さん、奈落野ちゃん、こんばんは。

 

『こ、こ、コンバンワァ(ハイウェイ川島のものまね)、こんばんはー』


 ――悩み相談です。犬が逃げたと実家から連絡があり、いま夜の街を探し回っています。仕事もあったのですが、全てほったらかして犬を探しています。どうすれば良いと思いますか。


『というお便りをいただきましたー。あのう、ろーぽさん。非常に残念なお知らせなのですが、このラジオは犬ラジオではありません。私が犬みたいなタイトルコールをしたために勘違いさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。私のことは嫌いになっても、犬のことは……』


 ガサガサ(紙の音)


『あ、なにやらカンペが届きましたよ、みなさん。えーと、なになに……えっ! 大物ゲストの方がもういらっしゃったんですか!?』


 ガサガサ(紙の音)


 『えーと、そ、それでは早速来ていただきましょう! スサノオさん、お入りくださいー』


 ぱちぱちぱち(拍手の音)

 

「イエアー! なんだかディフィカルトなことになってるみたいダネェ」

 

『そうなんですよ! でももうスサノオさんが来てくれたから安心です! やっぱりスサノオさんはヒーローなんだなって』

 

「ヒーローだなんて、ちょっとイグザクトレイションなんじゃないカイ? ハハハ!」


『それにしても、急だったのによくぞお越しくださいました。本当にありがとうございます!』


「まあバイチャンス、全国ツアーでカミングトゥージャパンしていたからネ。それにハイウェイリバーアイランドとはベストフレンドだったから、クイックリーして駆け付けたワケだヨ!」


『なるほどー! ちょっと何言ってるか分かんないんですけど、ありがとうございます!』


「え? あ、ウン」

 

『それにスサノオさんといえば、子供たちの憧れでもありますし!』

 

「ウン? うんン……」

 

『もう得意のラリアットで、この不穏な空気を吹き飛ばせえっ! つって!』

 

「ちょちょチョット。チョット待っテ」

 

『はい、どうしましたスサノオさん』

 

「なんかさ、ボクのこと勘違いしてナイ?」

 

『え? 勘違いですか?』

 

「なんか格闘家かなんかだと思ってナイ?」

 

『え、四国地方を中心に活躍されてるプロレスラーのスサノオさんですよね?』

 

「全然違うヨ! ボクあれだよ? 世界的ギタリストだヨ?」


『ええ? ちょっと何言ってるか分かんないんですけども』


「いやコレは分かるダロ! ボクは世界的ギタリストのスサノオだって言ってるんダヨ!」

 

『ええっ!? スサノオ違い!? おかしいな、ちゃんと検索したのに……』

 

「なんだよスサノオ違いっテ! 聞いたことないヨ! なんで世界的ギタリストが地方のプロレスラーに検索結果で負けてるんダヨ!」

 

『ああああ、これは大変失礼いたしました! 罰として私にラリアットをッ!』

 

「だからプロレスラーじゃナイって言ってるんだヨ!」


 ガサガサ(紙の音)

 

『あ、フツオタ! フツオタきました!』

 

「普通にメールって言えヨ!」

 

『ラジオネーム、ロック大好きさんから頂きました!』


 ――楽奈ちゃん、スサノオさん、こんばんは!

 

『こんばんはー。コンバァンワ!(スサノオのものまね)』

 

「ボクの分は言わなくていいヨ!」

 

 ――ぼくは、スサノオさんの大ファンです。子供のころからずっと大好きでした。試合後の勝利ポーズは今でもよく真似しています。

 

「おいコイツもプロレスラーだと思ってるジャネーカヨ!」

 

『ああもうコラ! ロック大好きさんコラ! おしおきラリアットだぞコラっ!』

 

「もういい! 帰る!」


『ええっ!? スサノオさん! ちょっと待ってください!』


 バタン(扉の閉まる音)

 

『あああ。行っちゃった……』


 ~♪(ブリッジジングル)


『あ、CMいきますか。わかりました!』


 すうーっ。


『うああああああああああッ! CMだバンザァァァァァァイッ!』



 

 ――――▶▷▷ コマーシャル。





 

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