引きこもり視点1
あぁもうだめだ。俺は死ぬしかない。
そう思いながら毎日毎日なにをしているんだと心の中で叫びながら画面の中の人間や獣を殺し続ける。
機会があれば死ねるのにと思いながら生き続けてやっている
引きこもりを続けると曜日感覚が失われると言うがあれは嘘だ。
いや嘘ではないか。嘘ではないけれどそれはレベルの低い話なのだ。
俺のように高次元な引きこもりになると暗い部屋の中で鬱々と過ごすことになる。
寝たい時に寝て起きたい時に起きる。
ゲームをしたい時にゲームを辞めたくなるまでやる。
真っ暗な部屋な中で完全に集中して飽きるまでゲームをするんだ。
病気になんてなるはずもないが、ゲームをやりすぎると眼精疲労によって頭が痛くなるから母親か父親の隙をついて財布からお金を抜いておき、抜いたお金で薬を近くのドラッグストアやコンビニまで買いに行く。
真っ暗にするための雨戸を軽く開けて、明るく、家に親がいないようであれば平日なので頑張って外に出て薬やエナジードリンクなどを買いに行き、暗ければ家族が寝静まった頃にお金を抜いておく。
近所の人にバレないようにこっそりとだ。
食事は大体冷めた何かが部屋の前にラップをして置いてある。
もう長いのにまだ身体を心配してくれるのか、料理の彩りはとてもいい。
こんな生活を繰り返すと曜日感覚どころか気付けば時間の感覚まで失われる。
家族に迷惑をかけているというのは分かっている。けどこの状況の打開策が分からない。
もう取り返しのつかないところまで来てしまったんだ。引きこもりと勇者のレベルは上がったら戻らない。
こうなってしまったらリセットボタンを押さない限り元に戻すことは不可能なのだ。
憧れだった野球選手になるという夢が壊れて以来、俺はゲームにどっぷりだった。
ただ壊れたというよりも自分で壊してしまったのだが……
頑張る気にもなれなくなったあの日から、俺の人生はガラクタのように錆びついている。
申し訳がない。
お母さんだってお腹を痛めて産んだ子供がこんな金のかかるハイエンドなゴミだと苦しいだろう。
俺は小さい頃に大病を患っていたらしいし、その時死んだ方がよかったのかもしれないな。
空から見てるであろう【あの人】や【あの子】、おじいちゃんおばあちゃんもみんなきっと俺の不出来っぷりには嘆いているはずだ。
人生は悲しいことに同じストーリーでやり直すことも不可能。
残念ながらもう取り返しがつかない。
もういっそ異世界にでも転生したい。
「はぁ~! 飽きた。暇すぎる」
真っ暗な部屋の中、声が聞こえた。ヘッドホンからじゃない肉声だ。
ちょうどゲームが静まった時にそんな音が耳に入ったんだ。
スッとヘッドホンを外してみる。幻聴まで聴こえるようになったのか、それを確かめる。
「退屈だ。こんな生活をしててよく死なないな君は」
確実に肉声だ。しかも俺に話しかけてる。
「ん? やっと聞こえたか?」
女の声、高く、歳はそれほど言っていない艶のある声。
少なくとも母さんではない。
俺は、恐る恐る振り返ってみる
「やぁ、初めまして」
「っ!? な、な!」
声が出ない。声の出し方を忘れたからじゃない、それ以上の衝撃に言葉が出ない。
暗い中見えたのは、日本人ではない透き通るような白い肌に金髪の少女がベッドの上に立ちあがった様子だった。
肩ほどまでに伸びている金髪がこちらのモニターの光を反射して輝いている。
「僕はエスカトロジー・フレデリカ。以後よろしく。まぁ以後って言ってもわずかな時間だろうがよろしく頼むよ」
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