世界はこんなにも手厳しい

白薔薇

紅崎満 First episode

紅崎満あかさきみちる17歳、高校3年生B組出席番号2番。

私の人生の主役は紛うことなき私。

それは幼い頃から変わらない私の主義。

人よりも出来る頭、人より運動神経も良くて、人より気遣いもできる。

歌もうまいし字も綺麗。

そんな優れた私の人生は薔薇色でだ。


私には程々な量の友人がいる。

けれど私には誰も敵わない。

だって私の友達は私よりずっと馬鹿だから。

成績は下の上の人間ばかりで会話のレベルだってあいやしない。


「満ー!」


「どうしたの?さくら。」


「この前言ってたライブ、当たったんだ!」


翠玉そうぎょくさくら、私の親友。

ライブなんて何が楽しいのだろう。

どうせいずれは飽きてゴミになるグッズ。

どうせは忘れる思い出。

プライベートで会うことも偶然以上のものは求められない存在に何を夢見るのだろう。

私はいつもこの手の話で喜んでいる人間を見ると冷めてしまう。

アイドルは普通に鑑賞するし、アニメもそれなりに観るが私はそこまで魅了されない。

趣味以外でもそうだ。

例えば将来の夢は何ですか?と聞かれた時、

皆はどう答えるだろうか。

理系ならば医者や看護師、薬剤師などなど。

文系ならば英語系の仕事だったり。

分理に関わらず資格を取って専門職を手にしたい、スポーツが得意だからそれを活かしたい。もし夢に明確な名前がなくとも何がビジョンは浮かんでいるはず。

浮かんでいるべき年齢だ。


幼い頃ならもっと簡単で、ピアノの先生だとか学校の先生とかパティシエとかテレビに出たいとか自分の特技に沿った大まかな夢を見る。


ー私はそんなもの見たことがない。


見るだけ無駄だと思っているから。

だって人間はあらかじめ限界が決まっていて

優秀な人間は良い職にその反対は良くない職に就くに決まってる。

私は幼少期から人より優れている自覚があった。だから別に夢はない。

それなりの結果になるって証明されているようなものだもの。


「満聞いてた!?」


「聞いてた、ライブが当たって新しくグッズも仕入れられるって話でしょ?」


「....聞いていたならタチが悪い。」


「何でよ。私も行ってみたいんだけどな〜」


さっきまで考えていたようなことは絶対に口に出さない。

私が間違っているとは思わないし思えない。

けれどきっとこういう考え方は嫌われる。

小学生の頃からずっとそうだった。

自分の考えに自信を持ちすぎて相手の考えを全て間違いだと思って否定しまくっていた結果、台風の目とか言われて教師から厄介がられたものだ。武勇伝のように語るつもりもないけれど。


学校ではみんなが好きでいてくれるような、

冷静だけどちょっぴり抜けているところがある。という頭がよくて人気のある子お馴染みのキャラを演じておく。


「満もいく?」


「いやいいよ〜、私金欠だしさ。」


本当に連れて行かれたらたまったものじゃない。外面に本気で返してくるなんて可愛い。

私みたいに賢い者は慎重なの。

本心なんて言う訳がないじゃない。



「満ちゃん、ちょっといいかな?」


青霧鏡吏あおぎりきょうり、理系クラスに所属している優等生。


「あ!きょうりじゃん!!」


さくらが鏡吏に抱きつく。

私はさくらを追いかける形で小走りで鏡吏へ近づいた。


「これ、顧問の先生から頂いたプリント。

いつ部活これそう?」


あぁそうだった。

私はサボり魔だったのだ。

部活を真剣にやろうとはするのだけれど、すぐにやる気を失って頑張っている時間を無駄に感じてくる。

少しでも人に負けてると感じると退部するか不参加になる。自覚もある厄介者。


「うーん、いつかなぁ..最近調子が悪くて休んでごめんね?」


「大丈夫!元気になったら来てね!いつでも待ってるから!」


鏡吏のことは嫌いだ。

私より優れているなんてことはないんだけど、なんか気に食わない。

そんなに必死に何でも頑張って馬鹿なんじゃないの?


「はぁ...」


「どうしたの?満ちゃん。」


「ううん、何でもない。」


私中心の世界なのに生きづらい..。


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