山の子

 これは祖父から聞いた話。

 ある田舎の村娘が突然行方不明になった。

 家族が慌てて探していると、その娘は山の方から大きなお腹を抱えて帰ってきた。

 娘は妊娠していた。

 行方不明になってまだ数日だというのに、すでに臨月だった。

 娘は何も覚えていないという。

 数日後、元気な男の子が生まれた。

 それが俺の祖父だ。

 山の神の子だ、と村中大騒ぎになったが、特別変わった所のない子供だったという。

 そんな祖父も10年ほど前、山で山菜取りをしていた際に、心臓麻痺で亡くなった。

 父も山登りをしている時に、滑落して亡くなった。

 だから俺はなるべく山には近づかないようにしてる。

 でも、たまに無性に山に行きたくなる時がある。

 いつか俺も山に還るんだな、と俺はそう思った。

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