いない孫娘

 何年か前に、近所に住んでいる女の子が交通事故で亡くなった。

 お通夜に顔出したとき、その子のおじいさんのあまりの悲しみ様はとても見ていられるものではなかった。

 だが、ある日突然、元気を取り戻し散歩をしているのを見かけた。

 次の日も、その次の日も、おじいさんはにこにこと朗らかな笑顔だった。

 やたらと右手を振りながら歩いている。

 ああ、そうか。

 孫娘と散歩をしている気になっているんだな。

 生前、よく一緒に散歩してたっけ。

 かわいそうに。

 でも、ある日。

 雨上がりの夕暮れにいつものようにおじいさんが散歩に出かけた。

 いつものように大きく腕を振っている。

 おじいさんが歩いている右側の水たまりが、ぱちゃぱちゃとはじけているのが見えた。

 

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