影の無い患者

 救急病棟に配属されて忠告されたこと。

 影の無い患者には注意しろ。

 救急病棟には生死の境にいる患者が運び込まれることも多い。

 応急処置後、まれに影の無い患者が現れるというのだ。

 しかもそれは患者が寝ているベッドにではない。食堂に、廊下に、玄関に、あらゆるところに現れる。

 その時、その患者に生気がない場合、無視をすること。

 声をかけると、この世に未練を残すそうだ。

 もし、顔色も明るく、元気がある場合は、すぐに声をかけ戻るよう伝えること。

 放っておくと、すぐに生気が抜けてしまう。そうなってしまった場合、もう声をかけてはいけない。

 とはいえ、そういった状態になった患者は、ほぼ翌日には亡くなっているそうだ。

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