猫の目

 ある日の夕方の事だった。

 西日に目を細めていると、一匹の黒猫がこちらに歩いてきた。

 猫の瞳は怪しく光り輝いていた。

 そんな時、他の猫が黒猫に近づいて来た。

 お互いの姿を認識すると、低い声で威嚇しあった。

 次の瞬間には黒猫が飛びつき、相手の猫は一目散に逃げて行った。

 すると黒猫は茂みに潜り何かを咥えて出てきた。

 餌でも隠していたのだろうか。妙に光る眼を私に向け、こちらへ歩いてくる。

 近づいてくる黒猫を見て、私は喉の奥から小さな悲鳴を漏らした。

 咥えているのは人の指だ。

 私をとらえるその瞳は人のものだった。黒猫ががぱっと口を開けた。

「おっ。丁度腹減ってたんだ。美味そうだ」

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