第16話 昇格をかけての意識変化・プロのお財布事情etc.

シーズンも佳境。

昇格なるか?

あとは少し金銭面について話しましょう。

どうぞ!

------------------------------------------------------------------------------------------------


「CC・FCは過去の強豪時代に再び突入した」

「スーパーなジャパニーズ、KAZUの加入でチームは生まれ変わった」

 

 などと、気の早い欧州、地元メディアはとんでもなく盛り上がっていました。僕が通学などで街を歩いていると、沢山の人が声を掛けてくれます。小さな街でしたし、みんながとてもフレンドリーに僕に接してくれます。嬉しかったですね。一流ではないけども、これがプロの見ている景色なのかも知れない。芸能人の様な扱いでした。

 子供達はペンを持って来て、シャツに「KAZU、signatureシグネイチュア(※英語でサインのこと)書いて!」という風に人だかりができてしまうほどでした。たまにおでこに「肉」と書いてやりました(笑) なぜかそれが街で流行りました(笑) 頼むから道を空けて学校に行かせてくれないかなあw などと良く思ったものです。

 逆に負けてしまうと、翌日外出は無理です。めっちゃ文句言われます(笑) でもそれくらいみんなが自分達に期待してくれているんです。下位リーグでもこれですからね。プロ選手が如何に注目され、日々プレッシャーを感じる日常にいるか、そりゃ欧州や南米が強いわけですよ。負けても、「感動をありがとう」などと甘っちょろい言葉をほざく国とは大違いですよね(笑)


 こんな風に人気が出てしまうプロ選手、特に英国ではプロフットボーラーは特に、高い社会的地位を持つ対象として、リスペクトされます。じゃあそんな選手はどのくらいお金を貰っているのか? きっと気になる人は多いと思います。

 はっきり言ってピンキリです。5部リーグ程度はまだ半分アマチュアの様なレベル、年俸として2~300万程度は保証されますが、試合に出て結果を残さないと本当の意味で稼ぐことはできません。1試合に出場して数万~数十万、これは契約の時点である程度決められています。チーム内でも格差が半端ないです。この時点では、僕自身、まだ5部リーグの選手、ですがレギュラーが保証されている中心選手だったので、1試合で20万円程度は確実に貰えていました。

 シーズンが休みの6~9月半ばは、プレシーズンマッチやらエキシビジョンマッチが収入です。それ以外のお金は発生しません。オフにバイトしたり、昼間に仕事をする選手も多くいます。ただこれは僕の時の、過去の話なので今は事情が違うかも知れないと思います。世界一になった、なでしこジャパンの選手もほとんどがこういう日々の暮らしをしています。ですが、未だにベスト8にすら入れない男子の方が待遇がマシなのは、気の毒ですよね。

 出場しないとwageウェイジ(※肉体的労働に対する給料。普通の社会人が貰う賃金はsalaryサラリーと言います。サラリーマンのサラリーは、この言葉から来ています)は貰えません。だからみんな試合に出る為に必死に練習時からアピールします。味方を削ることもある意味当たり前と言える程、本気です。もし怪我人が出たら、自分が出番を貰えるかも知れないですからね。

 でもさすがにわざと削る様な奴はクビになります。特に僕は代えの利かない選手だったので、僕にファールしたりしたら監督やコーチがブチ切れてましたね。ある意味アンタッチャブルな存在でした。毎試合ウェイジは貰ってましたし、得点・アシストでの出来高ボーナス付き。最終的には3部まで昇格したので、ウェイジはうなぎ上りでした。3部まで行けば5部のときより5倍は出ます。僕が在籍したのは、トータルで5シーズンくらいでした。そして年間にリーグ戦+カップ戦+プレシーズンやエキシビジョンと、約60試合。なので、ざっと平均で計算すると、


 約50万円(1試合)× 約60(試合数)× 約5年(在籍年数)+スポンサーやメーカーとの契約金が約数千万(※僕はチームがそうだったのでア〇〇〇〇と個人でも契約しており、シューズも足形からオリジナルで造って貰っていました)


 とまあ、こういう計算になりますかね。


 若かった時に多少散財しました(ヨーロッパ旅行など)けども。UNICEFやUNESCOにも幾らか寄付と言うか募金しています。貧乏でしたからね。家庭環境も最悪だったし。だから少しでもそういう未来ある子供が減ったらいいなと思ってです。でもまだこれから先(今現在)仕事しなくても生きていけるだけの財産がスイスの銀行に預けてあります。月々幾らまでと決めた額しか使えない様に設定してますけどね。まあこの辺にしておきましょう。

 帰国してサラリーマンをしていた時の月給よりも、当時の1試合のウェイジの方が遥かに高かったんですよね。ぶっちゃけやってられませんよwww


 別にお金が全ての理由ではないですが、プロ選手というステータスが如何に尊敬の対象になるか、お判りいただけたと思います。ですがこれがプレミアリーグのトップ選手になると、ケタが違ってきます。当時なら、イングランド代表のD・ベッカム、M・オーウェン、S・ジェラードなどが、みなさんでも馴染みのある選手かと思います(※後にこいつらとはプレシーズンやエキシビジョンで対戦することになります)が、このくらいのレベルになると、1試合のウェイジが約5,000万以上というとんでもない差になります。そりゃあみんなプロになりたいと思う訳ですよ。そして試合に出る為に練習から必死にアピールし、出たら死力を尽くす。そんな世界。

 みなさんは「90分走り続けたら5,000万円と社会的地位を保証してやる」と言われたらどうしますか? 多分そこで死んでもいいくらい必死で走ると思いますよ。フットボールには命を懸けるだけの魅力がそれだけあるんです。


 加えてワールドカップというのは、本来フットボールのワールドカップを示す言葉だったんです。それが今では色々なスポーツがWCを開催していますよね。ですがフットボールのWCの歴史は第一次世界大戦の前まで遡る程です、プレイ人口の母数が他のどのスポーツと比べても、とんでもなく違う、比較にすらならない。オリンピック加盟国よりもFIFA(※国際サッカー連盟)加盟国の方が圧倒的に多いんですよ。知らなかった人は驚いたと思います。WCと言えばフットボールのことなんです、未だに僕の中の認識では。恐らくフットボール先進国の人々の認識も同じ、WC=フットボール、だと思います。

 僕が渡英していた時は、Jリーグバブルが終わり、年俸などがメチャクチャデフレってたので、下手なJの選手よりは稼げていたんじゃないでしょうか? 決して自慢をしている訳じゃないです。事実を伝えているだけです。


 さて、そんなチーム状況ですが、僕は絶好調でした。毎試合得点とアシストを重ねていました。そして昇格ラインぎりぎりまで順位も上がってきていました。ですが、僕は得点よりもアシストに快感を感じるタイプ、まあ典型的なチャンスメーカーでゲームメーカー。相手を振り回して、味方のフィニッシュを演出するタイプでした。

 日本人が撃てる場面でもパスする場面をよく目にしてきた方は多いと思います。決定力不足やシュートが少ないと、よく代表でも言われていますよね。

 あれは日本社会の構造とメンタリティが影響を与えています。今でこそ減りましたけどね。FWでシュートを外すと批判される。DFやGKで失点すると批判される。だからどちらにも属さないMF、中間管理職的な中盤の選手の方が海外では活躍してましたよね。中田ヒデ、俊輔、小野、稲本などです。

 当時はヒデのみが海外、イタリアで活躍する時代。FWやDF、GKで欧州で成功した選手は皆無。キングカズでさえイタリアのジェノアでは干されていました。まあ彼は開幕戦で大怪我をしたのが大きな理由でしょうけどね。

 MFなら、外したFWが悪い、最後にやられたDFが悪いと責任転嫁できるんですよ。責任逃れや隠蔽大好き日本人らしいでしょう?

 そして例にもれず、僕もそういう日本人。アシストの方が多かったです。J監督から、


「KAZU、もっとシュートを遠目からでも撃っていけ。欧州では数字が全てだ。特に点を取れる選手が一番の分かり易い評価対象になる。もっと点を取ってプレミアにアピールしろ」

「なるほど……、わかりました。もっと得点を意識します」


 これは目から鱗でしたね。確かに中田ヒデはセリエAの開幕戦でユベントス相手に2得点したことが評価され、スター街道を駆け上って行きました。論より証拠です。

 これ以降、僕の得点数は目に見えて増えました。そして決めたらウザいアウェイの客も大人しく黙らせられる。一皮むけましたね。


 最初のシーズン途中からのほぼ負けなしでの大躍進で、無理そうだった昇格ラインを超えて、13位くらいだった順位が終盤で4位まで上がりました。1,2位なら無条件昇格ですが、3,4位は上位リーグの下位チームと入れ替え戦がホーム&アウェイで行われ、その勝敗や総得失点数などで決まります。そして最終節、最終順位は3位。僕は後半の約20試合で27得点32アシストで、個人的にも表彰されました。得点数が飛躍的に伸びました。これは監督の助言の御陰ですね。ですがトリッキー過ぎるプレーをするとめっちゃ怒られました。超怖かったです。


「おのれは代表でプレーしとる気になってんのか?」


 と言うくらい怖いwww


 ハイライトは、自陣センターサークル手前で、ボールを受けたときに、相手GKがかなり前に出ていたのを既に確認していたので、そこから振り向きざまに山なりの軌道を描く約60mの超ロングシュート。前に出過ぎていたGKの頭上を越えてゴールに吸い込まれました。その週のベストゴールと、シーズンのベストゴールにも選ばれました。

 相手のサポーターからも拍手を送られました。お役御免で交代する時には、アウェイの相手サポーターも含めてスタンディングオベーションでした。嬉しかったですね。思い出したら震えて来ました。この試合はホームチームが不甲斐ないって、ブーイングされていましたね。途中から余りにも一方的過ぎたから、僕のプレーに拍手が飛ぶようになってました。「ああーこれは勝てんわ」ってなったんだと思います。


 この試合で僕が決めたゴールはこんな感じです。

これよりもっと距離、10mくらい遠かったけどねww

https://www.youtube.com/watch?v=VXW7hnlY4sk


 良かったら感想ください( ´∀` )



 さあチームも好調な中、いよいよ4部昇格を懸けた入れ替え戦が始まります。






------------------------------------------------------------------------------------------------

とってもシビアな金銭面。

プロでもピンキリです。

そして奇跡の昇格ライン突破で入れ替え戦です!

KAZUDONAストーリーはどうなっていくのか?

続きが気になる方はどうぞコメントを御願いします。

応援してくれると頑張れます!

当時のことを思い出すと、心に来るものがあって、今でも涙が出るんです。

皆様の応援が書き続ける気力になります。

よろしくお願いします。


で、そんな僕が連載しているファンタジーです。良ければこちらも眺めてやってください! お願いします!

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653523704177


ではまた次回・・・、書きますよ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る