第14話 新しい環境・プロの洗礼?

漸く、沢山の人に支えられ、プロの扉を抉じ開けました。

ですがこれからが勝負。

フットボールを愛し続けて来た当時19歳の少年の挑戦が始まります!

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 契約のときにチームが色々と手続きをやってくれました。先ずは契約したことで、当初の一年間という期間が+3年になったので、大学に休学期間を延ばす申請と、こちらでも単位が取れる様にその街の大学の社会人コースに編入させて貰いました。

 語学学校は、まだまだ英語力を伸ばす必要があった為、籍は置いて貰い、いつでも参加できるようにしてくれました。ワーキングビザなど、そういう僕にはよくわからんことも全て。

 家はどうするかと聞かれましたけど、現地の人と毎日交流することは大切なので、そのままにしました。ステイ代もチーム持ちです。一番下の弟と同い年の息子さんがいて、ホームゲームにはいつも来てくれたり、KAZUファンでいつも「KAZU、フットボールの技術を教えてー」と言って来る良い子だったので、可愛かったってだけですが。だが敢えて言わせて貰う、僕は決してショタではないと(笑)! 弟と同い年で同じ様な感覚で可愛がってただけです。


 ウチのチームは決して強豪(過去強い時代もあったらしいです)ではないので、昼間働いている、セミプロの人も結構いました。僕は完全なプロ契約+出来高という下位リーグの選手としては破格の待遇でしたので、必要な勉強だけちゃんとやって、毎日ナイターでチーム練習に参加していました。上位クラブならみんな完全にプロ契約なので昼間に練習なんですけどね、過去のJのユース時代の様に。

 シーズン途中からの参加でしたが、僕が加入したことでチームはなぜか異常に燃えていました。上位昇格すれば、フットボール一筋で生活できますからね。


 そしてチームに合流して短期間で、チームメイトはみんな良くしてくれました。ホント、最初の紅白戦のときのアレはなんだったの?って言うくらいフレンドリーww

 ですが、ボールも確実に僕に集まる様になっていたし、僕がボールキープすると味方が一気にポジションを上げてまるで花火のようにポジションを変えて展開してくれます。J監督の戦術ですが、ヨハン・クライフの時のバルサみたいなサッカーでしたね。

 

「これまでは中盤で運動量も多く、ボールもキッチリと保持してタメを作れる選手がいなかったんだよ、KAZU、要するに君みたいな人材だね」


 ということで、僕は完全に信頼を勝ち取れていましたし、チームメイトは僕を見つけたら、すぐボールを預けるという選択肢を最優先するのが当たり前になっていました。練習は特に真新しいものはなかったですが、ユース時代を思い出させる程厳しく激しいものでした。もう慣れっこでしたから何てことはなかったですけど。


 ウィンターブレイク明け、遂に公式戦デビューの日が来ました。イングランド北東部にある街での試合です。漸くデビューできる。練習から絶好調でした。でも念の為両足首には伸縮性のバンテージ(日本の行きつけのスポーツドクターの先生に大量に貰っていました)を巻いて、ある程度固定してからプレーしていましたけどね。膝は特に何もしてません。強めに直接接触されると微妙に痛いくらいの程度でしたし、膝関節を固定するとプレーできませんからね。多少のリスクは承知の上。練習後は必ずアイシングで膝と足首のケアをしていました。もう怪我したくないしね。


 前日からバスで現地入りして、ホテルに泊まります。これが南米とかだとエグイんですよね。相手チームの宿泊しているホテルの周辺で大騒ぎして寝れなくさせたりするんです。チームメイトの南米出身の奴が言ってました。「英国はマナーがいい」とかw いやいやフーリガン(※熱狂的過ぎるサポーター、暴行やら何かと酷い)の発祥地だろここww まあ初のプロの試合前でもぐっすり寝れました(笑) こういう緊張で寝れないとかないんですよね(笑) 


 試合当日、午後からの試合だったと思います。僕は監督から先ずは前半相手を見て分析したり、雰囲気に慣れる為ということで後半スタートになりました。まあ納得のいく理由です。ウォーミングアップは試合前にしっかりして、特にストレッチは入念にですね。その後冷やさない様にガッツリ着込んでから監督の隣のベンチに座って、試合開始からずっと相手と此方のチームの動きやキーになっている選手、穴になっているディフェンスが何処なのかをじっくりと話しながら分析していました。相手のY・FCとしときましょうか、ホームだけあって観客の応援も凄く、アウェイのこちらは押され気味でしたね。そしてミスから2失点しました。出ていたら防げたな、と思いましたね。


 前半終了、0-2でリードされて前半を終えました。ハーフタイム、選手達は「アウェイで固くなっている、強いメンタルを持て」など、デカいJ監督が鬼の形相でキレて言われてましたね。まあ確かにアウェイだし固くはなるんだなあって感じです。僕にとっては他人事。欧米は地元意識強いですから、ブーイングとかもめっちゃきます。でも日本人の僕にとって、そんなものはない。会場が違う程度です。


「KAZU、出番だ。逆転してきてくれ」

「当然でしょ」


 そう言って、ハーフタイムを終え、僕は初めてプロのピッチに立ちました。最早全身からアドレナリンが燃えて溢れ、爆発寸前です。下位リーグとはいえ、どこも自前のスタジアムを持っていて、まあ1~2万人は入ります。僕がピッチに出ると、まあ相手サポーターからは異質に見えますよね、金髪にしてましたが、肌の色などで東洋の人間だとはすぐわかる。すぐにブーイングです(笑) サルとかまあ色々と汚い言葉が飛んできます。でもぶっちゃけどうでもよかった。


「遂にプロとしてのピッチに立った、やったぜ!」


 という気持ちの方が大きい。それにそんなしょうもないこと言ってきた奴は基本半殺しにしてますからね。何とも思わない。興奮が勝っていました。

 あのキングカズでさえ、デビュー戦は緊張で何もできなかったらしいですけど。僕は嬉しさでの、早くプレーしたいが先に来てましたw


 さあ後半開始です。味方に前半の修正の指示を出し、ボールをキープして保持率ポゼッションを上げます。僕がボールを持っている以上、まず簡単にロスト(※ボールを奪われること)しない。味方選手はどんどん前に上がって行きます。攻撃に参加する枚数が増えて来ます。4-4-2という英国ではスタンダードなシステムですが、僕が入ると、トップ下に移行、3-5-2になります。


 中盤の人数も増えた、相手の攻撃のキーマンは指示を出して抑えた。ここからパスを散らして展開するものですが、折角なのでプロのピッチで自分のテクニックを試したい。ウズウズしてたので、ゴールまで約40m、どこまで行けるか? いいや、行くしかねえ! 得意のドリブル開始です。左右からのチャージをフィジカルで弾き飛ばし、細かいステップのフェイントで3人、4人と抜いていきます。仲間が声を出してますけど、関係ない。特攻あるのみ。そしてペナルティエリア内に侵入し、くるくるとルーレットやシュートフェイントで相手ディフェンスは全員抜きました。キーパーは撃たれるのが怖いので前に出て来ます。そしてキーパーがこっちに走り出した瞬間にスコーンとトーキック(※つま先でのキック、発動が速く読まれにくい)で股抜きシュート。コロコロと転がってネットを揺らしました。1点ゲット。1-2です。アウェイの客はシーーーンと静まり返ります、ざまあみやがれ。そして決めたボールを拾って、空を指差しながら、ガッツポーズ。敵味方、何が起きたのかわからない顔をしていますが、ウチの地元から応援に来たサポーターは大興奮です。


「見たか! これが苦難を乗り越えてピッチに戻って来た男の力だ!」と示す様にそのままボールをセンターアークまで持って帰りました。

 その後チームメイトにもみくちゃにされましたけどね。


「すげえぞ!」

「さすがKAZUだ!」

「勝てるぞ!」


 まあ好き勝手言ってくれます(笑) でもね、勝つ気が無くてピッチに立てるか、と味方に檄を飛ばしました。長くなるので端折りますが、その後連携して2点ぶち込みました。デビュー戦ハットトリック。まずいないでしょうね、普通は。そして後半の半ばをかなり過ぎた頃、もう一点いけるなと思った僕は、ボールを貰う時の体捌きとステップでマーカーを股抜きで躱しました。さあ行くぞ、と思ったとき背後から思いっきり蹴られました。スピードに乗っていたので、もんどりうって転倒しました。最初に膝をやられた時の様な嫌な感覚でした。焦って脚を触って、感触を確かめました。「良かった、何ともない!」でもスピードに乗っていてごろごろんと転がったので、多少は体が痛かったです。

 上半身を起こすと、僕の足を削ったのは相手のキャプテン。フットボール後進国のアジア人に試合を好き勝手にされたことがムカついたんでしょうね、これですよ、一番気を付けないといけないのはね。チームメイト達がそいつと審判に詰め寄り、もう試合の雰囲気は荒れまくりでした。「退場だろ?」そう思っていました。

 そしてその無駄にデカい小回りの利かない相手のキャプテンは俺のところまで来て、手を差し出しました。あー、起こしてくれるのか? と思い、その手を掴もうとしたとき、ペッっと唾を吐かれ、


「あんま調子に乗んなよ、このクソジャップが!」


 トドメを刺しに来ましたね。「また同じ様なプレーをしたら削ってやる、怪我させてやる」と言う露骨な挑発と精神攻撃です。普通なら退場です。その前の故意のタックルもあるしね。でも審判は何もしません。怒り狂った監督がベンチから出て怒鳴り、チームメイトがまた相手に詰め寄っていきます。

 でもね、「一番腹が立ってんのは俺なんだよ!!!」 ハンドスプリングで飛び起き上がりざま、そいつの右テンプルに全身の捻りと体重を乗せた右フックを喰らわせました。すいません、まだ20歳になったばかりのガキで血の気も多かったんです。

 でもこういう悪質なことで僕は一度人生を絶たれた。我慢などと言うストッパーはなかった。ぶっ飛ばしたそいつは泡を吹いて気絶しました。審判はそいつにイエロー、僕には一発レッドカードを出しました。味方はキレまくりですよ。当たり前です。ふざけんなと思いました。

 でも20分でハットトリックしたことや、大柄な汚い相手をぶっ飛ばしたことは、地元の新聞に載りましたね(笑) 「とんでもないカミカゼが現れた」って(笑) まあこれがホームタウン・ディシジョン(※ホームチームに明らかに有利な判定をすること)って奴かって思いましたね。中3の全国を思い出しましたよ。5試合の出場停止に罰金。でもチームの誰も僕のことは責めませんでした。結局試合は3-2で勝ちでしたしね。監督も、


「KAZU、お前が重傷を負わなくて済んで、ほっとしている。あれは明らかな誤審だ。お前が怒るのも無理はない。だが、フットボーラーなら足で、プレーで返してやれ」


 正論パンチ! 物理より効きましたね(笑) 効果はバツグンですよw でも危なかったです。また同じ苦しみが来るかと思ったら怖かった。後日、サッカー協会から連絡があり、相手選手にも、もっと酷い罰則が下されました。ざまあですよ。引退しろと思いました。


 こういうラフプレーや、イングランドって客席が近いんですよね。コーナーキックの時とか、スタンドギリギリまで助走距離を取らないといけない。間近くに酔ったオッサンやらがいきり立ってブーイングして来るんですよ。コインやペットボトルが飛んで来るのなんて茶飯事。一度中身の入ったビール瓶を頭に投げつけられて、右目の数㎝上あたりに直撃し、出血多量で担架で運ばれました。血が吹くほど出ると意識飛ぶんですねww  

 そのオッサンは逮捕ですよ、暴行罪に殺人未遂ですからね。


 とまあこんな風に僕のデビュー戦はある意味プロの洗礼を受けた感じになりました。良い子のみんなはマネしないようにね!





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危うく大怪我!

プロになってからのが危険がいっぱいです。

KAZUDONAストーリーはどうなっていくのか?

続きが気になる方はどうぞコメントを御願いします。

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当時のことを思い出すと、心に来るものがあって、今でも涙が出るんです。

皆様の応援が書き続ける気力になります。

よろしくお願いします。


で、そんな僕が連載しているファンタジーです。良ければこちらも眺めてやってください! お願いします!

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653523704177


ではまた次回・・・、書きますよ



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