第3話「こんな明け方までどこへ行っていたんですか?」
「えっ!? ティアさん、どうしてここに!?」
「夜這いに行ったら部屋にいな…………早起きして外へ出たら偶然です。リーダーはどうしたんですか?」
「い、いやちょっと身体を鍛えようと街を走ってて…………朝、早いんだね。何かその……凄い荷物だし」
「所用で。それより依頼の後ですよ。いくら今日が休みとはいえオーバーワークです。肉体の管理も出来ないんですか?」
「あ、あはは……」
「まさか私を心配させて気を引きたいんですか? そんな事しなくても、もうこれ以上ないくらいに惹かれていますが」
「い、いやそうじゃないんだけど……でも、心配してくれてありがとう」
「……はあ、それと鍛錬の仕方も非効率的で準備不足です。次回から私に一声かけてください。取り敢えず、身体が冷えますのでこのタオルで汗を拭いてください。飲み物もあるので水分補給もしっかりしてください」
「こんなに色々………………あっ、ご、ごめん」
「え…………今、私のこと避けました?」
「えっと……」
「今スッと私を避けるように離れましたよね? どうしてですか? 何か不手際がありましたか? 過干渉だったでしょうか? それとも気になる子とは何喋っていいか分からず逆に距離を置いちゃうタイプですか?」
「いや……さっきまで走ってたから、今は……汗が凄くて……」
「……あ、少し待ってください。今、採取キットを用意しますので………………はい、それで?」
「その、体臭とか汗の匂いが嫌だったみたいだから……」
「全く嫌じゃありませんが? どこでそんな性質タチの悪い情報を仕入れたんですか?」
「えっ、でも昨日は近寄らないでって……」
「昨日とは状況が違います。このバッグ一杯に下着パンツが入っておりますので」
「え? その中全部パンツなの? …………それ汗の匂いとは関係ないし、やっぱ気にすると思って」
「寧ろウェルカムですが?モアプリーズなんですが?」
「そ、そうなんだ……なら、今日は近付いても大丈夫ってこと?」
「はい、それはもう。いくらでも近付いてください。何なら抱いてください」
「そっか、じゃあ普段通りで……」
「先っちょ!先っちょだけでいいから!」
「うわっ!?ど、どうしたの急に大きな声出して!」
「いえ、よくある発作のようなものですのでお気になさらず」
「そ、そうなんだ……」
「ですがリーダー、スキンシップの効果というのは馬鹿に出来ません。信頼感の向上やストレスの軽減、また、互いの性感帯を知り、パーティの連携を高めるという点でも有効と思います」
「パーティの……」
「はい、ですからここは私とくんずほぐれつ、肌と肌を重ねて蜜月の夜を共に……」
「…………えっと、じゃあ少しだけ……」
「え」
リーダーの男が小さく頷いてティアの腰に手を回し身体を密着させる。
少しだけ力が込もった腕がギュッとティアの身体を抱き締めた。
「お”っ?」
プシャッと何かが噴き出すような水音が響き、ティアの身体がビクンッと痙攣する。
「その……これでどう……わっ!?ティアさん、大丈夫!?」
男が驚いて腕を離す。支えを失い脱力したティアはバックを落とし、膝から崩れ落ちた。
俯いたティアは時折ビクンッと痙攣した後、何事もなかったかのように立ち上がった。
「部屋に忘れ物をしたので一度戻ります。あと暫く私に近付かないでください」
「えっ」
そう言い残しフラフラとした足取りで宿に入って行った。
残された男は頭を抱え、その場で膝をつく。
「あ……や、やってしまった……冗談を真に受けて……き、嫌われたかも……」
青ざめた男をせせら笑うように冷たい風が吹き、目の前で一枚の下着が舞う。
「それに……どうすんだこれ」
街が活気に満ちる前の早朝、バッグから散乱した下着の山と一人の男が誰もいない道の端で静かに佇んでいた。
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