女妖の章

『人魚』



人魚姫は探しものをしていた。


真珠の首飾りに通して肌身離さず愛でていた宝物を、うっかり落としてしまったのだ。


海藻の陰、岩の下、チョウチンアンコウの口の中――


「みつけた!」


珊瑚の隙間から拾い上げ、愛しげに胸に抱いた小さな白いかけらは、百年前に愛した若き王子の喉の骨。



(お題:探し物、珊瑚、白)





『ハーピー』



「嫌だわぁ、日焼けしちゃう」


白昼の浜辺で、ハーピーは嘆いた。


美白命の彼女だが、今日は女王の命でハマヒルガオを摘みに来たのだ。


ハマヒルガオはハーピーの腹痛の特効薬。日盛りに摘んだものが特に効く。


「まったく、人間の男なんか喰うからよ。どんなバイキンついてるか分かったもんじゃないのに」



(お題:日焼け、ハーピー、腹痛)




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