ホームレス少女を家に招いた三日目-2

 僕は鍵を開け、玄関のドアを開いた。急いで部屋の奥の方に行き、タオルを取ってくる。


「本当にいいの? ありがとう」


 彼女は渡したタオルで、申し訳なさそうに髪の毛の水分をふき取る。


「こんなふかふかのタオル、久しぶりだなぁ。カバン圧迫しちゃうから、薄いのしか買えないから、落ち着く……って、ごめん。私、ごみまみれだったのに」


 僕は気にしていないことを伝え、風呂場まで案内する。


「……ねえ。一応さ、君結構やばいことしてるよ? 多分一人暮らしなんだろうけど、その家に女子を一人連れ込もうとして。本当にどうかしてる。一応私もスマホ持ってるから、通報はできるんだけど?」


 責め立てるような文言だが、その声はからかいに満ちていた。


「ま、私は通報できないけどね。ホームレスだし。じゃあ今日はお言葉に甘えることにするよ」


「あ、あのさ……あんまり私の服、触らないでね。汚いし」


 そう言い残し、彼女は洗面所の扉を閉めた。



*****



「お風呂いただきました。ありがとね、着替えまで借りちゃって。私が服に触らないでって言ったから、着替えを持っていき忘れた私のために自分の服、出してくれたんだよね。本当にそういうところ、優しいよね。彼女いそう……って、そういえば大丈夫?」


 あいにくそういう相手がいないことを伝えると、彼女は安心した様子で息をついた。


「よかったー。っていうか、もしいたら説教するところだった。彼女という大切な存在がいながら、そんなことするんだーって。いないならよかったけど」


「じゃあありがとう。流石にこれ以上はお世話になるわけにはいかないから」


 濡れた服を乾かした方がいいと伝えると、彼女は唇を噛んだ。


「濡れた服? 確かに乾かした方がいいよね。乾燥機あるの? 風呂場で換気扇回す? それ変なにおい残らない? まああの臭さに比べたらましか」


「じゃあお言葉にまた、甘えさせてもらおうかな。ついでに荷物の整理もしていい? いらないものを減らしたくて。あ、もちろんごみは持って帰るよ?」


 僕がごみ袋を差し出すと、彼女は驚いた様子でそれを受け取った。


「ごみ袋…………本当に君、人間? 私にこんなに優しくして、とって食おうって考えてないよね」


「ふふっ、ありがとう。じゃあ、自分のことしてていいよ。私は色々終わったら帰るし。まあ、帰るって言っても、あの場所だけどね。なんだかんだ気に入ってるんだ。多分ふかふかのベッドでは寝られない体になってると思うし」


 僕は頷いて晩御飯の準備をしようとキッチンに向かおうとしたところ、彼女はまた笑った。


「……ふふっ、そこの線引きはできてるんだね。安心したっていうか、ちょっと悔しいっていうか」


「ううん、気にしないで」


 僕は冷蔵庫の中身を確認する。二人分はギリギリ作れそうだ。

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