今日は諦めるか

「……はぁ」

「何よそのため息」

「……いや、別になんでもない」


 ため息も吐きたくなるだろ。

 なんで俺は、ヘレナと一緒にラミカを探してるんだよ。……しかも、手を繋ぎながらとか、絶対おかしいじゃん。……いや、そもそもの話、俺があの時断れてたら話は変わってきたんだけどな。

 ……まぁ、それはともかくとして、これがラミカとなら分かるよ? 本当に恋人になったんだし。

 でもさ、ヘレナは違うじゃん。

 前世の推しではあるけど、恋人でもなければ、体の関係があるわけでも……いや、キス、したな。口じゃないけど、キス、したわ。……ま、まぁ、口じゃないんだし、ノーカウントか。

 ともかく、体の関係があるわけじゃないんだから、違うんだよ。


「手、離さないか? 別に逃げないからさ」


 そう思って、俺はそう言った。


「……離さないわよ」


 すると、小さく拗ねたようにそう言ってきた。

 なんでだよ。

 逃げないって言ってるんだから、離してくれたっていいだろ。……いや、全然逃げるつもりだから離さないのが正解なんだけどさ。


「……あれだ。手汗とか、気持ち悪いだろ? ヘレナの気持ちを思って、俺は言ってるんだよ」

「大丈夫よ。私はそんなの気にしないから」

「……俺が気にするんだよ」


 はぁ。……なんやかんや思ったけど、まぁ別にいいか。

 どうせラミカがどこに行ったのかが分からない以上、街を出ていいのかも分かんないし。

 ……いや、ラミカなら追いついてきてくれるだろうけど、やっぱり見つけてから気持ち的にも安全に街を出たいしな。


 そう思って、そのまま適当に街を歩きつつラミカを探してたんだけど、全く見つかる気配は無かった。

 ……やっぱり、ラミカの方から俺のところに来てくれるのを待つしかないのかな。

 この感じ、気配を消してるっぽいし、そんなラミカを俺が見つけられるとは思えないんだよ。


「暗くなってきたし、今日は諦めるか」


 そう思って、俺はそう言った。


「いいの?」

「ラミカは強いし、別に心配して探してる訳では無いからな」


 これでさっさと解散の流れに持っていこう。


「俺はまた明日探すから、ヘレナは宿……に泊まってるのかは知らないが、戻れよ。暗くなってきてるしな。そこまでなら、送っていくから」

「あんたはどこに泊まるのよ」


 俺はその辺で適当にラミカを待ちつつ朝になるのを待つだけだな。

 金ないし、泊まる場所なんて取れるわけが無いからな。


「別にどこでもいいだろ」


 その辺で過ごすなんて言って、同じ宿に来なさいよ、とか言われたら嫌……ってのはちょっと悪いけど、嫌だからな。

 

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