俺はちゃんと言ったからな?
「もう一度、答えを聞かせてください。私のことを好きか、好きじゃないのか。……もしもあなたが本当に私のことを好きじゃないのなら、諦めます。昨日のことも、今日のことも誰にも言いませんし、隠し通します」
アリーシャは俺の目をしっかりと見て、そう言ってきた。
俺は思わずそんなアリーシャから目を背けそうになってしまったんだけど、アリーシャは目をそらすことなんて許さないとばかりに優しく俺の頬に両手を当ててくる。
「…………好き……じゃない。……さっきも、言っただろ」
アリーシャの目から目を逸らせなくなった俺は、そう言った。
……大丈夫。バレない。バレなかったら、アリーシャは全部秘密にしてくれるって言ってくれてるんだ。だから、大丈夫。
そう思いながら。
「……ふふ、そうですか」
「あ、あぁ、そう、だよ……」
良かった。信じて貰えた。
そう思いつつも、心のどこかでは、気がついて欲しい。そう思っている俺がいることに嫌悪感を感じた。
「良かったです」
「……え?」
アリーシャは突然そう言って、俺に何かを言わせる暇を与えてくれることなく、また、そのままキスをしてきた。
「な、何やってるんだよ。……俺、ちゃんと好きじゃないって言っただろ?!」
「はい。言いましたね」
「だ、だったら、なんでキスなんてしてきたんだよ」
「ふふ、あんな分かりやすい嘘、私が気が付かないと思いましたか?」
アリーシャは微笑みながら、そう言ってくる。
……嘘って……俺、また顔に出てたのか?
「い、いや、あれは……嘘、なんかじゃ……」
「私も大好きですよ。……でも、なんでそんな嘘をついたんですか?」
ダメだ。
もう何を言っても、アリーシャがその件に関しての俺の言葉を信じてくれる気がしない。
「……だから、嘘じゃないって」
そう思いながらも、俺はそう言った。
嘘だと認める訳にはいかなかったから。
「……そうですか。何か、言えない理由があるんですね。……まぁ、今はいいです。でも、いつかは教えてもらいますからね」
すると、アリーシャはそう言ってきた。
……全く俺の話を聞いて貰えないんだけど。……俺、そんなに嘘下手なのか? ……仮にそうなんだとしたら、よく俺が本当の誘拐犯だってことがバレてないな。
「……俺はちゃんと嘘じゃないって言ったからな。……取り敢えず、離れてくれ。お互い、そろそろ服を着よう」
そう言うと、アリーシャは意外……ってのもどうかと思うけど、意外にも素直に離れてくれた。
それを確認した俺は、アリーシャに背を向けて、脱いであった服を手に取り、それを着た。
「それでは、そろそろ行きましょうか」
俺が服を着終わると、アリーシャの方もちょうど服を着終わったみたいで、そう言ってきた。
「ん? あぁ、そうだな。……あ、いや、ちょっと待て」
思わず頷いてしまったけど、まだアリーシャに昨日とさっきしてしまったことを秘密にするってことを納得してもらってないことを思い出して、扉を開けて部屋の外に出ようとしてるアリーシャを止めた。
……そう、止めたはいいんだけど、扉の前には、クローリスが待ち構えていた。
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