……終わった
目が覚めた。
……ゆっくりと隣を見ると、アリーシャが俺に抱きつきながら裸で眠っていた。
そして俺も、服を着ていない。
「……終わった」
そんな状況を確認した俺は、一言、喪失感を感じながら、呟くようにそう言った。
……アリーシャは当然のように処女だった。
リアやラミカの処女を奪った……奪った? ……奪わされた時とは訳が違う。
だって俺、アリーシャを誘拐した張本人なんだもん。
しかも、だ。リアやラミカの時は無理やりされたっていう言い訳を出来たし、実際に無理やりされた。
ただ、今回の場合はそんな言い訳できない。
最初の方は魔道具を使われて力が出せなかったけど、最後の方は普通に力が出せるようになってたし、無理やりじゃなく俺の意思でやってる。
……まぁ、仮にあのまま魔道具を使われたまま本当に無理やりされてたんであったとしても、俺の証言なんて全くの意味をなさないだろうがな。……だって、アリーシャは公爵令嬢で、俺は一応恩人ってことになってるけど、普通に平民なことには変わりないし、権力的にも、平民の言葉と公爵令嬢令嬢の言葉、どっちを信じるかと聞かれたら、当然公爵令嬢のアリーシャの言葉を信じるに決まってる。
「ん……」
そんなことを思って、俺が絶望に打ちひしがれていると、アリーシャの声が聞こえてきた。
やばい。アリーシャが起きる。
「……え? あ……お、おはよう、ございます」
俺はなんとか無かったことに出来ないかと頭をフル回転させるけど、そんな方法なんて思いつくはずもなく、アリーシャは一瞬なんで俺が隣にいるんだ? みたいな顔をしつつも、直ぐに状況を理解して、耳の先まで顔を真っ赤にしながらも、俺に抱きついてきて、嬉しそうに微笑みながら、そう言ってきた。
「……おはよう、アリーシャ」
終わった。
改めてそう思いつつも、俺はそんなアリーシャに向かってそう言った。
「そ、それで、なんだがな? アリーシャ」
「もしかして、隠そうとしてます?」
取り敢えず、このことを公爵……いや、公爵だけじゃないな。このことは誰にも知られる訳には行かないから、アリーシャに交渉をしようとしたところで、そんなことを言ってきた。
「ッ、い、いや……そう、だな」
一瞬、誤魔化そうとも思ったけど、誤魔化すより正直に話してアリーシャが協力してくれる可能性を少しでも上げる方がいいと思って、俺は動揺しつつも、頷いた。
……なんで、分かったんだ?
「リアの時も、誤魔化そうとしてきましたしね。……何となく、そう思ったんです」
まるで俺の心を読んだかのように、アリーシャはそう言ってきた。
……確かに。そういえば、リアの時も隠そうとしたんだったな。……一瞬でバレたけど。……なんなら、二度目も一瞬でバレたけど。
「そ、それで、アリーシャは協力、してくれるのか?」
「嫌ですけど?」
希望的観測だってことは分かってる。
それでも、勝手にアリーシャなら協力してくれると思ってた。
なのに、アリーシャの口から出てきた言葉は、当たり前と言えば当たり前なんだけど、そんな無慈悲な言葉だった。
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