なんでって……

「ねぇ〜、これ〜、飲んでいいの〜?」


 リアに酒を飲むのは絶対にダメだと言い聞かせたところで、ラミカがこの前買った最後の一本の酒を持ってきて、そう聞いてきた。

 いつの間に移動してたんだよ。

 と言うか、ラミカも飲んでいいわけないだろ。

 ここでラミカに許可を出したら、リアも飲みそうだし、単純にラミカはラミカでめんどくさい酔い方をすることが判明したからダメだ。


「ダメだな」

「え〜」


 そう思いながら、俺はそう言った。

 リアもそうだけど、逆になんでいいと思ったんだよ。

 ……もういっその事、あの酒、俺が飲んでやろうかな。

 めちゃくちゃ度が強い酒だけど、俺は酔ってもただ思考能力が下がったりするだけで、リアみたいに誰かに襲いかかったりはしないしな。


 ……まぁ飲まないけど。

 酒、トラウマだし。これ以上酒の事で失敗するのはもう絶対嫌だし。

 それに、正直大丈夫だと頭では思ってるんだけど、何となく、本当に何となく感覚的にまた何か失敗を犯しそうだからな。


「ラミカ、絶対元の場所に戻しとけよ」

「……ん〜、分かった〜」


 そう思いながら、ラミカに向かってそう言うと、ラミカは頷いて、元の場所に酒を戻してくれた。

 

「……ねぇ、やっぱり、一緒にお酒、飲まない? 私たちが初めてした日みたいに」


 すると、今度はリアがまた、そんなことを言ってきた。

 やめて? それ、マジで後悔してるんだから。


「絶対飲まない」

「ねぇ〜、それ〜、うざいんだけど〜」


 ラミカと俺の声が重なった。

 

「……うざいも何も、事実」

「は〜? こいつ〜、もう殺してもいいかな〜?」


 すると、俺が何かを言う前に、リアがそんなことを言って、ラミカの逆鱗に触れていた。

 ……これ、俺やっていけるのかな。この二人、相性が悪すぎるんだけど。

 いや、逆に良かったりするのか? 喧嘩をするほど仲がいいみたいな。……うん、絶対違うな。少なくともラミカの方は、絶対リアのこと好きそうじゃないし。


「ダメだからな?」


 流石に、家の中で本気でリアを殺そうとはしないだろうけど、俺は一応、ラミカに向かってそう言った。

 なんか、帰ってきてからの俺、ダメだダメだとしか言ってないな。

 いや、実際ダメ……と言うか、俺と一緒にいる時はしないで欲しいことだから、別にいいんだけどさ。


「……え〜、じゃあ〜、私ともそういうことしてみよ〜?」

「するわけないだろ」

「……なんで〜?」


 いや、なんでって……なんでって……まぁ、少なくとも、リアよりは別にそういうことをしてもいいのか。公爵家に関わるものどころか、組織を抜けた今、俺と同じなんの立場もない人間だもんな。……いや、しないけど。

 

「別に、なんでもいいだろ」

「……あの人とはしたくないって正直に言った方がいい」


 いつもの仕返しなのか、俺がそう言うと、リアがそんなことを言ってきた。

 やめて。もうなんでもいいから、喧嘩しないでくれないかな。

 一応、俺の家なのに、居心地が悪すぎるんだが?

 

「は〜? そんなわけないでしょ〜?」

「……よし、ラミカ、風呂でも入ってきたらどうだ? 一番風呂、やるからさ」

 

 もうリアとラミカを仲良くさせることなんて不可能だと思うし、俺は話を逸らさせるために、そう言った。

 

「……ん〜、じゃあ〜、一緒に入ろ〜? それなら〜、いいよ〜?」


 いや、入らないからな? 一緒に風呂なんて入らないからな? ラミカが異性っていうのもあるし、単純にリアを見張ってなくちゃいけないんだよ。

 だって、またこの前みたいに俺が風呂に入ってる間に酒を飲まれたら、また襲われるだろ。……まぁ、あの時は俺が飲んでもいいって言ったからだし、今回は大丈夫かもしれないけど、ラミカと風呂なんて入らねぇよ。もちろんリアともな?


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