まさかマジで酒に弱いのか?
「リア、ちゃんと見張ってるのよ」
「リア、頼みましたよ」
あれから仕方なく、二人を送るために四人で馬車に乗って、公爵家まで帰ってきた。
余談だが、馬車に乗る際にまた御者の人を待たせていたことに気がついて、気まずい感じになってしまった。
ま、まぁ、そんなことは置いといて、ここはアリーシャの家だし、ヘレナの家の方にも送らされるのかと思ってたんだが、そんなことはなく、もう帰っていいみたいだった。
二人がリアに何かを言ってるけど、まぁいい。そんなことより、酒を買いに行かないとな。
リアが酒に酔うのかは知らないけど、多少は意味がある……と信じてる。
希望的観測が過ぎるけど、相手はSランク冒険者なんていう化け物なんだ。
奇跡を信じないと、そんな化け物から逃げ切るなんて、ありえないんだよ。
「ヘレナ、アリーシャ、またな」
「う、うん。また」
「は、はい。また、です」
別れの言葉を二人に言うと、二人は嬉しそうに、そう返してくれた。そしてそのまま、軽く俺たちに手を振ってから、屋敷の中に戻って行った。
こんな顔を見ると逃げるのが申し訳なくなってくるが、俺は誘拐犯で、殺さない限り喋ることも出来ないとはいえ、情報源を公爵側に確保されてるんだ。
可能性が低いとはいえ、バレたら終わりなんだから、逃げない訳にはいかないんだよ。
「リア、酒って飲むか?」
そう思いながら、ヘレナとアリーシャが屋敷に戻って行くのを見ていた俺は、リアに向かってそう聞いた。
「え、う、うん。飲む、けど」
? 妙に歯切れが悪いな。まさか、マジで酒に弱いのか?
「よし、リア。酒買いに行こう」
「え?」
「二人で飲もう」
「で、でも、私……」
リアが何かを言おうとしてるけど、否定されないように、無理やりリアの腕を引っ張って、馬車の中でこっそり確認した酒屋に来た。
もちろん、無理やりリアの腕を引っ張ったと言っても、本気でリアが抵抗する気なら俺なんかにリアを引っ張れる訳が無いし、これはもう酒を一緒に飲むことを了承してくれていると考えてもいいはずだ。
「一番度数が強い酒をくれ」
「少々お待ちください」
そう思いながらリアと一緒に店に入るなり、俺は店の人に向かってそう言った。
「……ほんとに飲むの?」
「あぁ、リアが嫌じゃないなら、一緒に飲もう」
「……嫌な訳じゃない。……でも、私はーー」
またリアが何かを言おうとしていたけど、ちょうどいいタイミングで店の人が戻ってきてくれた。
「お待たせしました。こちらが当店で一番度数が高いお酒となっております。……ただ、これはドラゴンでも一口飲めば酔っ払ってしまうと言われているお酒でして、飲む際は何かと割ってお飲みください」
「わかった、それを2本……いや、3本程くれ。これで足りるか?」
「はい。大丈夫です」
事実かは知らないが、ドラゴンでも酔っ払う酒。同じ化け物同士だし、リアも酔うんじゃないか? しかも、リアはどうも酒に弱いっぽいからな。
「……もうちょっと弱いやつも買わない?」
「どうせ酔いつぶれても、俺の家なんだから大丈夫だって」
リアはまた、俺の服を少し引っ張って、そう聞いてきた。
全然大丈夫だから、どんどん酔いつぶれてくれ。
「では、3本どうぞ。こちらがお釣りです」
「あぁ」
……俺の腕は2本しかない。つまり、酒を持てる量も2本だ。
「リア、悪いんだけど、1本持ってくれないか?」
「……分かった」
良かった。断られたらどうしようかと思った。
2本にしとこうかとも思ったんだけど、相手はSランク冒険者の化け物だからな。念には念を込めて、3本もあれば、いくら化け物でも酔うはずだ。……酒に弱いみたいだし、用心しすぎかもしれないが。
「よし、後は適当なつまみでも買って帰るか」
「……うん」
俺はあんまり飲む気は無いから、美味いつまみを買って、少しでも気持ち良くいっぱい飲んでもらわないと困るからな。
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