第18話 攻略、謎のダンジョン ②
アーヴァンクの群れを退け、一息ついたところで軽く周囲を見渡す。
ダンジョン内部の景色は昨日と変わらない。
俺が周辺の木を伐採したままだ、おかげで入り口周辺の視界は確保されている。
これならもう奇襲を受ける心配はない、はず。
「湿気がすごいね、ルナの格好だと暑そう」
「そうかな?ユナもそんなに変わらないでしょ☆」
「とりあえずあっちに向かう、でいいよな?」
「うん、行ってみよう!」
俺たちが今いるのは密林のど真ん中。
どちらに向かうのが正解かはわからないが、とりあえず水の流れに従って進む。
「これ、昨日ニルくんがやったんだよね?」
「色々邪魔だったからな、おかげで敵がよく見える。ほら、またヤバいのが出てきた」
「え、なにあの生き物」
流れに沿って進んだ先で見つけたのは、クジラとトカゲが合体したかのような巨大な生物。
その名はタニファ、水害をも引き起こす恐ろしい怪物である。
特にこんな場所では。
「横に避けろ!」
タニファの口が膨れ上がったのを見て、俺たちは切り開かれた密林の中に逃げ込む。
その直後、口から怒涛の勢いで吐き出された水は激流となり、前方にあるものを全て飲み込んでいった。
「ギリギリセーフ♫」
「あのままだと危なかったね、これがEランク……」
「驚いている場合じゃない、アイツを倒そう」
俺が距離を詰めようとすると、再びタニファの口が膨れ上がる。
だが一度見た攻撃にそう何度もやられるわけじゃない。
「いっくよー☆」
無数の雷の束がタニファの頭上から降り注ぐ。
相手はアーヴァンクより一つ上のモンスター、それだけで倒すことはできないが、硬直させて動きを止めることには成功している。
さらにユナの放った矢が膨らんだ頬を貫き、タニファは痛みに悶える。
その隙をついて一気に距離を詰め、首から先を切り落とす。
「こんなもんか……ってさらに来るぞ!」
倒したと思ったのも束の間。
今度は四方から馬の姿をしたモンスター、ケルピーとアーヴァンクの群れが襲いかかってくる。
突入直後に戦った時とは比べ物にならないほどの数、かなりまずい状況だ。
「二人は後ろから来るのを頼む!」
「わかった!ニルは?」
「他は全部俺がやる。肆の秘剣・操剣フラガラッハ」
圧倒的に手数が足りない。
まずは敵の半分はフラガラッハに任せる。
残りは俺の手でやるしかないが、後ろを任せている二人も不安だ、あまり時間はかけてられない。
「壱の秘剣・聖剣エクスカリバー」
秘剣の複数同時使用、これで一気に決める。
「やれ、フラガラッハ!」
俺が命じるとフラガラッハは宙を舞い、迫り来る敵を切り刻んでいく。
討ち漏らしは俺が仕留める。
「雑魚どもが、さっさと消えろ!」
エクスカリバーの一振りで群れを殲滅する。
まだ何体か残っているが、あれならフラガラッハに任せれば倒してくれる。
振り返ると背後ではユナとルナが協力しながら敵の侵攻を食い止めていた。
「参の秘剣・輝剣クラウソラス」
俺はエクスカリバーを消すと同時にクラウソラスを創造し、それを二人の前に突き刺して結界を張る。
「もう終わったの⁉︎」
「ああ、二人ともありがとう。助かった!」
俺一人だと三種の秘剣を同時使用するところだった。
できないことはないが魔力の消費が大きく、後で疲れも来る。
おかげでだいぶ楽に切り抜けられそうだ。
「戦わなくていいよ、あとは私がやるから♡」
ルナは俺に向かってウインクしたかと思うと、両手を天に掲げる。
「いくよっ、ミーティア☆」
魔力の塊が流星群となって降り注ぐ。
広範囲・高威力の殲滅魔法に晒され、ケルピーたちに逃げ場はない。
唯一難を逃れる方法があるとすれば魔法を発動したルナを倒すことなのだろうが、今はクラウソラスに守られているため手出しはできない。
「隙も大きくて威力も大きい、派手な魔法だな」
「それが私のアピールポイントだからね♡」
ただ強いだけではなく見た目も派手、それがルナの人気の秘訣かもしれない。
ユナは真面目で強い芯を持っている、という魅力がある。
俺も強いだけではダメかもしれない、かといってすぐ何か思いついたりはしないが。
「それより全部一人でやったんだよね……?」
「コイツらはまだEランクかどうかギリギリのレベルだからな、『龍の巣窟』にいるやつに比べたら余裕だ」
「余裕なんだ……強いとは知ってたけど、想像以上だね」
「あはは、私たち必要なかったかな♫」
「いや、二人がいて助かってるよ。おかげで本気を出さずに済むから体力も温存できる」
「まだ本気じゃないんだ……」
体力的にも魔力的にもまだまだ余裕はある。
ただ一つ気がかりなのは、相変わらずダンジョン内に充満する嫌な空気。
ここまで出てきたモンスターはEランクの中では最底辺、『龍の巣窟』にいるモンスターに比べるとどれも弱い。
だが肌で感じる雰囲気はやはり『龍の巣窟』でのそれとほとんど変わらない。
ということはこのダンジョンのボスがかなり強力な個体と考えられる。
道中での無駄な体力消費は極力避けたいところだ。
「二人ともまだ余裕はある?」
「うん、私は平気だけど」
「私もいけるよ♡」
「じゃあペースを上げよう」
このダンジョンはできたばかりで中にいるのは俺たちだけ、そのせいであまり同じ場所に留まっていると周囲のモンスターが集まってくる。
それを毎回相手にしていたらさすがに限界が来てしまう。
その前にボスを討つため、俺たちは先を急いで走り出した。
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