高校に通いながら探索者をしている俺がダンジョンで助けたのは、隣の席の有名美少女配信者でした〜ここって超難関ダンジョンだったんですか?〜
上洲燈
第1話 超人気配信者の正体は
「グルォォォッッ!!」
雄叫びを上げながら襲いかかってくる3つの首を持つ龍の名はティアマト、このEランクダンジョンではよく出てくる凶暴なモンスターである。
「よっと」
俺は次々と襲いくる首を避けつつ、手の中に一振りの剣を創造する。
「これで終わりだ」
横一閃。
それだけで3つの首が同時に飛び、ティアマトは息絶える。
あとはその場に残った爪やら牙を適当に拾い集め、袋に詰めて持ち帰るだけ。
「ふぅ、今日はこんなもんでいいか」
Eランクダンジョンであっても、魔物の素材は非常に高く売れる。
この爪をダンジョン内で見かけた探索者に売れば、1枚につき10万円は下らないはず。
こうやって少し頑張るだけで、生きていくためのお金は簡単に稼げるのだ。
「
そう聞かされたのは5年前、中学に入学して少しのことだったか。
ダンジョンとは今から50年前に世界中に現れた謎の空間。
内部は入り組んだ複数階層の構造になっており、様々な罠やダンジョンだけに巣食う魔物と呼ばれる存在が闊歩している。
しかし同時に鉱物や植物を始めとする、ダンジョン特有の希少な素材も取れる。
そのため今ではダンジョンの出現と同時に人々が目覚めた特殊な力、『魔法』を利用してダンジョンに潜る、探索者というものが一般的になっている。
もちろんそれが危険なことに変わりはなく、俺の両親のように命を落とす人も少なくない。
それでも俺は生計を立てていくために、高校に通いながらダンジョン探索者をしている。
「そろそろ帰るかな」
お金の方は問題ない、だが成績は別。
部活動をしていないとはいえこうしてダンジョン探索に取られる時間を考えると、勉強に割ける時間は人より少ないかもしれない。
ただでさえ地頭の良くない俺は今より勉強を頑張らないと、就職にしろ進学にしろ上手くいかないだろう。
一時、そんなことを考えず一生ダンジョンで生きていけばいいのではないか、と考えたこともある。
だがそれは無理だと気づいた、なぜなら俺には才能がないからだ。
今の時代、市販の機械を使って誰でも自分の探索者ランクを測定できる。
この探索者ランクというのは、現時点での能力ではなくその人の才能を示すもの、いわば到達点だ。
そして俺のランクはDランク、つまり俺は死ぬほど努力したとしても、Dランクに辿り着くのが限界だということ。
「もう少し才能があればなぁ」
自分に才能がないことは探索者でお金を稼ごうと決めた時から知っている、だから俺はずっと家の近場にあるEランクダンジョンに入り浸っている。
ここは幸い都会からは離れているおかげか、まだダンジョンに足を踏み入れる人は少なく、おかげで俺も生活費稼ぎに使えている。
だが所詮Eランク。
この穴場の存在が多くの人に知れ渡れば、こぞって中にいる魔物を討伐していくのだろう。
そうなれば俺の取り分は減り、今のように簡単にお金を稼ぐことは出来なくなるだろう。
「やっぱ将来は普通に就職すべきだよな……よし、帰って勉強しよう」
今更才能がないことを悔やんでも仕方がない、俺のような凡人はコツコツと勉強して普通の人生を送るしかない。
ダンジョンで生きていけるのはほんの一握りの才能を持つ者だけ。
最近では、俺と歳が同じくらいのダンジョン配信者、ユナが100万登録を達成したと何かで見たが、そうした人だけが選ばれた存在なのだ。
俺は俺らしく生きていこう、そう思って帰ろうとしたその時であった。
「キャァァッッ!!」
突然少女の叫び声が聞こえてきた。
「あっちか!」
俺は大慌てで声のした方向へ走り出す。
すると少しして表層では珍しい宝石の瞳を持つ蛇、グローツラングに襲われている少女の姿があった。
倒した時のリターンは大きい分、その蛇は全長が12m以上あり、かなり危険。
噛みつかれたり締められたりしたら良くて重傷、簡単に死んでもおかしくはない。
「このままだと間に合わないか?」
まだ少女との距離はあり、近くに他の人影もない。
このままでは間に合わないかもしれないと思った俺は、手の中に一つの剣を創造する。
「オラッ!」
「きゃっ!」
俺はその剣を少女と蛇の間に投げつける。
そしてそれが地面に突き刺さると同時に魔力を込め、光の結界を創り出した。
「シャァァァッ!!」
すんでのところで間に合い、グローツラングの頭は障壁に弾かれた。
「よし、間に合った!」
その直後、もう一振りの剣でグローツラングの首を斬る。
宙を舞った頭部はちょうど俺が伸ばした手の上に落ちてきた。
「良かった、大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうござ……え?」
俺は魔法で作り出した剣を消しながら少女を見る、そして思考が止まってしまった。
それはどうやら向こうも同じらしい。
オシャレな弓を手にしており、羽織っているのは白と青の大きなローブ。
その格好はよく知っている、俺もインターネットで何度か見たことがある。
エアリーボブの銀の髪と大きな目が特徴的な、やや丸みを帯びた輪郭をした可愛らしい顔立ち。
その顔もよく知っている、髪色がいつもと違うことを除けば俺も高校で何度も見ているから。
「えっと、とにかく無事で良かったです。ユナさん……というか、しら」
「わー!わー!」
彼女は両手を振って大声を上げたかと思うと、大慌てで配信終了のボタンを押していた。
それからオホン、と一つ咳払いしてからこちらを見上げる。
「ごめん、もう大丈夫……」
「こっちこそごめん。あの、
「うん。君は神凪くんだよね」
そこにいたのは今話題の超人気美少女配信者『ユナ』改め、高校で隣の席に座っている学校のアイドル、
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