第3話 作戦立案
3日後、ヨスバの拠点にチームメンバーが集合する。ヨスバは、王都の中流階級が住む住宅街の一軒、普通の家にしか見えない家を拠点として使用している。基本的にはチームメンバー以外が入ることもない、完全に隠れ家のような場所だ。
「さて、シェリー。作戦については検討できているか?」
「はい、既に完了済みです。説明してもいいですか?」
「ああ、頼む」
ランスの言葉を皮切りにシェリーが作戦に関する説明を始める。ヨスバの副代表を担当し、戦略や作戦の策定を一手に担うのがシェリーである。
「まず、目的はイザードの殺害です。ローラが集めた情報をもとに作成した似顔絵をお配りします。これぞ貴族、という切長の目と薄い頭髪が特徴的ですね。イザードは基本的に邸宅に篭りがちな傾向があるので、夜間に邸宅を急襲します。まずはリサが表門で暴れてください」
「いいけど警察は大丈夫?」
リサがシェリーに疑問を呈する。リサはヨスバ1の戦闘力を誇る暗殺者であり、人殺しが好きなサイコな一面はあるが、常識人ではある。
「ええ、邸宅は警察から少し離れたところにあるので、駆けつけるまで5分から10分はかかると予想されます。ですので、ご自由に暴れてください。また、念のため私が警察の近くで火事騒動を起こします」
「わかった。それなら問題なさそうね」
「はい。エフレンは後方からリサの支援をお願いします。近くに高層住宅があるのでどこか好きなところで準備してください」
「了解っす。パチンコ用意しときますね。リサさんは希望ありますか?」
エフレンは後方支援担当である。物体の飛行経路を予測する能力を持つため、遠距離攻撃をするために生まれてきたかのような存在だ。
「後ろから襲ってくる奴だけ防いでくれれば十分かな。人数はそんなに多くなさそう?」
「私兵と護衛合わせて10人程度だと思われます」
「了解。普通ね。全員殺していいの?」
「ローラ、奴らも婦女殺害に関わっているのか?」
「ええ、被害者の運び込みや死体の放棄に関わっています」
「そうか、なら問題ない。全員殺していいぞ」
「全員殺してしまうと証言者がいなくなるので、1人生かしておいてもらいたいです…… とにかくリサとエフレンは出来る限り表門で注目を集めてください。その裏で、ランス様は上空から2階への侵入をお願いします。ハンググライダーを用意しておきました。飛び立つ場所についてにも調査済みです」
「2階にはベランダはあるのか?」
「ええ、イザードの寝室ではなさそうですが、広いベランダ付きの部屋があります。そこに飛び込めば問題ないかと。表門の者達に気づかれないよう、なるべく音を立てないように侵入してください」
「わかった。そこは気をつける」
「後はランス様が2階の護衛達を殺害し、イザードの部屋に入ってください。ただし、すぐに殺すのはやめてください。イザードからは聞き出すべき情報があります」
「なんだ? 犯行動機か?」
「いえ、犯行の証拠となる物達のありかです。推測にはなりますが、連続殺人犯はコレクション癖がある傾向にあります。彼も被害者が持つ何かを収集している可能性があるため確認してください」
「了解」
「最終的に警察が調査した際に犯行が発覚する流れに持っていきたいです。もし邸宅の中にコレクションがあった場合、警察が気づくようにしてください。部屋の扉を破壊する、といったことが考えられるでしょうか」
「面倒だから部屋ごと破壊するよ。証拠だけ残っていれば問題ないだろう」
「ええ、それで大丈夫です。全ての作業が完了したら、ランス様はお渡しする火薬で2階の一部を破壊して注目を集めた上でハングライダーで脱出ください。火薬がリサとエフレンの撤退の合図にもなります。以上で依頼は達成です。ここまでで質問ありますでしょうか?」
シェリーが作戦の全体像を説明し終えたようだ。
「1人生かしておけばいいんだよね?後は全員殺していい?」
「ええ、それで問題ないです。できれば1番偉そうな人を生かしておいてもらえればその後の捜査で捗る可能性がありますので良いです。逃げないように両手両足でも折っておいてください」
「わかった」
「今回はいつもより、警察の奴らを殺さないように気をつけてください。この作戦のキモはイザードが殺されたと警察が捜査すると、実は連続殺人犯だと発覚する、ということです。なので警察を殺害すると話が複雑になり、連続殺人犯だと発覚しないルートになる可能性があります。現場の警察のメンツを潰すのは厄介です。緊急時以外は逃走するようにしてください」
「軍が来る可能性はあるか?」
「ないでしょう。イザードは警察の上層部とコネがあると聞いています。であれば、イザードの家でトラブルがあった場合、管轄は警察になると思われます。そこは残念な派閥争いになると予測されます。もし、兵士が来た場合は同様に逃走してください。軍とトラブルになるのも面倒です」
「めんどくさいなあ。どうせなら全員殺しちゃいたいけどね」
「リサさんは血の気が多すぎっす。前、軍にちょっかい出して大変なことになったじゃないですか」
「げ、忘れてた。あいつらゴキブリみたいに湧いてくるからね。気をつけないと」
「そうですよ、僕もゴキブリ殺しは面倒っす」
「以上で良いでしょうか? 決行は明日の23時です。21時にここに集合しましょう。最終確認と準備を行います」
「わかった、よろしく頼む」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます