心お弁当 [シュール]

私の主食は人の心だ。


恨みや妬みは特に美味だった。悲しみや怒りも格別な味がした。


私は人を襲っては心を喰らった。


ある日、ひとりの少女が近寄ってきた。


彼女は哀れみの表情で私を見ると「お腹が空いているのね」と言った。

そんなふうに私に話しかけてくる者などこれまで居なかったので私は驚いた。


少女は私に小さな箱を差し出してこう言った。


「これは “心お弁当”。捨てられた心。今日からあなたはこれを食べなさい。もう人を襲ってはいけない」


箱の中を見ると、そこには強烈な憎悪や殺意が渦巻いていた。

たまらず私はそれらを貪った。


「かわいそうに、よっぽど空腹だったのね」


言いながら少女は私の頭を撫でた。

私は少女の心が欲しくなった。


そして喰らった。


その心は “同情” だった。


彼女から溢れ出る同情は底なしだった。


腹一杯喰らってもまだ湧き出してきた。やがて私は彼女のこころに溺れてしまった。


少女の名は “満たされぬ同情” - Sympathy never satisfied と言った。


略してSNSだ。

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