ショート・ショート集

大橋 知誉

違法の健康 [シュール]

私はソワソワしながら料理が運ばれてくるのを待っていた。

ここは合法ギリギリの健康食を出す店だ。

注文した品が運ばれてきた。


ピラフとスープのセット。


私はピラフの具を見てギョッとした。そこにはエビではなくイカが鎮座していた。

イカは超絶健康食として法律で禁止されている。


「こ、これ、本当に合法なんですか?」


私は震えながら店員に尋ねた。


「ええ、油で炒めるとイカは別物となります。法の抜け道ですよ。それでもガンぎまり必須です。ご堪能ください」


スープはオニオンスープだった。よりによって玉ねぎだ。血液がサラサラになってしまうじゃないか。


「コンソメで合法化しています。ぶっ飛べますよ」


ここでドヤドヤと男たちがレストランに入ってきた。警察のガサ入れだった。

店長が逮捕され、私も連行される羽目になった。


「合法だって聞いたんですよ!まだ一口も食べてない!」


私は懸命に無実を訴えたが聞いてもらえなかった。どうせ捕まるのなら一口食べておけばよかった。とくにあのプリプリのイカを…。

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