第15話
「やーやー皆さん。何とかここまで通過おめでとうございます!」
京たちの頭上にあるモニターにイズが映っている。
「ここまで来るのに中々苦労したと思われます」
「さぞここまでたどり着いた皆さんは優秀な人たちばかりなんでしょうね」
「中々運だけではここまでたどり着けない。優秀ですねー皆さん」
「なんだこのふざけた野郎は……」
「こいつも死神か……」
イズの飄々とした口調にプレイヤーたちはざわつく。
「それはそうと皆さんもこんなところで道草している場合じゃないと思いますのでー」
「さっそく今から行うゲームについて説明したいと思いまーす!」
「ゲームだと!?」
「そうゲーム。ここから先はさらに難易度があがりますからね。思った以上に人が残ってるし」
「そろそろここらへんで絞っていかないと!きゃはっ!!」
「ッ……」
「虫唾が走る……。」
「一回しか言わないので、よーく耳をかっぽじって聞いてくださいねー」
「今から行うゲームは仲間を救い出せ!というゲームでーす。」
イズは淡々とゲームの説明を始める。
「この塔にはたくさんの鬼さんたちが在中していまーす」
映像が切り替わり、沢山の鬼たちが映し出される。
「そして鬼さんたちは首にカギを持っているのでーす」
一体の鬼の首がアップされる。首にネックレスをかけており、そこに鍵がついている。
「このカギ、皆さんにとってはとてもとてもとーっても重要なアイテムなんです。」
「このカギはここ、この牢屋で使うことができるものなんです!」
イズは牢屋の方に指さした。プレイヤーたちは後ろを振り向き、牢屋を見る。
牢屋には沢山のプレイヤーたちがひしめいていた。
そのプレイヤーたちは阿鼻叫喚に騒いでこちらを見ている。
「そしてこの牢屋からカギ一個につき、一人出してあげることができまーす」
「そして皆さんは5人プレイヤーを揃えて、この下にある扉。この扉から抜け出してクリアすることができます!」
「クリア後はこの部屋の奥にある次のステージへ進むことができるのです!」
「条件はさっき言ったように5人プレイヤーを揃えること。4人以下、6人以上では進むことはできません!」
「6人はダメなのか」
仁はボソッと呟く。
「そして今9人ここにいらっしゃいますが、このプレイ開始時のメンバーでは先に進むことはできません。」
「プレイヤーはこの牢屋から自分以外の4人を選んで進むことができまーす!」
プレイヤーたちはざわつく。
「なんだって……」
「つまり…ここにいる皆とは先に進めないというわけか!?」
「そのとーり!ですが、あくまでも牢屋にいるものから4人救い出すルールなので、」
イズは満面の笑みで答える。
「どうしても今まで一緒に頑張ってきた仲間を連れだしたいというのなら、わざと牢屋に入ることも可能です!」
「どういうことだ?」
京は首を傾げる。
隣にいた手越がその疑問に答える。
「つまりわざと捕まって牢屋に入り、その後俺たちの誰かが捕まった奴を指名すれば一緒に出られるというわけだ」
「その通り!」
「牢屋に入れられる条件は鬼に捕まった時です!」
「鬼さんに捕まってしまったらこの牢屋へぶち込まれてしまうのです!」
「ですから鬼に捕まって牢屋に入ってしまえば、そのプレイヤーさんもクリアの条件に値するわけです」
「なるほど。牢屋に入れられて、キーを奪ったプレイヤーがそいつを選べばいいってことか。」
「そうです。ですが、基本は鬼に捕まらない方がいいです」
「もし捕まって、牢屋から出ることができなければ一生その牢屋で過ごすことになるのですから」
「なんだって!?」
「一生!?」
「そう一生。指名されるまでは出ることは絶対できません」
「どうやらここまで一緒に頑張ってきた皆と競争しなきゃいけないみたいだな」
手越がそう呟くと、愛海は不安そうな顔で手越を見つめる。
イズは再び説明を始める。
「鬼からキーを取るには中々骨が折れます」
「鬼さんたちも必死にあなた達を捕まえて、この牢屋にぶち込もうとしていますからね」
「下手をすると、全プレイヤーが鬼に捕まってしまって誰もクリアできない。なーんてこともあるかも」
「今回鬼さんたちは決してあなたたちを殺そうとはしません。捕まえようとします」
「ですから皆さんは鬼から何とかキーを取って、この牢屋まで逃げてください」
「ちなみに鬼はこのフロアには入ってこれません。」
「この階段をのぼった先に鬼さんたちがキーを持ってうろついています。」
「キーを奪ったらとにかく走って、このフロアに戻ってきてください」
「以上ルール説明です!何か確認したいことはありますか?」
暫くして仁が手を上げる。
「どうぞ」
「キーを手に入れてこの牢屋まで来たら、どうやって牢屋から人を指名するんだ?」
「あーそうでしたそうでした。肝心なところを説明し忘れていましたね。」
イズは舌をだし、テヘっとしている。そして映像が乱れ、イズの姿が見えなくなる。
フィイイイイイン
京たちの目の前に死神イズが実体で姿を現す。
「なっ!?どっから来やがった!?」
「えへへへ。死神はこの世界ならどこにでもワープできるの」
イズは牢屋に向かって歩き出し、スカートのポケットからキーを取り出した。
「えっとじゃあ、さっきの質問に答えるんだけど。実際にどうやって牢屋から出すかやってみせるね」
彼女は牢屋の前に立ち止まる。
「さあこちらへ皆さん来てください」
京たちはイズの方へ歩いていく。
「ここにカギ穴があるのでそこにキーを差し込んでください」
「イズはキーをカギ穴にいれ、牢屋の扉を開ける。」
一緒に来てください。イズと共にプレイヤーも中へ入っていく。
「牢屋に進むと、小さなモニターがあります」
イズたちが進んだ先に10インチぐらいのモニターが置かれていた。
「そのモニターに牢屋に捕まっている人の名前と顔が映ってます」
「ここで牢屋から出したい人を選択してください」
イズは手を伸ばし、モニターに触れる。
「じゃーあー…あなた。ポチ!」
イズが適当に選んで、モニターを押すと、牢屋の中から一人姿を消した!
「で…出れた!!」
牢屋から出たプレイヤーは涙を流しながら大喜びの様子だ。
「こうやって選ばれた人は牢屋の外へ転送されます」
「…どういう理屈だ?どうやって外へ…」
手越は頭を傾けて考え込む。
「おっさん考えてもしょーがないぞ」
隣で京が突っ込みを入れる。
「はーい、以上で説明お終いですけど、他に質問ありますか?」
「はい」
手越が手を挙げる。
「どうぞお」
「鬼に捕まったらこの牢屋に行くということだが、その鬼はこの牢屋のエリアには入ってこれないんだろ?」
「どうやって鬼は捕まえた者を連れてくるんだ?」
「そうですねー。まああっちの大モニターを見てくださいよ」
牢屋の外にある大きなモニターの画面が切り替わる。
プレイヤーたちは後ろを振り向き大モニターを見つめる。
そこには鬼が人間を両手で捕まえており、人間はジタバタと抵抗していた。
「これは鬼に捕まった時のサンプル映像です」
映像では鬼に捕まったプレイヤーが鬼の両手に触れている体の部分から徐々に石化が進行していた。
「このように鬼に触れられた瞬間、どんどん体が石になっていきます」
「そして体全身が石化してしまったらアウト。石化された体はこの牢屋に転送されます」
「石化したら死んじゃうんじゃないのーって心配している方。大丈夫です」
「この牢屋に来たら、石化が解けていきます。もちろん死ぬことはありませんし、瀕死にもなりません」
「捕まる前の体調と変わることは無いのです」
イズがペラペラ喋るところに手越が水を差す。
「待て待て…。これ少しでも鬼に触れられたら石化しちまうってことか!?」
「その通りです。厳密には鬼の手に触れられたら石化が始まってしまいます。鬼の手以外は触れても石化しません」
「ただ映像を見ていただいたように例え鬼に掴まれても、すぐに石化するわけじゃないです」
「徐々に石化していくので、その間に鬼の手を外せば、石化の進行が止まります」
「それから鬼の手から逃れて数分待つと、石化させられた部分が徐々に剝がれていきます。つまり何分か経てば元通りになるのです」
「なるほど……」
「他に質問ありますかー?」
「……」
他のプレイヤーたちは黙って突っ立っている。
「無いようなので、さっそくゲームを開始したいと思います!」
「頭をフル回転させて自分の能力を生かしながらゲームに挑んでくださいね」
「あーそうそう。あと一つだけお伝えすることがありました」
「ゲームのスタート地点はここではありません」
「今から皆さんは、それぞれこの塔のどこかへランダムに飛ばされます。」
「なに!?」
「いきなり転送されたところで鬼と出くわす可能性もあるかもー?」
「ではでは頑張ってくださいね。」
京たちの体が透けだす!
「おい!!待て!!」
「じゃあ、健闘祈りまーす!」
ッシャ!!
京たちの体がその場から消えてなくなった!
そして京たちはそれぞれランダムにスタート地点へ転送された。
「うう…」
京は気が付くと、階段の上に立っていた。
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